フリスビー刑事エルンスト編・第3話
「初恋の味」


○『情報屋』・中

パソコンで作業をしながらランディの話を聞いているチャーリー。
チャーリー 「要するにや、フリスビーはんが言いたいんは、元刑事で、しかもマリモのようにあったかーい御仁が、人殺しなんか考えへん、ちゅうこっちゃねー?」
ランディ 「そうハッキリ断言できるかって言われたら自信はないんだけど、何となくあの人にはそぐわない気がするんです、俺」
チャーリー 「いわゆる刑事の”カン”いう奴ちゃな。そういうん、意外と大事にした方がええ思うで、情報屋の”カン”としては」
パソコンにメールが着信する音。
チャーリー 「おっ、新ネタやろか。…なんや、またホルスト議員がらみのかいな」
ランディ 「ホルスト議員って、今国会でやたらと注目を浴びてる人ですか?」
チャーリー 「せやせや。旬やさかい、情報が集まりすぎて、ウソとホントを選り分けるんが却って大変なんやでー、マジで」
ランディ 「はあ…」
チャーリー 「けどな、見分けるコツはある」
ランディ 「コツ? 何ですか?」
チャーリー 「そう爽やかーに聞かれるとつい答えてしまうなあ。つまりや、ウソの方がようできた話や、いうこっちゃな」
と、ウィンクしてみせる。

○七聖警察署・捜査課

眉間にシワを寄せ、デスクに山積みになった書類を読んでいるオリヴィエ。
そこへハーブティを持ってくるリュミエール。
リュミエール 「一息つかれてはいかがです?
 今日はクコ茶をイチジクとブレンドしてみたのですよ。ですから美肌効果も期待できます、係長」
オリヴィエ 「気が利くじゃないの。最近お肌の手入れもままならなくってカッサカサ。
 ありがたくいただくわ☆」
リュミエール 「どうぞ。おかわりも御遠慮なくおっしゃって下さいね」
オリヴィエ 「ねぇリュミちゃん、あんたはどう思う? ヴィクトールが事件から3年経った今、何故復讐を果たそうとするのか?」
リュミエール 「それは…クリスを撃った犯人がわかったから、ではないのですか?」
オリヴィエ 「まあ普通に考えればね。だけどそれなら予告状なんてまどろっこしいマネしないでさっさと殺っちゃえばいいんじゃない?」
リュミエール 「係長、警察官として少しお口が過ぎませんでしょうか…」
オリヴィエ
「あらそう? このエルンストが持ってきた資料を熟読した感想を述べるとね、まず彼ほどの敏腕刑事が犯人の割り出しに3年もかかったとは思えないってこと。
それから汚職事件の捜査打切りの背景には何らかの意志が働いていたってこと」
リュミエール 「それはオスカー様もおっしゃっていました――『十中八九政治的圧力だろう』と」
オリヴィエ 「(ハーブティをグッと飲み)このヤマは何か複雑にブレンドされてる気がするねェ。エルンストがわざわざ私達にこの話を持ってきたワケも、その辺にあるんだろうけどさ」

○ユニバーサル病院・カウンセリング室

カルテに書き込んでいるコレット。
お湯が沸く合図を聞き、立上がって手作りの弁当を広げ始める。
そこへノックの音がして――
エルンスト 「失礼します。!…これは食事中だったのですか」
コレット 「どうぞお気遣いなく。お忙しいんでしょう? よかったら御一緒にいかがですか? 実は夜食の分もありますの」
エルンスト 「いえ、そんなわけには…」
 × × ×
弁当箱を並べて向い合う二人。
中身はロールキャベツだ。
エルンスト 「…懐かしい味がしますね」
コレット 「もしかして覚えていて下さいましたの?」
エルンスト 「忘れるはずがありません。クリスと私が徹夜で昇進試験の勉強をしていた折、あなたが差入れて下さったロールキャベツ。まさにこれです」
コレット 「覚えているのはそれだけ?」
と、いたずらっぽく笑う。
エルンスト 「他に何か?」
コレット
「私、お説教されましたのよ。『春キャベツにはビタミンC、ビタミンUの他、良質の植物性たんぱく質やカルシウムも豊富に含まれています。それなのにこの料理法ではその成分が失われてしまう』って」
エルンスト 「私がそんなひどいことを言ったのですか!? 信じ難いことです」
と、頭を振る。
コレット 「今だから白状しますけど、私その時エルンストさんに恋してましたの。でもあの一言で、ダメだわって諦めたんですよ」
摘んだミニトマトを落としてしまうエルンスト。

○同・特別診療室

パジャマ姿のホルストがベッドの上で新聞を読んでいる。
入口に立っているボディガード2人。ノックの音に素早く身構えるが――
アレックスの声 「アレックスです」
ホルスト 「入りたまえ」
神妙な様子で入ってくるアレックス。
ホルスト 「先生、再検査というのは本当かね? 選挙前で何かと忙しいんでね。さっさと済ませてもらいたいんだよ」
アレックス 「大事な話があります。できれば二人だけでお話したいのですが」
目配せをしてボディガードを外に出ていかせるホルスト。
ホルスト 「命にかかわることなのかね?」
アレックス 「はい。あなたと私の社会的生命が絶たれる、危機的状況です…」

○同・エレベーターの中

一人で乗っているエルンスト。
 × × ×
エルンストの回想シーン。
エレベーターに乗込んでくるクリス。
クリス 「久しぶりだな、エルンスト」
エルンスト 「3日前に会ったばかりですが」
クリス 「そうだったか? そうだ、お前に聞きたいことがあるんだが」
と、エルンストの横に並ぶ。
クリス 「…コレットと付合おうと思うんだが、かまわないか?」
エルンスト 「刑事という職業を理解でき得る女性ならば、かまわないのではないですか」
クリス 「あ? ああ、そうだな」
 × × ×
エルンストの独白 「今やっとわかりましたよ、クリス。あなたの質問の意味が」

○同・一階ロビー

エレベーターから降りてくるエルンストの視界にヴィクトールの姿が横切る。
ダッシュしてその姿を追い求めるエルンスト。そして、二階の踊り場から見下ろしているヴィクトールと目が合うのだ!
エルンスト 「!」
ヴィクトールの独白 「俺を止めることはできない。例えお前でもな」
エルンストの独白
「いいえ、止めてみせます。
 クリスだって望んではいないはずです。あなたが地獄に堕ちることなど」 
アッという間に人ごみにまぎれてしまうヴィクトール。 
エルンスト 「(ケータイで)ヴィクトールをユニバーサル病院内にて発見。緊急手配頼みます!」

○ホルストの自宅(夜)

庭に投げ込まれる封筒。
ボディガード達が走り出てくる
ボディガード 「おい、誰かいないか見てくるんだ!」
散っていく男達。
封筒の中身を調べるボディガード。
中から出てくる小指大のカプセル。
ボディガード 「まさか爆弾じゃねえだろうなあ??」
と、突然煙を吹き出すカプセル。
慌てて投げつけると、衝撃音とともに火柱が上がる!
その火を見つめる二つの目―ヴィクトールである。

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*ちっとエルコレらしくなったかしらん?(すばる)

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