守護聖様達の9人制バレー・親善試合編
第3話「目覚めた男たち」


○辺境の惑星・メインアリーナ・特設コート

一触即発状態で対峙しているジュリアスとゼフェル。
そこへマネキン状態のクラヴィスをズルズル引きずってきて、ジュリアスの眼前に立たせるルヴァ。
ルヴァ 「あー、ちょっとの間、クラヴィスを睨んでいて下さいねー、ジュリアス」
と、ゼフェルの手を引張りコート隅に連れ出す。
ゼフェル 「離せよ、おっさん!」
ルヴァ 「ダメですよー、ゼフェル。あなたがジュリアスと争ってどうするんですかー」
ゼフェル 「けどよ」
ルヴァ 「キャプテンでしょ、あなたは。あなたはチームの支えなんですよ。支えというのは花に例えるなら、根っこなんです。根っこというものは土の中深く広がって、地上にはこれっぽちも顔を出さない。けれど根がしっかりしてなければ立派な花は咲きません。ね、そうでしょう? マルセル」
マルセル 「ルヴァ様の言われる通りです。ゼフェル、ここはガマンだよ、ガマン」
ゼフェル 「ったく。どいつもこいつも…」
ルヴァ 「あー、それにねーゼフェル。例の作戦、やってみたいじゃありませんかー?」
ゼフェル 「けっ、しゃーねーなあ。ここは一時撤退してやっか」
と、ジュリアスのところに戻る。
ゼフェル 「オレが言い過ぎたぜ。悪かったな。まだ点差はたかが6点だ。頼むぜ、ジュリアス、バシッとな」
ジュリアス 「うむ。わかればよい。(とクラヴィスに)寝るなっ!」
クラヴィス 「寝てなどおらぬ。安らいでいるだけだ、来るべき時に備えてな、フッ」
と、再びリュミエールにズルズルと引きずられていってしまう。

○同・客席

ロザリア 「私、もう許せませんわっ」
と、すっくと立上がる。
サラ 「ロザリア、どうしたの!?」
ロザリア 「(両手を口に当てメガホン状態にして)皆様あ〜、よーくお聞きになってえ〜、オレンジ・ファイターズのキャプテンは誰あろう、ゼフェル様ですのよお〜!」

○同・ベンチ

アンジェリーク 「(驚いて立上がり)ロザリアったら、また暴走しちゃってる…」

○同・特設コート

ロザリアの叫びに固まっている一同。
ジュリアス 「(片眉をつり上げ)ゼフェルがキャプテンだと?…」
オリヴィエ 「そ、そんなワケないでしょ、ジュリアス。ねぇ、ルヴァ」
ルヴァ 「ええ…ロザリア、湯あたりでもしちゃったんですかねー、あんなデタラメを言うなんてねぇ、ランディ」
ランディ 「で、ですよね。ゼフェルなんかにできるわけないじゃないですか、ハハハハ」
ランディに殴りかかろうとしているゼフェルをはがいじめしているマルセル。
ジュリアスの前にサッとひざまづくオスカー。
オスカー 「ジュリアス様、申し訳ありません。俺の足のケガのせいで、ジュリアス様に御負担をおかけしてしまいました。しかし今のこの難局を乗越えるためには、ジュリアス様のエーススパイカーとしての誇りにすがるより他ありません!」
ジュリアス 「オスカー、そなたそれほどまでにこの私のことを…。わかった、このボールに、私の誇りの全てを叩き込もう。皆も、この私についてきてくれ」
守護聖たち 「はい、ジュリアス様」
 ジュリアスがポジションにつくなり、ドッと脱力する守護聖達。
オリヴィエ 「サンキュ、オスカー」
オスカー 「試合放棄になって、ギャル達が泣き出す姿は見るにしのびないからな」
ジュリアスのスパイクがヒットし始め、白熱した試合展開。しかし中盤での点差が尾を引き、セットポイントはドラゴン・キラーズが握った。
相手エース 「リュミエール様、あなたの笑顔が見たかったのですが、残念です…」
リュミエール 「えっ??」
相手エースのスパイクがルヴァの手をはじき飛ばして、第1セットは終わる。
ガクッとひざをつくジュリアス。
ジュリアス 「すまぬ…」
ギャルの声 「落込まないでー、金髪さーん」
クラヴィス 「よかったな。ようやくお前にも声がかかったようだ」
ジュリアス 「余計な世話だっ!!」

