物書きさんに20のお題・黄
11:「からっぽ」
卒業式の日から、2段ベッドの上段には何もなく、からっぽだ。
明日、新3年生は個室に移動することになっている。佐野ももちろん例外ではない。2年間使ったこの205号室で過ごすのも今日限りだ。
荷物はすでに片付けてあり、今すぐにでも移動できる段取りだ。
忘れ物がないか部屋を隅々までチェックする。2段ベッドの上段の枕もとの小さな引き出しを見て、少しためらった後に思いきって一気にあけてみた。
……何も入っていない。
いったい何を期待していたのか。
自分に呆れつつ、ベッドに横たわる。
これがあいつが毎日見ていた景色なのだとぼんやりと考えて。
そして、この「不在」こそを残りの一年の伴侶とすることをも。