フリスビー刑事ロザリア編・第3話
「ルージュ刑事の華麗なユウウツ」


○バラ園

色とりどりの大輪のバラ群。
 女の声
「ラピスラズリはね、『神につながる石』とも言われるくらい霊力の強い石なの。
 古代エジプトでは、王族しか持ってはいけないとされた時期もあるのよ。この青い光が、きっと私達の願いをかなえてくれるわ」

○フォトスタジオ

熱気を帯びた撮影風景。
王女の誇りを体現しているロザリア。
エキストラで貴婦人に女装したオリヴィエが目を細めて見ている。
オリヴィエ 「あんまりキレイで、取り乱しちゃいそうだねェ…」
と、そこへヘレンと共に入って来るオスカー。
オリヴィエ 「あーら、いい男☆」

○同・セット裏

オスカー 「似合いすぎですよ、先輩…」
オリヴィエ 「あらそう。オスカー、じゃなかった、確か係長から聞いたニックネームはハナミ…」
オスカー 「(大きく咳払をして遮ると)チャーリーからの特ダネです」
と、オリヴィエに2枚の写真を渡す。
1枚はティアラをした女性である。
オスカー 「名前はセルマ・アロン。アロン家は一時はすう勢をきわめた名家だったそうですが、今は没落しています」
 もう1枚は男性の写真――ホテルの中庭で雨に濡れていた男だ!
オスカー 「セルマには弟が一人いて、セヴという名で数年前から行方不明です」
オリヴィエ 「さすがチャーリー。今回も高くつきそうだねェ」

○同・控え室

エキストラ達が待機している。
ヘレン 「皆さん集まって下さい。簡単な打合せを行いますので」
騎士の扮装をした男がゆっくりと立上がる――セヴだ!

○同

カメラマン 「よしOK! これで王女の絶頂期のショットは終わりだ。ロザリア、疲れただろう」
ロザリア 「いいえ、私平気ですわ」
カメラマン
「いい返事だ。実は私も気分が乗ってきている、いや君に乗らされていると言った方がいいかな。じゃ、1時間後に『憂い』のショットで撮影再開といこう。みんな、それまで休憩してくれ」
メイク係 「ロザリアさん、メイク変えます?」
ロザリア 「そうね。『憂い』だから、泣きボクロを少し強調したらどうかしら」

○同・控え室

ヘレンの説明が続いている。
ヘレン 「…戦いは大敗に終わり、王家は非難を浴びます。もちろん王女の身辺も一変し、ついには略奪まで行われるようになります…」
と、遅れて入室してくるオリヴィエ。
セヴの側に立つが、まだその正体には気づかない。
       

○同

大がかりな火事場のセットが組まれている。オレンジ色の照明の中、エキストラ達が入ってきて位置に付く。
ヘレン 「男性は城門側、女性は庭園側にお願いします」
オリヴィエ 「(城門側に行きそうになって)おっといけない。私は女、女っと…」
× × ×
ロザリアがカメラマンと登場する。
ティアラに鋭い視線を刺すセヴ。
セヴに気づくオリヴィエ。
カメラマン
「エキストラの皆さん、このショットの出来が写真集の成否を決めると言っても過言ではありません。是非よろしくお願いします。
(と、カメラに向い)ライト、オン!」
スポットライトに照らされるロザリア。
ゆっくりとティアラを外す。
セヴ 「奪えーっ!!」
声を合図にロザリアを取囲むエキストラの男達。
ティアラを奪おうとするセヴの手。
恐怖におののくロザリアの表情。
カメラマン 「うーん、実にいいっ」
と、シャッターを押しまくる。
だが、セヴの顔も恐怖している――背中からオリヴィエに拳銃を突きつけられていたのだ。
オリヴィエ 「(囁くように)それ以上彼女に手ぇ出したら、あんた終わりだよ、セヴ」
 

○同・表

 オスカーに連行されるセヴ。
オリヴィエ 「一緒に行こうか?」
オスカー 「やめた方がいいんじゃないですか。係長が腰抜かしますよ」
オリヴィエ 「あら、惚れちゃうかもよ☆」