○同・ベンチ

オリヴィエ 「アンジェリーク、得点の内訳をお願いネ☆」
アンジェリーク 「はい。ドラゴン・キラーズはスパイクポイントが7、ブロックポイントが7、サーブポイントが3、相手のミスによるラッキーポイントが8、計25点です」
ジュリアス 「相手のミスが多すぎるようだな」
またマルセルとランディがゼフェルをはがいじめにしている。
アンジェリーク
「そして我がオレンジ・ファイターズはスパイクポイントが8、ブロックポイントが4、サーブポイントが6、ラッキーポイントが4、計22点です」
オリヴィエ 「要するにブロック力の差でセットを落としたってワケだね」
ゼフェル 「それだけじゃねーけどよお(とジュリアスを軽く睨み)次のセットを取返すには、ブロックくずしの作戦が必要ってことだ」 
リュミエールの顔に緊張が走る。
オリヴィエ 「(あきらめ顔で)どーしてもヤル気なんだね…」
ジュリアス 「何なのだ? その『ブロックくずしの作戦』とは。説明せよ」
ゼフェル 「おめーは知らなくていいんだヨッ」
ジュリアス 「それはどういう意味だ!?」
ルヴァ 「あー、ジュリアス。あなたは先ほどの調子で誇りに満ちたスパイクを打ち込んで下さればいいんですよー。だってスパイクポイントでは、上まわっていますでしょ」
ジュリアス 「(誇らしげに金髪をなびかせ)そのようだな」
ランディ 「…俺のスパイクポイントって、もしかして忘れられてる?」
マルセル 「ぼくはちゃんと覚えているよ、ランディ。安心して」

○同・特設コート

 第2セット開始。
オリヴィエ 「いきなりいくよ、リュミエール」
リュミエール 「まだ心の準備が…」
と、寄り添うクラヴィス。
クラヴィス 「案ずるな。きっと上手くゆく」
リュミエール 「クラヴィス様…」
マルセルからの好レシーブをジュリアスにトスするオリヴィエ、だがトスが極端にセンター寄りに流れ――
ジュリアス 「任せておけ。私が打つ!」
と、突っ込んでくる! そして大きくジャンプした目の前に、何故か空中浮遊しているクラヴィス。
ジュリアス 「どけい! クラヴィス、打てぬではないか!」
クラヴィス 「お前が打たずともよい」
どちらがスパイクするのか戸惑っている相手ブロッカー陣を尻目に――
リュミエール 「(睨み合う二人の間から)どうぞ私の優しさをお受取り下さい」
 と、フェイント攻撃が見事に決まる。
 あっけにとられているドラゴン・キラーズ。
ゼフェル 「やったぜ、リュミエール。オレの秘策『三位一体ブロックくずし』で、このセットいただきだぜっ」
オリヴィエ 「三位一体だかなんだか知らないけど、ヴィジュアル的にいまいちな作戦だよねェ」
ブロックのペースをくずされたドラゴン・キラーズに対し、押し気味に試合を進めるオレンジ・ファイターズ。
リュミエール 「フェイントというものも、意外に気持のよいものなのですね。♪ここも穴、そこも穴、たぶん穴、きっと穴〜」
相手エース 「(うっとりと)なんてキュートな笑顔なんだ…。でも負けてはいられない」
と、反撃に転じる。
強烈なスパイクでじりじり追い上げてくるのだ。
ルヴァ 「あー、又はじいてしまいましたねー」
そのボールを追っていったゼフェルがナイスカバー、オスカーの頭上へとボールが戻ってきた!
オスカー 「見ててくれよ、お嬢ちゃんたち」
と、華麗なバックアタック。ボールが相手コートのエンドラインに落ちて決まると、ギャル達は大興奮だ。
そしてギャル達に熱い投げキッスを贈っているオスカー。
ルヴァ
「! 私としたことが今までこんな簡単なことに気づかなかったとは。オスカー、あなたは前跳びという弱点を、今まさにバックアタックという武器で克服したんですねー、うんうん」
ゼフェル
「(オスカーに抱きついて喜び)すげーぜ! これでエースの攻撃はある程度封じられる。この試合、ますますおもしろくなってきやがったぜ」

○同・客席

ロザリア 「ねぇサラ様。先ほどの私のエールが効いて、少しはゼフェル様がキャプテンらしく見えませんこと?」
サラ 「そうね。上手くチームを盛り上げているんじゃない?」
ロザリア 「(立上がり)ゼフェル様あ〜、ファイトお〜!!」
サラ 「元気になってよかったわね、ロザリア。ゼフェル様とだったら、ラブラブフラッシュ、大盤振る舞いしてあげるわよ」

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フェイントに目覚めた水様、バックアタックに目覚めた炎様、マジに目覚めた闇様、といったところでしょうか。
で、次回が最終話になると思います。(すばる)

水様の鼻歌替え歌、嬉しそう。っていうか、はまりすぎ…(ちゃん太) 

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