フリスビー刑事チャーリー編
第2話兄妹


○『情報屋』・中

 コテージ風の店内に最新ハイテク機器が所狭しと並んでいる。端の方に階段があり、上っていくと屋根裏部屋のようなスペースがある。そこのベッドで仮眠しているチャーリーだが眉根にしわを寄せ、苦しそうだ。

○真暗な空間(チャーリーの夢)

手編みのセーターをハサミで切り刻んでいる少女。
無気味に反響するハサミの音。 

○『情報屋』・中

汗だくで飛び起きるチャーリー。
チャーリー 「(髪をかき上げ)かなんなあ」
と、ドアのノックの音がする。
チャーリー 「(時計に目をやり)フリスビーはんやな。今日はどんなネタやろか」
 と、元気よく階段を下りていく。

○同・前

いささかやつれた様子でドアの前に立っているランディ。
小窓が開き、チャーリーが出てくる。
チャーリーの声 「いらっしゃーい! 今日も来てくれたんやな。俺もうフリスビーはんの顔見やんと、仕事する気にならへんわー」
ランディ 「…できれば今日で決着つけたいんですけど」
チャーリーの声 「えらいつれないなあ。ほないくで。『刑事に必要不可欠な3コミ、とはキキコミ、ハリコミ、そしてもう一つは?』」
 突然ダッシュを始めるランディ。
 やがて懐から五角形のホームベースを出して前方に投げると、勢いよく―
ランディ 「スベリコミ!」
チャーリーの声 「(一瞬の沈黙の後)ブーーッ。努力は買えるんやけどなあ、ホンマ。
 ほんならまた明日」
と、小窓がピシャッと閉まる。
すべり込んだ状態から立ち直れないランディ。

○七聖警察署・捜査課

 プチシュークリームまで用意して、ハーブティを入れる準備をしているリュミエール。
リュミエール 「そろそろ戻る頃ですね」
オスカー 「無駄にならなきゃいいがね。その美味そうなプチシューが」
オリヴィエ 「(妙に力を込めて)今日という今日は絶対大丈夫! リュミちゃんの記録と並ぶ13日目だしね。捜査課のメンツにかけても、記録更新、許すまじ!」
リュミエール 「?…もしかして係長、また賭けをなさったんじゃ…」
と、ヨレヨレ状態で戻ってくるランディ、自分の机に突っ伏してしまう。
オスカー 「おお、哀れな子羊よ。今日も不合格だったんだな?」
ランディ 「申し訳ありませんっ」
オリヴィエ 「何言ってんの! 謝ってすむなら警察なんかいらないんだヨ!!」
と、逆上しまくっている。
オスカー 「見苦しいぜ。気持はわかるがね」
と、オリヴィエの胸元から拳銃トレカを一枚抜き取るのだ。
オリヴィエ 「私のとっときがっ」
と、係長デスクに突っ伏す。
リュミエール 「やはりあなた方は…」
オスカー 「当然だろ? 『フリスビーが過去最悪だったリュミエールの合格までの日数記録を塗りかえるか否か』――これほど恰好のネタはあるまい。フッフッ…」
ランディ 「…つまり俺が、最悪の記録保持者ってことなんですね」
リュミエール 「こういう時、何と言ってお慰めしたらよいのでしょうか」
オリヴィエ 「ったく、慰めるんなら私を慰めてチョーダイ!」
と、プチシューをやけ食いし始める。

○バー(夜)

お互いの顔も見えないほど暗い照明。
生演奏らしきジャズ音楽が聞こえる。
カウンターで、青のりやかつお節を口の周りにいっぱい付けながらタコ焼きを食べているチャーリー。
チャーリー 「いやあ、いつ食べてもここのタコ焼きは美味いなア」
マスター 「よろしゅうおあがり」
チャーリー 「へ?」
マスター 「使い方、間違ってましたかねー。あーいえ、最近『ごっつうやさしい関西弁』という本を愛読していましてねー。お客様のお見事な食べっぷりを見ていましたら、つい言いたくなってしまったんですよー」
チャーリー 「懐かしいて泣けてくるわ、俺。
 せやけどな、マスター。『よろしゅうおあがり』は『よく食べました』いう意味やから、食べてる最中より食べ終わった時にゆうた方がええで」
マスター 「そうだったんですか。勉強になりますねー、うんうん」