○七聖警察署・取調室

セヴを取調べているオスカー。
オスカー
「取調べを前に不安はないか? 大丈夫、このオスカーがついてるからな。
(と、脅迫状を置き)これはお前が書いたモノだな?」
セヴ 「さあ、知らないね」
オスカー 「フッ、とぼけても無駄だぜ。俺は何でもお見通しなのさ。ティアラのことはどうして知った? 姉のセルマに泣きつかれたのか?」
セヴ 「(突然顔色を変え)姉さんは関係ない!! 言いがかりは許さんぞ!!」
と、オスカーにつかみかからんばかりの勢いだ。
そこへ優雅に登場するカティス係長。
カティス 「容疑者を激昂させるなんて、青いな、まだまだ、赤い髪の坊や」
オスカー 「係長…」
カティス 「すまなかったね、セヴ君。部下の非礼は私の失態でもある。慎んでお詫びするよ」
と、まるで手品のように深紅のバラの花を1本、セヴに差出すのだ。
セヴ 「!…これは…」
カティス
「私の庭でようやく咲いてくれたトラディスカントだよ。このバラは過保護に育てなきゃならんが、それだけの価値は十分だ。実にかぐわしい香りだ…」
バラを手に取り涙ぐむセヴ。
オスカーが取出したセルマの写真には、まさに咲き乱れたトラディスカントが背景になっていた!
カティス 「ワインレッドのバラの花言葉は、『深い愛情』だそうだな。君の愛はきっとセルマに届くことだろう」
セヴ 「…お願いです。姉さんは今心臓を患って病院にいます。だから僕のやったことは彼女には知らせないで下さい…」
カティス 「わかった、約束しよう。全て、話してくれるんだね?」
セヴ 「はい、お話しします…」
オスカー
「係長、さすがです。このオスカー、己の未熟さを思い知りました。ですが見てて下さい、いつかきっと『落としの達人』と呼ばれるように、俺の情熱を捧げます!」
カティス 「期待してるよ、ハナミズキ」
オスカー 「えっ? 今何て?」
カティス 「今日からお前のニックネームは『ハナミズキ』に昇格だ。ハナミズキは平和のシンボルの花だ。どうだ、いい名前だろう?」
オスカー 「ありがとうございます!!」

○キングダムホテル・中庭

 雨やどりした大木の下で話しているオリヴィエとロザリア。
 二人に降り注ぐ木漏れ日がまぶしい。
ロザリア 「ヘレンから聞きましたわ。あのセヴという人は、病気のお姉様のためにティアラを取戻そうとしたと」
オリヴィエ
「ラピスラズリの霊力を本気で信じていたみたいだね。姉のセルマはあのティアラを愛用していたらしいから、取戻せば少しでも元気を出してくれると思ったのかもしれない…」
ロザリア
「私…(とティアラを取出し)お返しすることに決めましたの。もちろん、今の持主とは交渉済みです。どうぞルージュさんからお渡しして下さい」
オリヴィエ 「ロザリア…アリガト」
見つめ合う二人を遠くから心配そうに見ているヘレン。
オリヴィエ
「私もヘレンから聞いてるよ。写真の出来が出色で業界の前評判も上々、この分じゃパリ進出間違いなしってね。私も写真集の片隅にこっそりと出してもらって、自慢できるってもんだよ」
少し暗い表情になってしまうロザリア。
オリヴィエ 「どうしたの。嬉しくないの?」
ロザリア 「(オリヴィエに背を向け)…嬉しいですわ。夢がかなうんですもの、嬉しいに決まってますわ」
オリヴィエ 「……」
ロザリア 「私、ルージュさんにもう一つお渡ししたい物がありますの」
と振返りオリヴィエの手に小箱を渡す。
小刻みに震えるロザリアの手を、そっと包み込むオリヴィエの手。
オリヴィエ 「このプレゼントは私あて?」
ロザリア 「(顔を赤らめ)ええ」
木漏れ日のシャワーを浴びたオリヴィエをじっと見上げるロザリア。
ロザリア
「私、雨粒のキラキラも素敵だと思いましたけど、この木漏れ日のキラキラの方が好きかもしれませんわ。ええきっと…
(大声で)大好きですわ!」
一瞬ロザリアの手を強く握りしめるオリヴィエだが――
オリヴィエ
「さーて、そろそろ職場復帰しなきゃね。でないと、あんたをこのちっぽけな腕の中に閉じ込めちゃいそうだよ。
(と、手を離し)ロザリア、ティアラは間違いなくセルマに届けるからね」
と、軽く敬礼すると去っていく。
入れ替わるようにやって来るヘレン。
ヘレン 「ロザリア…」
ロザリア 「ヘレン…。私、生まれて初めて恋を声にしたわ」
遠ざかるオリヴィエの背中(回想終)。

○オリヴィエの部屋(朝)

鏡台の前で髪を整えているオリヴィエ係長。引出しから小箱を取出す――ロザリアから受取った小箱だ。
オリヴィエ 「朝の最後の仕上げといきますか」
と、小箱から出したのはツケボクロだ。
そして左目の下に丁寧につけるのだ。
オリヴィエ 「準備OK。さーてフリスビーは書類仕上げてきてくれるのかね、ったく」
と、出勤していく。
テーブルに広げてあるファッション雑誌のロザリアの記事
――『パリで活躍中のモデル、ロザリア・デ・カタルヘナのセクシー”泣きボクロ”』。
(ロザリア編完マスター編に続く)

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やはり今後の展開上、アンハッピーエンドにせざるを得なかったんですが、これでも目いっぱいオリロザ推奨作品でございます、はい。
カティス係長、今回サブキャラに甘んじましたが、いつかはメインで書いてみたいっすねー♪(すばる)

七聖署、いい男揃い!ちょい気障風味なのは係長の薫陶なの?ラストがカリオストロ風味ですね。(ちゃん太)

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