フリスビー刑事レイチェル編・第2話
 「心に巣食う闇」


○七聖警察署・会議室

セイランから説明を受けているランディ、オスカー、リュミエール。
セイラン 「…被害者の胸部には十二ケ所の刺し傷があったが、致命傷となったのは首の刺し傷の方だったと考えられるね…」
オスカー 「それはつまり、まずとどめを刺してから、さらに傷を付けたということか?」
セイラン 「傷の状態から見れば、そういう結論になるでしょう」
リュミエール 「犯人は人としての心を失っていますね…」
と、ハーブティを一気に飲み干す。
ランディ 「例の袋詰めの捨て犬の件と関わりがあるんでしょうか…」
オリヴィエの声 「フリスビーもたまにはセンスのある意見を言うじゃないの」
モデル歩きで入室してくるオリヴィエ。
オリヴィエ
「私も事件の鍵はズバリその哀れなワンちゃんたちだとにらんでんのよね。
 で、今回スペッシャルな助っ人を呼んできたってワケ。さあ、入ってらっしゃい!」
入ってきたのはレイチェルと警察犬見習いのルーティスだ。
ランディ 「(驚きのあまりジャンプしそうな勢いで)レイチェル!!」
レイチェル 「(俯き加減で)お久しぶりです、ランディ刑事さん…」
オスカー 「(口笛を鳴らし)見違えたぜ、お嬢ちゃん。制服が似合ってるぜ」
リュミエール 「訓練士になられたのですか、おめでとうございます」
レイチェル 「これがワタシの初仕事になります。どうぞよろしく御指導下さい」
と、頭を下げる。拍手を送るオリヴィエ達だが、ランディは目を合わせようとしないレイチェルが気になるのだ。
オリヴィエ 「それじゃフリスビー、レイチェルと協力して事件前後の被害者の足取りを追ってちょうだい。オスカーは凶器の捜索、リュミエールは被害者の顔のモンタージュ作成を…」
リュミエール 「係長! そんなこともあろうかと私、似顔絵を描いてまいりました、この通り」
と、額に入った絵を取り出す。
絶句している一同。
セイラン 「随分と芸術的に仕上げましたね」
リュミエール 「特徴はかなりとらえられていると自負しているのですが?」
オリヴィエ 「ごめんリュミちゃん、凡人にはちょーっと難解みたいだから、モンタージュ作ってきてちょうだい」
リュミエール 「…わかりました。係長のおっしゃる通りに致します」
と、肩を落としている。

○ショウ爺さんの小屋・中

心細気にランディにすり寄る子犬たち。
レイチェル 「この子達…わかっているのね…」
ランディ 「レイチェル、仕事の前に俺、君に言っておきたいことが…」
レイチェル 「(ランディに背を向け)正直凹んでます。だってそうでしょう? 何もかも忘れて生まれ変わってがんばろうって時に、ワタシの過去を全て御存知な方々と初仕事なんですから」
ランディ 「俺は別に…」
レイチェル 「だけど心配しないで下さい。ワタシなりに全力を尽くします。歩き出したからには少しずつでも前に行かなきゃ」
突然吠え声をあげるルーティス。
レイチェル 「(ルーティスが示す場所を見て)! 傘がなくなってるわ!」
ランディ 「傘?」
レイチェル 「ええ、ショウさんがいつもここに立てかけていた傘がないんです…」
ランディ 「ひょっとしたら持って出たのかもしれないね。聖池付近の遺留品にもなかったし、犯人が持ち去った可能性もあるな…」  

○学習塾・玄関(夕)

傘立てに乱雑に傘が放り込まれていく。
暗い目をした中学生マリンも無造作に放り込むが、他の傘と重なってしまい、いらだってその傘を外に投げ出してしまい、後ろにいた女生徒にあたりそうになってしまう。
女生徒 「何するの、危ないじゃないの!」
無言のまま女生徒をにらみつけると行ってしまうマリン。

○同・教室内(夕)

授業中だが、ボーッと天井を見上げながら、ひたすらペンを回し続けているマリン。

○走る車の中(夜)

