物書きさんに20のお題・黄
14:「華奢な指」
夕食時、タイミングの問題か、芦屋と佐野はいつものメンバーとは少し離れた場所で食事を取っていた。中津は、近くの席が空いたら皆のいる方に呼ぼうと、食べながらも時々二人を確認していた。
ふと見ると、何やら二人の間に行き違いでもあったのか。
芦屋の腕が急に席を立った佐野を追いかけるように伸び、ためらいを含んで動きを止める。
その白く細い指の美しさに知らず見とれていた中津は、「口開いているよ」と言う萱島のひとことに我に返り、自らの頬を軽く叩いた。
あかん。重症や。
ぽつりとつぶやき、先ほどの光景を脳内で反芻する。
自らの想いを自覚してからも、芦屋の視線が佐野を追うことについて、もちろん嫉妬はあるがそれはなぜか不快感ではなかった。それは、男である佐野を追う瞳ならばいつか男である自分を追う可能性もあるのだとかすかな期待を抱かせるから、だろう。想いを分析するのは得意ではないが、その程度の見当は付く。少なくともそう思っていた。
だが今、あの華奢な指が自分の心を激しくざわめかせてしまうのは、それだけではない。
もちろん芦屋の魅力の一面である護ってやりたくなる線の細さを象徴してはいる。
しかし、さっき気づいてしまったのだ。あの指先からこぼれるような「想い」こそが自分を引きつけるのだと。
いつの間にか他の誰かに焦がれている事実にまで魅せられていたのだ。
つまり、自分は自分がこの想いをどう成就させたいのかについて、とっくに見失っていたのだ。
不毛すぎる結論は、それでも、中津の視線に気づいて返されたちょっとぎこちない微笑みの前に、「まぁええか」のひとことで片付けられてしまうのだった。