04:遊園地


答辞の原稿を書くとき、ふと頭に浮かんだ「遊園地」という言葉を入れたい衝動と戦い続けねばならなかった。
ここで過ごした3年間を振り返ったとき、いちばんぴったりだと思ったからだ。

自分にとってここ桜咲学園は「まなびや」であり、ちょっと気障に言うところの「可能性の揺籃」であり、「切磋琢磨の場」であったのは事実だし、実際、答辞にはそのテの言葉をちりばめたのだけれど、今この実感に一番近い言葉ではない。

初めてここに来たときを思い出す。あの期待と不安の入り交じった気持ちは、今思うと巨大遊園地にただひとり放り込まれた気分に近い。
全寮制の学校にはありがちだろうけれど、家から脱出した者と切り離された者が半々。もちろん「名門」という看板があるから、どちらの側にしたって罪の意識は小さいのだ。
入学後しばらくたってに回りも自分とほぼ同類だと気がついてからは急展開だ。
それぞれがお気に入りの居場所を見つけて、時には徒党を組んで、時には誰にも邪魔されずに、精一杯だったり思い切り息を抜いたりの毎日を過ごす。
おまけに校則も、全寮制、という厳しい響きからは想像しにくい程度には緩い。
だから、自らそれを求める者は、ここでほんとうに充実した日々を送ることができるのだ。って、実は自ら求めるっていうのが案外難しいんだけれど。

これが女子校だったら、さしずめ「秘密の花園」なんていう表現がいい感じなんだろうけれど、残念ながら男子校にはいまいちなじまない。

でもこの実際に3年間楽しめてしまったという事実と、そして、絶対安全な冒険を管理されていた現実に卒業直前の今になって改めて思い当たってしまった悔しさをこめて、「桜咲学園はまるで遊園地のようだった」と言いきってしまおう。もちろん答辞には使えないけれど。


    

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