27:迷い子
迷子と家出人の置かれている状況は同じだ。本人の心持ちのベクトルが正反対なだけで。
5年前、その迷子は自らを家出人だと主張したが、どう考えても、自らの心がどちらを向いているかすらわからなくなった、ただの重症な方向音痴にすぎなかった。
彼女を無事に家に帰したあと、もしかして自分には保育士の素質があるかも、と思ったものだ。
とりあえず、迷子センターのお兄さんとしてはほぼ完璧だ。
久しぶりに元迷子と顔を合わせた。
放浪の日々を終えて帰宅したはずの彼女は、明るく笑ってはいたが、現役時代よりもよほど迷子じみていた。
そういうことなのだ。5年弱の間に、彼女の心の現住所は、両親がいて家族がいて友人達がいるこの町ではなくなっていたのだと、しみじみと時の流れを思うのだった。