○同・表

ホロ酔いで出て来るチャーリー。
満天の星を見上げると、星々が滲んで見えてくる。
チャーリー 「『よろしゅうおあがり』か…」

○『情報屋』・前(朝)

サニーを連れたランディが、勢いよくドアをノックする。
やや間があって小窓が開き、チャーリーが寝起きの目をのぞかせる。
チャーリーの声 「えらい早い御到着やなあ、フリスビーはん」
ランディ 「俺、今朝走ってたら閃いたんです。そしたらいてもたってもいられなくなって。
 お願いします! チャーリーさん」
チャーリーの声 「しゃーないなあ。ほないくで。(あくびまじりで)『刑事に必要不可欠な3コミ、とはキキコミ、ハリコミ、そしてもう一つは?』」
 片足で地面に円を描き、サニーを相手にすもうをとり出すランディ。
ランディ 「(声をわざとくぐもらせて)ハタキコミ!」
 と、サニーを転がす。
 キャイーンと鳴くサニー。
チャーリーの声 「……ピンポンピンポーン! 大正解や、フリスビーはん。寝起きをおそうたんをマイナスしたとしても、こらエエわー」
サニーを抱きしめ、感涙にむせぶランディ。

○同・中(朝)

 ランディにコーラを、サニーにはミルクを差し出すチャーリー。
チャーリー 「おめでとうさん。この2週間、めげんとようがんばらはりました」
ランディ 「ありがとうございます。実はめげていたんですけどね、かなり」
チャーリー 「それにしてもよかったわー、『ハタキコミ』。できとしたら、オスカーはんとええ勝負とちゃう?」
ランディ 「オスカー先輩とですか? 一体どんな『コミ』だったんだろ?」
チャーリー 「ホンマは企業秘密なんやけど、フリスビーはんの不屈の精神に敬意をはろうて教えてあげますわ。オスカーはんの正解は『タキコミ』。しかも割烹着姿で炊きたてのかやくごはんまで持ってきやはったから、もうウケてウケて…」
ランディ 「プッ。アハハハハ…」
チャーリー 「爽やかな笑顔やねえ」
ランディ 「俺、今日もう先輩の顔、見れないですよー」
チャーリー 「―けど何ちゅうてもスゴかったんはオリヴィエはんやわー」
ランディ 「係長が?」
チャーリー 「聞きたいやろ? 俺も先代から聞いたんやけど、それこそ思いもよらん正解や。ええか、いうで」
ランディ 「(緊張しつつ)は、はい…」
チャーリー 「なんと…『燃えるゴミ』や。
 こらスゴイ。やっぱり係長になるような人は、初めっから違うんやなあ…」
ランディ 「(オリヴィエを思い浮かべ)『燃えるゴミ』…プッ。アハハハハ…」
 × × ×
ふとパソコン横の写真に気付いたランディ。
チャーリーの背後から小さなタコのイヤリングをした女性が抱きついているのだ。
チャーリー 「それ、妹のケイトや」
ランディ 「仲がいいんですね。まるで恋人同志じゃないですか」
チャーリー 「おおきに」
ランディ 「一緒に暮らしているんですか?」
 ゆっくりと立ち上がると窓のブラインドを上げ始めるチャーリー。
 店内に光が射し込む。
チャーリー 「ずうーっと二人っきりで暮らしてたんやけどな・・行方知れずなんや。5年前から」
ランディ 「!…」
チャーリー 「俺がこんな商売してんのも、半分以上は、妹の手がかりが欲しいからなんや…」
 と、写真をじっと見つめる。
ランディ 「チャーリーさん…」

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 第2話には不可欠(?)なあのお方が再登場だったり、ムフッ。(すばる)

 相変わらず七聖署捜査課は楽しそうな職場だ。例のバー、店名がでてくるのはいつかしら。(ちゃん太)

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