10:ドクター
梅田先輩が医学部に進学した。一瞬人並みに驚いたけれど、すぐ「やっぱり」って思ったよ。
そしてそれは皆の予想を裏切って医学部ではなく文学部に進んだ鬼島先輩と何か関係があるはずだと思ったのも、先輩のことをずっと追っていた身としては当然だ。
あの二人は普段からけっこう仲がよかった。でもなんて言うか漢文で習った君子のつきあいって感じ。「淡きこと水のごとし」って奴。
それでいて何か特別な絆がちらちらと見えるんだよね。もっとも俺みたいに継続的に観察していれば、だけれど。
みんな単純に感心している。流石学年トップ3だねって調子で。
鬼島先輩の文系転向については「何で今更?」「もったいない」という声もあったけれど。
医学部って事は医者になるんだよな。白衣か。似合いすぎ。
確か年明けすぐ頃の情報では政治学と迷っているという話で、それもそれで似合うなあと思ったのだけれど。やっぱり頭のいい人間は何でもできるもんなんだなあ。
でもとにかく、「やられた」って感じだね。よりによって医学部だなんて。
梅田先輩追っかけ隊長をもって任ずる身とはいえ、これは流石にどう考えても追っかけて行けない。せいぜい同じ大学に他にどんな学部があるか必死で調べることからはじめるしかない。悲しいけれどそれが現実。
これは身の程を知れとか足下を見よとかいう意味の、啓示なんだろうか。
むしろ、オレにはオレの道がある、という励ましかも知れない。
とりあえず今は落ち込む所まで落ち込んでおくことにして、また明日から復活するか。
「せーんぱーい、おめでとうございまーす」なんて脳天気につきまとううるさい後輩として、ね。