29:おかえり


おかえり、なんて言うのは自分のキャラクターじゃないし、こういう場合そんな風に声をかける話は聞かない。
でも本当は駆け寄ってそう言いたかった。冷静に考えたらものすごくキショイ光景なのでやめたけれど。

まだ足がちゃんと使えるようになって日が浅いようだったけれど、あいつのことだから、半年もしないうちにまたこのオレを脅かす存在に戻ってくれるに違いない。
記録への挑戦だとか自分との戦いだとか、ま、実際そうなんだけれど、やっぱりスポーツの醍醐味はライバルの存在抜きには味わえないと、あいつが潰れていた1年ほどの間にたっぷりと思い知らされてしまった。
もちろんオレのために復帰してくれたわけでもなんでもないことぐらいわかっているけれどな。

あ、でもなんか知らない間に妙な宗旨替えしていたみたいだから、こう、搦め手から攻めて、オレの言うこと聞かせるってのもありだったのか?

……キモイ想像をしてしまった。ゲゲゲゲ。ちょっとオレ今テンションがヘンみたいだ。きっと今ものすごくにやにやしている。殺伐系クールがオレの素だってのに!ま、でも今日はあいつが無事に復帰したお祝いの日なんだから、いいか。


       

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