第十五席


ロザリア 「さあ出番ですわよ。イヨカンさんもキンカンさんも用意はよろしくて」
レイチェル 「だから『イヨカン』は認めないって言ってるでしょ!」
コレット 「だったら『天才イヨカン』ならどう?」
レイチェル 「アナタねー」
コレットの手を引き行ってしまうロザリア、しぶしぶ後を追うレイチェル。
ロザリア 「ごきげんよう、皆様。『シトラス』のリーダー、『ポンカン』です、オホホホ」
コレット 「サブリーダーの『キンカン』ちゃんでーす」
レイチェル ちょっとアナタ達! ワタシはそんな役割分担聞いてないわよー!!」
ロザリア 「あら、その他大勢の方は黙ってらして」
コレット 「レイチェル1人なのに『その他大勢』だなんて、さっすがポンカン師匠!」
ロザリア 「ほめすぎですわ、キンカンさん。ところで私、このところピカレスク小説に心を奪われているのをご存知かしら?」
コレット 「えっ、今のは何? ピカ、何ですって??」
レイチェル 「だから前からこの子には5文字以上はダメって言ってるでしょ! 『ピカレスク』小説、つまり悪漢小説ってことよ」
コレット 「アッカン? それ、何地方のおみかん?」
ロザリア 「全くいちいち手のかかる人ねー。アッカンとは悪の漢(おとこ)、要するにアンチヒーローと言えばおわかりかしら?」
コレット 「なーんだ、それならそうと最初から言ってくれればいいのに。お客さんだって”明るい農村”小説だって思ったわよねー」
静まりかえる客席。
レイチェル 「それで、今日はピカレスク・コントでもやろうってーの?」
ロザリア 「さすがは一を聞いて十を知るイヨカンさんね。こちらに台本、御用意させていただきましたわ」
と、ノートを取出しメガネをかける。
レイチェル 「出ちゃったわヨー、”思い込みという乱視”が入ったメガネが」
ロザリア 「タイトルは『カタルヘナ家の秘宝〜青い恐怖〜』」
コレット 「ワー、何だか面白そうー。でも配役はどうするの? 『シトラス』には女の子しかいないし…」
レイチェル 「もう大体察しはついてるワ。悪漢役はワタシだってね」
ロザリア
「あら主役なんだから文句はないでしょう? で、悪漢に恋してだまされるカタルヘナ家の令嬢役がもちろん私、と言いたいところだけど、私にはコントの演出という役目がありますから、この場はキンカンさんに花をもたせますわ」
レイチェル 「大丈夫? 『カタルヘナ家』って言えないんじゃない、この子」
コレット 「イジワル! いつか死刑台のエレベーターに乗っけてあげるからね!」
ロザリア 「まあどうしましょう。令嬢が悪漢のような口のきき方をして。何なら役をチェンジしてもよろしくってよ」
コレット 「待って! それはやっぱり私、女の子の方がいいと思うし…レイチェルって私からみても十分漢(おとこ)らしいと思うし…ねぇ、いっそのこと『イヨ漢』にしたらどうかしら!」
レイチェルのかかと落としが決まり、気絶してしまうコレット。
ロザリア 「全くいちいち手のかかる人ねー。(と、三味線を鳴らしてコレットを起こすと)では第1幕夜の広場から始めますわよ」
レイチェル 「(悪漢声で)今夜こそカタルヘナ家の秘宝は俺のモノだ。見た者を虜にして離さないというブルーの輝き、楽しみだぜ」
コレット 「(レイチェルにいきなり抱きつき)お会いしたかったわ、すごく悪いお方!」
レイチェル 「『悪い』って言うなよ、『すごく』も余計だぜ」
コレット 「いいえ、『悪い』のは貴方のせいではありませんわ。きっとこの夜のせい…ああ夜が憎い!」
レイチェル 「盛り上がってっとこなんだが、例のモノは持ってきてくれたのか?」
コレット 「もちろんですわ。かなり臭いますけれどどうぞ」
と、ブルーチーズを取出す。
レイチェル 「ブルーって青かびのことかよ!」
ロザリア 「ストップ! ちょっと今のツッコミ早すぎましてよ」
火花を散らす2人。
コレット 「まさか、早くも『シトラス』解散の危機?!」

素材提供:It's just so so.

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