第六席


ランディ 「中堅トリオの後は俺たち年少トリオと……ってアレ、マルセルは?」
ゼフェル 「何一人でボケツッコミしてんだよ。楽屋にいる時からいなかっただろ、アイツは」
ランディ 「ハハハハ、そう言われれば確かにそうだね。で、ピンチヒッターで来てくれたのがこの人」
セイラン 「意外と頼まれると断れない質でね。マルセルからの伝言をポエム風に伝えよう(と、ノートを開き)『ぼくは怪盗の修業に忙しいので舞台はつとめられません。二人ともごめんね』だそうだよ」
ゼフェル 「ただのカンペじゃねーかよ」
ランディ 「今日はせっかく鑑識課のセイランさんが来て下さったんだから”凶器乱舞”しないといけないぞ」
ゼフェル 「寒いこと言ってんじゃねーよ!」
セイラン 「そうかい? なかなかがんばってると思うけどね」
ランディ 「ありがとうございます。ところでセイランさんはどうして鑑識の仕事を選ばれたんですか?」
セイラン 「そうだね、パンドラの匣、だからかな」
ランディ 「なるほど〜。(ゼフェルに)パンドラの匣って時限爆弾の名前だったっけ?」
ゼフェル
「相変わらずおめーは体力バカだな。ちょっと待ってろ、今電子辞書ひいてやっから。……
パンドラの匣、『ギリシャ神話で、ゼウスが人類最初の女性パンドラに持たせた、悪と災いを封じた箱』だとよ」
セイラン 「そしてパンドラは『好奇心』という罠に掛かり、箱を開けてしまった。おかげで地上にはあらゆる悪と災いが飛び出し、僕等も大忙し、ってことさ」
ランディ 「なるほど〜。犯罪の陰に女あり、ですね」
ゼフェル 「話変えてんじゃねーよ! で、鑑識とパンドラの匣がどうつながんだよ?」
セイラン
「わからないかい? 爆弾の処理よりは簡単だと思うんだけど。鑑識の仕事は事件現場からあらゆる物証を提示することだ。怒りに血塗られた凶器もあれば、苦しみにあえぐ指紋もある。まさに封じたいモノのオンパレードだ……」
ランディ 「俺、なんだか気持悪くなってきちゃったよ、ゼフェル」
ゼフェル 「ランディジャンプすりゃ直んだろ」
言われた通りにくるくるジャンプし始めるランディ。
セイラン
「君も当分『フリスビー』から卒業できそうにないね。まあでも僕だって気持良く仕事をしてるわけじゃないさ。だけどさ、現場に残された物たちが必死に訴えかけてくるんだよ、そこにかかわった人々の気持をね」
ゼフェル 「わかる気がするぜ。オレだって爆弾解体してっと作った奴の気持がよーくわかんだよ!」
ランディ 「すごいなあ〜。プロって感じで」
ゼフェル&セイラン 「感じ、じゃなくてプロなんだヨ!!」
ランディ 「失礼しました(と、再びジャンプしながら後ずさり)」
セイラン 「つまり、どんなに悲惨な現場だとしても、そこに人がいたならば必ず”希望”があったはず。パンドラの匣の底に残っていたようにね。僕はその”希望”がつまった物証を見つけ出すことが、たまらなく好きなのさ」
ゼフェル 「けっ、気障な野郎だぜ、全く。オレまでグルグル回りたくなっちまう」
セイラン 「いいじゃないか、ボケ2人の方が正当なトリオ漫才だからね。
鑑識の心境はまさに『溺れたる夜の海より 空の月、望むが如し。その浪はあまりに深く その月はあまりに清く、』といったところさ」
ゼフェル 「そう言やあオレも無事に解体し終わった時にはいつもどっちかってーと太陽より月の光を浴びたい気分だな。(ランディを見て)あいつは年がら年中ギラギラしてやがるけどな」
ランディ 「よーし、だんだん調子が出てきたぞ。次はムーンサルトだ!」
セイラン 「どうやら少し月にも興味ができたみたいだね」

引用:「失せし希望」(中原中也・作)より

素材提供:It's just so so

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