フリスビー刑事エルンスト編・第1話
「予告状」


○七聖警察署・捜査課

デスクにハガキを積上げ、ねじり鉢巻をして何か懸命に書き込んでいるランディ。
オスカー
「精出してるじゃないか、フリスビー(と、ハガキを1枚手にして)『新色ルージュプレゼントキャンペーン』だって!? 一体何やってんだ、お前…」
と、リュミエールがオスカーに指を差して合図を送っている。指さす先は係長デスク。
そこにはランディのデスクの数倍ものハガキが!
オリヴィエ
「私としたことが、応募締切日を1ヶ月も間違えちゃうなんて。この際オスカーの世にもキッタナイ字でもしょうがないねぇ、手伝ってちょうだい!」
オスカー 「冗談じゃないぜ。リュミエール、せいぜい精のつくハーブティでも入れてやるんだな」
リュミエール 「そうですねぇ、ではクコ茶でもお入れしましょうか、濃いのをたっぷりとね。ふふふ…」
オリヴィエ 「あんた達のそういう態度、査定に入れちゃうもんねー」
そこへドアを開けて入って来る男――身なりを寸分なく整えた、眼鏡をかけた男だ。
エルンスト 「この部屋は相変わらず”常春”な空気が漂っているようですね」
オスカー 「これはこれは只今売り出し中のエリート検事殿じゃないですか。わざわざ足を運んでいただいて恐縮ですな」
と、大げさにおじぎをしてみせる。
オリヴィエ 「(顔も上げずに)困ったねぇ、この忙しい時に何だか嵐のヨ・カ・ン…」
エルンスト 「ええ。この嵐は、何があっても止めなくてはなりません」
緊張の顔になるランディ、オスカー、リュミエール。
オリヴィエ 「(ようやく顔を上げ)リュミエール、クコ茶の追加オーダーだよ」

○同・会議室

クコ茶を配り終わり席につくリュミエール。
エルンストが胸ポケットから封筒を取出し、テーブル上に置く。
エルンスト 「これが昨日私の所に届いた殺人の予告状です」
ランディ 「殺人!」
エルンスト 「(リュミエールに)読んでいただけますか。もちろん指紋は採取済みです」
リュミエール

「『エルンスト、元気で己の責務を全うしていることと思う。あれから3年、俺の愛すべき部下であり、お前の最も信頼すべき友クリスの仇を討つべき機会がようやく訪れた。法の番人であるお前には迷惑をかける結果となるだろうが、俺は予告する。憎むべき敵を必ず地獄の炎で焼き尽くすことを』…」
オスカー 「(口笛をヒューと鳴らし)地獄の炎か。燃えさかる復讐の炎とでも言うのか」
オリヴィエ 「で、その予告状の差出人は?」
エルンスト 「かつては警視庁きっての鬼刑事としてその名を馳せた、ヴィクトール」
ランディ 「ヴィクトールって! まさか!!」
と、リュミエールの顔を見ると――
リュミエール 「エルンスト検事、もし顔写真をお持ちであればお見せいただきたいのですが…」
エルンスト 「ええ、もちろんありますとも」
と、写真をボードに貼るのだ。
ランディ 「先輩! やっぱりあの人です!」
と、席を立上がり、椅子が転がる。
リュミエール 「!…やはり先日の爆破未遂事件での鋭い洞察力は、だてではなかった、というわけですね」
オリヴィエ 「あらあら、厄介な人が厄介な事、おっぱじめるってことだねぇ。オスカー、これはどう見たって」
オスカー 「血なまぐさくなりそうだな」

○安ホテルの一室

狭いベッドに脱ぎ散らかされた服。
浴室から聞こえるシャワーの音。
TVのニュースキャスター
「警察官の拳銃使用基準の緩和以来、発砲件数が増大の一途をたどっています。中には適正な使用かどうか疑問視するケースもあり、物議をかもしています…」

○走る車の中(夕)

運転するエルンストと助手席のランディ。
エルンスト

「クリス刑事は3年前、ある総合病院建設に関わる汚職事件の捜査中、拳銃で撃たれ殉職しました。当時の主だった容疑者には既に警視庁の方で張込みの手配をしていますが、ヴィクトールの言う『憎むべき敵』というのが、全く別の人間である可能性も少なからずあります」
ランディ 「俺達はまず、ターゲットが誰なのかを突き止めなきゃならないんですね。だけど、一体どこから手をつければ…?」
エルンスト 「もしかしたら、これから向う先で手掛りを得られるかもしれません」

○コレットの家・表(夕)

 車を下りるランディとエルンスト。
ランディ 「ここは?」
エルンスト 「クリスの未亡人、コレットさんの家です」

○同・リビング(夕)

クリスとコレットが仲良く写っている写真を手に取って見ているランディ。
エルンストはソファに座ったまま、ひびが入って止まった掛時計を見上げている。
そこへコーヒーを運んでくる若き未亡人コレット。
コレット 「(エルンストの視線に気づき)…どうしても処分する気になれなくて」
 × × ×
 夕闇が迫り、灯りをつけるコレット。
エルンスト 「聞いたところによれば、カウンセラーの仕事をなさっているとか?」
コレット 「ええ、以前からカウンセリングには興味があったんですが、主人が亡くなってから資格を取って、今はユニバーサル病院に勤務していますの」
エルンスト 「そうですか。少し安心しました。貴方の心の時計は少しは動いておられるようですね」
ランディの独白 「エルンスト検事って、どうしてこんなに表情がないんだろう??」
コレット 「あのー、何かあったんですか?」
エルンスト 「はい。実はヴィクトール先輩から手紙が届いたのです。『クリスの仇を討つ』という内容の」
コレット 「ヴィクトールさんから!?」
ランディ 「ヴィクトールさんに最後にお会いになったのはいつですか?」
コレット 「主人が亡くなった直後は、何かと様子を見に来て下さいましたが…。ここ1年位はお見えになっていませんわ」
ランディ 「(残念そうに)そうですか…」
 と、突然玄関のチャイムが鳴る。
コレット 「すみません。ちょっと失礼します」

○同・玄関(夜)

目を赤く泣きはらしている老女ポーラ。
ポーラ 「コレット先生! 今日という今日は私、もう我慢がなりません!」
コレット 「ポーラさん、どうか落着いて。一体何があったんですか?」
ポーラ
「アレックス先生が主人のことを『身体のあちこちの機能が落ちてきていて、哺乳類として死の準備段階に入っている』とおっしゃったんです! 『哺乳類』だなんて、そんな言い方あります!?」
 と、身体を震わせて泣くのだ。

○安ホテルの一室(夜)

バスローブ姿のヴィクトールが、アタッシュケースから拳銃を取出す。
ヴィクトール 「クリス…もし今だったら、お前は死なずにすんだのか?」
 × × ×
 ヴィクトールの回想シーン。
 ヴィクトールの腕の中で静かに息をひきとるクリス。
 × × ×
ヴィクトール 「お前の無念を晴らすのは、俺だけの役目だ。他の誰にも渡さん。全てを投げうっても、必ず俺のこの手で…」
と、拳銃を窓外の月に向って構える。

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 何話で終われるか、今のところ全くわからんです、はい。たぶんこれまでで一番長くなりそうな気配だけはあります。
一応エルコレの予定ですが、甘さは限りなく低くなると思われ…。だってエルエルだもんっ(←ものすごい責任転嫁)(すばる)