フリスビー刑事ロザリア編・第2話
「雨やどり」


○七聖警察署・柔道場
       

カティス係長が相手をしてやっているのは若き日のオスカー刑事である。

オスカー 「男とからむなんてまっぴらだぜ」
と、カティスから逃げ回っているが、足をかけられ、あっさりと寝技に持込まれてしまう。
カティス 「かかったな、坊や。さーてニューフェース君としては、どんな返し技を仕掛けてきてくれるのかな?」
オスカー 「…フェッ、フェッ、フェックショワーン!!」
と、全身くしゃみをブッ放した!
顔面にとてつもない鼻水シャワーを浴びてしまうカティス。

○ ◯同・ロッカールーム

顔を念入りにタオルでふいているカティス。そこへブランド物のスーツで決め込んだオスカーがやって来て――
オスカー 「(涙目で)係長、さっきのニックネームだけはどうか許して下さい!」
カティス
「ダメだ。この俺を『水もしたたるいい男』にしてくれた罪は重いってことだ。
変えてほしけりゃ、い草アレルギーを治すか、1日も早く一人前の刑事になるんだな」
がっくりと肩を落とすオスカー。
カティス 「ところで、捜査課のもう一人のいい男、ルージュは今日もボディガード稼業か?」
オスカー 「ルージュ先輩なら、今日からキングダムホテルで張込みだそうです」
カティス 「(口笛を鳴らし)相変わらずおいしいとこもってくねえ、奴は」

○キングダムホテル・ロビー

きらびやかな最高級ホテル。行き交う車も高級車ばかりである。
周りに鋭い視線を送りながら、公衆電話で話しているオリヴィエ。
オリヴィエ 「…それでティアラの持ち主にはたどりついたの?」
チャーリー 「それが、ええ線までは来てるんやけど、まだ売り物にできるようなネタはないんですわ。明日まで待ってもらえまへんか」
オリヴィエ 「わかった。待ってるヨーン」
電話を切り立去ろうとすると、フロント係に声をかけられるオリヴィエ。
フロント係 「お電話ですが」
オリヴィエ 「どうも。…もしもし」
ロザリア 「私です。ロザリアです」
オリヴィエ 「! 何かあった?」
ロザリア 「とにかく部屋の方にすぐいらして下さい」

○同・ロザリアの部屋

 血相を変えて飛込んでくるオリヴィエ。
ロザリア 「キャッ」
異常がないか素早く視線を走らせるオリヴィエ。テーブルの上に二人分の食事の用意が整えられている。
オリヴィエ 「??」
ロザリア 「ごめんなさい。お食事を御一緒にどうかと思ったものですから」
オリヴィエ 「ふふっ、そういうこと。あんまりあせらさないでくれる? 美容に悪いし」
 × × ×
食事をしている二人。
オリヴィエ 「(ガツガツ食べながら)さすがはキングダムホテルメイドの特製ランチ。舌ざわりが違うよねェ」
ロザリア 「お気に召していただけてよかったですわ」
オリヴィエ 「(壁に掛けてある子供服に目をやり)持ってきてたんだ。よっぽど大切なモノらしいね」
ロザリア 「あれは…幼い頃にばあやが縫ってくれた服の中で一番お気に入りだったものなんです…」
と、ハッと口を塞いでしまう。
オリヴィエ 「どうかした?」
ロザリア 「私…ヘレンからいつも注意を受けてますの。『ばあや』の話はしてはいけないって。ですから…」
 と、子供服をクローゼットにしまおうとする。
オリヴィエ 「私は聞いてみたいけどなあ」
ロザリア 「えっ?」
オリヴィエ 「ヘレンはきっと、あんたを気遣って、周りの人間から育ちのことを嫉妬されて傷つけられないようにそう言うのさ」
ロザリア 「嫉妬?」
オリヴィエ
「そう、嫉妬ほどこの世で恐ろしい感情はないからねェ。でもね、私は違うよ。あんたが『ばあや』の話をするのは、自慢話でも何でもなくて、ただあんたがその『ばあや』って人のこと好きなんだってわかってるからさ。だから話してごらんよ」
ロザリア 「(子供服をしまうのをやめ)ありがとう、ルージュさん…」

○フォトスタジオ

ヘレン 「それじゃあ、どうしてもこのティアラを付けて撮影すると?」
カメラマン 「今や何の価値もなかったティアラが世間の注目を浴びるようになってしまった。その上ロザリアがかぶろうものならその価値は計り知れない。大方またオークションにでも出して一儲けしようというんだろうな」
ヘレン 「彼女に危険なことをわかっていて言ってるのかしら!?」
カメラマン 「彼らはきっと、ロザリアが狙われる理由を、ティアラとは無関係だと思っているのさ。私としても、その条件をのまなければ写真集を出さないと言われては、やむを得ないんだよ、ヘレン…」
ヘレン 「こうなったら1日も早く犯人を捕まえてもらうしかないわね」

○『情報屋』・中

封筒から1枚の写真を取出すチャーリー、その顔がパッと明るくなり――
チャーリー 「やりましたでー、ルージュはん」
写真には、例のティアラをした女性が写っている!

○キングダムホテル・中庭

並んで歩いているオリヴィエとロザリア。急に雨が降り出す。
ロザリアの手をつかむと、大きく葉を広げた木の下に逃げ込むオリヴィエ。
ロザリア 「(心底驚いたように)こうして木の下にいると本当に濡れませんのね!」
オリヴィエ 「やれやれ、あんたの大好きなばあやも、こういうことは教えてくれなかったんだねー」
不思議そうに、そして嬉々として木を見上げているロザリア。
オリヴィエの独白 「まいっちゃうねえ。あんたってば一体いくつの顔をもっているんだろうね」
二人の様子を雨にズブ濡れになりながら見ている男がいる。
 

○フォトスタジオ・控え室(翌朝)

ティアラを付けたロザリアが鏡の前ですわっている。
ヘレン 「本当にいいのね、ロザリア」
ロザリア 「ええ。私なら大丈夫。この写真集を成功させて、憧れのパリに進出するのが、ヘレンと私の夢だったでしょう?」
ヘレン 「ロザリア、あなた…」
ロザリアの独白
「彼が守っていて下さるわ。
 私は『王女』になることだけ考えていればいいのよ…」

○同・女性トイレ(朝)

ピンクのドレスをまとった女が出てくる――よく見るとそれはオリヴィエだ。
オリヴィエ 「引立役なんて性に合わないけど、お仕事だもんねェ」

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ちょい甘ですかねー。
冒頭に例のオスカーのニックネームの種明かしエピソードを入れてみたけど、どんなもんでしょ。(すばる)

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