フリスビー刑事ロザリア編・第1話
「狙われた王女」


○公園(早朝)

 サニーと共に走ってくるランディ。
 いつものベンチにすわっているのは、今朝はセイランではなくオリヴィエだ。
ランディ 「げっ、係長!」
オリヴィエ 「フリスビー、その『係長』の前の『げっ』は心の中で言いなさい」
ランディ 「すみません。珍しいですね、係長がこんなアウトドアに…」
オリヴィエ 「誰も来たくて来たんじゃないよ! ほらコレ」
と、ランディに書類を投げる。
オリヴィエ 「ったく、あんたってば『鑑識』の『鑑』が金へんだって、何度言えば覚えるんだいっ!」
ランディ 「(慌てて書類をめくり)げっ、全部『感』になってる!」
オリヴィエ
「『なってる』じゃないよ…。
 とにかく出勤前にもれなく書き直して来るんだよ。いいねっ」
ランディ 「わかりました!」
 と、サニーと共に走り去っていく。
オリヴィエ 「ったく、返事だけはさわやかボーイなんだから」
と見送る顔に、木漏れ日が当たる。
オリヴィエ 「いっけない。紫外線にやられる前に戻らなくちゃ」
だがしばし立ち止まり、木々の葉を見上げながら感慨にふけっている―。
オリヴィエの独白 「そういえば私だってアウトドアな頃があったんだよねぇ。そう、駆け出しの頃は『ルージュ』なんて呼ばれてたっけ…」

○フォトスタジオ(以下、オリヴィエの回想)

緊張した雰囲気がみなぎる中、鮮やかな青のドレスを身にまとったファッションモデル・ロザリアが登場する。
ロザリア 「ごきげんよう、皆様。今日も1日よろしくお願い致しますわ」
カメラマン 「(しばらく見とれているが)よし、今回のテーマは『王女の誇りと憂い』だ。君にピッタリじゃないかね、ロザリア」
ロザリア 「ええ。私、王女になり切ってごらんに入れますわ」
 ロザリアを満足げに見ているマネージャーのヘレン。そのヘレンの肩を叩く男―若き日のオリヴィエ刑事である。
 二人が出ていくのをいぶかしげに見ているロザリア。

○同・控え室 

 オリヴィエにコーヒーを出すヘレン。
ヘレン 「相変わらずきれいにしてるじゃない。刑事にしておくには惜しいわ。どう? 考え直して、ウチに来ない?」
オリヴィエ 「モデルはバイトでたくさん。それより深刻な用があるんでしょ?」
ヘレン 「(ポケットから手紙を出し)脅迫状みたいなの。ただのイタズラだったらいいんだけど。読んでみてくれる?」
オリヴィエ 「(素早く白手袋をして)…『ティアラは俺のモノだ。別の誰かが頭にかぶったなら、その者の命はないものと思え』だって。物騒だねェ」
ヘレン 「ロザリアは今や業界でトップクラスのモデルにのし上がったわ。だから妙なファンの一人や二人、いても仕方ないのかもしれないけど…」
オリヴィエ
「万が一ってこともあるって言いたいんでしょ。了解、調べてみてあげるよ。
 で、この手紙にある『ティアラ』って?」
ロッカーからティアラを出してくるヘレン。
ヘレン 「確かにラピスラズリがついてるけど、大した大きさでもないし、盗むほどの価値があるとは思えない代物よ」
オリヴィエ 「(ティアラを見定めつつ)出所は?」
ヘレン 「今回の写真集の企画をたてた担当者が持ってきたの。『王女にぴったりじゃないか』って」

○七聖警察署・捜査課

窓辺の観葉植物に水をやりながらオリヴィエの話を聞いているカティス係長。
カティス 「それで、ルージュとしてはその手紙がどうも事件性に満ちていると思うんだな?」
オリヴィエ 「はい。ティアラの出所が引っかかるんです。担当者は数年前にオークションで手に入れたと言ってますが」
カティス 「ロザリア・デ・カタルヘナの身辺警護か…できたら俺が代わってもらいたいくらいだが(と、ウインク)。いいだろう、許可しよう」
オリヴィエ 「ありがとうございます、係長」

○レストラン(夜)

豪華なディナーを食べているロザリア。
少し離れたテーブルでコーヒーを飲んでいるオリヴィエ。
かなりの分量を残して席を立つロザリア。追うオリヴィエ。
オリヴィエ 「もったいないねー」

○ロザリアの家(夜)

明りがついた途端聞こえるロザリアの悲鳴。
拳銃を手に入っていくオリヴィエ。
オリヴィエ 「どうした!?」
めちゃくちゃに荒らされた部屋で茫然としているロザリア。
オリヴィエ 「やってくれちゃったねー」
と、カーテンを開けると、窓ガラスが切られている。
 × × ×
鑑識員達が右往左往している。
一枚の子供服を手に握りしめているロザリア。
オリヴィエ 「どう、少しは落着いた?」
ロザリア 「ええ」
と突然オリヴィエのお腹がグーと鳴ってしまう。
オリヴィエ 「きゃはは。こんなことならあんたの残したディナー、失敬しとけばよかったかなー」
 相変わらずロザリアの表情は固い。
ヘレン 「どうやら盗まれた物はなさそうね。宝石類も全部無事よ」
オリヴィエ 「となると、狙いは例のティアラ一つだったってことかもね…」
ヘレン 「わからないわ。あのティアラにどんな価値があるっていうの?」
オリヴィエ 「犯人にしかわからない、特別な思い入れって奴かもね」
 いっそう強く子供服を握りしめるロザリア。
 × × ×
玄関でヘレンと向き合うオリヴィエ。
オリヴィエ 「彼女、相当ショックだったみたいだから、あと頼んだよ、ヘレン」
ヘレン 「ええ、わかってるわ」
と、ロザリアが紙包みを持って出てくる。
ロザリア 「あのコレ、よかったら召し上がって下さい」
差し出された紙包みをのぞくと、フルーツがいっぱい詰まっている。
オリヴィエ 「アリガト。…今夜は眠れないかもしれないけど、せめて横になって身体を休めるといいよ。それじゃ、また明日ネ」
ロザリア 「よろしくお願いします、刑事さん」
オリヴィエ 「やだねェ、『刑事さん』だなんてさ。私のことは『ルージュ』って呼んでよ☆」

○同・表(夜)

オリヴィエ
「(リンゴをひとかじりして)意外にいいとこあるじゃないのさ、あの娘。
『王女の誇りと憂い』ね…なんだかつまんないテーマだよねェ」

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ヴィエ係長の新人時代のお話なんで、最初は番外編でいこうかと思ってたんだけどねー、「マスタールヴァ〜」でやっちゃったし、まあロザリア編、ちゅうことでいいかな?
一応3話で完結予定です。(すばる)

  

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