母親が運転する車の後部座席にすわっているマリン。
信号待ちで、空き地の怪しげな軽トラックを見つける母親。
母親 「またあの人達! 売れ残ったペットを不法投棄しているのね」
マリンの目がギラリと光る。

○バー『シルクロード』・中(夜)

お互いの顔も見えないほど暗い照明。
生演奏らしきジャズ音楽が聞こえる。
カウンターでため息を吐くランディ。
マスター 「今夜は元気がないみたいですねー、いつもの『チャールストン』より『テネシーワルツ』が似合う雰囲気ですよ」
ランディ 「…俺、ある人を元気づけたいんですけど、上手く言葉が出てこなくて。そんな自分に腹が立つんですよ」
マスター 「あー、そうだったんですかー。人を元気づけるのって難しいですよね。私も商売がら毎日壁にぶち当たってますよ」
ランディ 「毎日、ですか?」
マスター 「ええ、それはもう。お客様はそれぞれその方の人生を背負われていますし、『人生の節目となる時間は自分でもそれとわからない』って言いますからねー」  
カウンターの離れた席に男がすわる。
胸のペンダントが揺れている。
マスター 「いらっしゃいませ〜何をお作り致しましょう?」
ペンダントの男 「『コープス・リバイバー』、強めのブランデーでな」
マスター 「かしこまりました」
  × × ×
ペンダントの男 「(マスターの視線を感じ)このペンダント、気になってるようだな」
マスター 「ああ申し訳ありません。ペンダントの中からピチャピチャいう音が聞こえたような気がしたものですから…」
ペンダントの男 「ほう、マスターは見かけによらず鋭いんだな。液体爆弾でも仕込んでいるんじゃないかと心配してるんだな?」
その言葉に過激に反応するランディ。
マスター 「まさか! もっとエクセレントな物が入っているんじゃありませんかねー?」
ペンダントの男 「当ててみるか? そこの白マフラーのお前もどうだ? 当たったら1杯おごるぜ、新米刑事」
ランディ 「!!」
マスター 「お、お客様は占い師の方ですか?」
ペンダントの男 「はははは…まあ似たようなものさ。どうだ、マスターの心眼は?」
と、ペンダントをかざすのだ。

○公園(早朝)

まだ薄暗い中張込んでいるレイチェルとルーティス。
ランディ 「遅れてごめん」
と、走ってくるなりレイチェルが慌ててランディの口を手で塞ぎ、遠くのベンチの方を指差す。
ベンチの傍には黒い人影が見え、かすかに犬の鳴き声がする!
少しずつ近づいていくランディたち。
   × × ×
ベンチの傍にいるのはマリンである。
紙袋に子犬を詰め込んでいるのだ。
マリン 「いくら鳴いたってダメだ。お前たちは孤独なんだからな」
と、ランディが飛び出してくる。
ランディ 「何してるんだ、君は!」
瞬間逃げ出そうとするマリンの後ろにはレイチェルとルーティスが回り込んでいる。
低いうなり声をあげているルーティス。
逆上して紙袋を投げ付け、犬たちが混乱している隙をついて逃げ去るマリン。
ランディ 「待て!」
と、公園の外へと追っていくのだ。
ルーティスを押さえようとするレイチェルだが興奮は増すばかりだ。
レイチェル 「その子たちは敵じゃないわ、ルーティス、ふせ!」

○路上(早朝)

必死に逃げているマリン。そのマリンに路地の影から呼び止める声がする。
「マリン!」
マリン 「(声の主を見て驚き)君は…」
と、その場にくずおれる。
「来いよ! いい隠れ場所があるから」
振向くと、ランディが追ってくるのが見える。すかさず路地に逃げ込むマリン。

○廃虚ビル(早朝)

息を切らせ走ってくるランディ。
ランディ 「くそっ、どこに行ったんだ!」
と、ビルの上の方から足音がした!
ランディ 「あそこか!」
と、半分ガレキのようになっているビルの階段を登っていく――。
(つづく)

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恒例マスターシーンのお相手は、カクテル名でもう誰かわかるよね。
後々活躍予定(少なくともあのアニメよりは?)ですが、まだ未知数。(すばる)

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