守護聖様達の9人制バレー・親善試合編
第2話「急襲! ドラゴン・キラーズ」


○辺境の惑星・メインアリーナ・表

ファンのギャル達にもみくちゃにされている守護聖達。
オスカー 「お嬢ちゃん達が我を忘れる気持はよーくわかるが、俺のサインが望みならば、『秩序』という言葉を思い出すんだな」
 と言ってはみるものの、色紙で身体中叩かれている。
オスカー以外も似たような仕打ちに遭っている。
パスハ 「…守護聖様方の人気がこれほどとは…まるでピラニアのようです…」
ロザリア 「今日ばかりはクラヴィス様の無敵の真っ暗闇も効き目なし、ですわね」
無表情ながら、水晶球を色々に持ちかえてポーズをとっているクラヴィス。
そこへ1台のリムジンが到着し、ジュリアスとアンジェリークが降りてくる。
デレデレな守護聖達を見るや、ジュリアスのこめかみに血管が浮き出て――
ジュリアス 「何をしておるのだ!! 早く着替えてアップをせぬかっ」
シーンと静まり返る周辺。
大地が割れたかのようにジュリアスの前に道が開け、厳かに歩いていく。その後に従ってアリーナに入っていくオスカー以下守護聖達。
アンジェリーク 「さすがね、ジュリアス様。だけどますますゼフェル様がキャプテンだなんて言えやしないなあ…」

○同・中・特設コート

ユニフォーム姿で整列しているオレンジ・ファイターズ、そしてドラゴン・キラーズの選手達。
場内アナウンス
「それではこれより親善試合を開始致します。なお本試合の主審は、本星出身で現在王立研究院主任であらせられますパスハ様にしていただきます」
会場から沸き起こる拍手に、感慨深げにこたえるパスハ。

○同・中・客席

そっと涙をぬぐうサラ。
ロザリア 「サラ様…(とハンカチを差出し)今日は故郷の空気を思う存分吸われるとよろしいですわ」
サラ 「そうね」

○同・中・特設コート

パスハ 「ではキャプテントスを行います」
さも当然のように出ていくジュリアスを素早く遮るオリヴィエ。
オリヴィエ 「ジュリアス! あのさー、Cクィックのトスの高さなんだけどねー」
と、ルヴァに目配せ。
ルヴァ 「ゼフェル、今のうちに早くジャンケンをしてくるんですよっ」
ゼフェル 「けっ、なんでそんなこそこそとやんなきゃなんねーんだよ」
マルセル 「仕方ないよ。ジュリアス様が万一帰ってしまわれたら、その場で試合できなくなっちゃうんだよ、ぼくたち」
ランディ 「8人じゃ9人制バレーはできないからね、ハハハハ」
相手キャプテンとジャンケンをして勝つゼフェル。
ゼフェル 「おっしゃあー!」
と、ガッツポーズ。
ジュリアス 「(振返り)? 何故ゼフェルがジャンケンをしたのだ?」
オリヴィエ 「そ、それはねえ、ゼフェルがジャンケンが1番強いって報告が研究院からきたんだよー」
ルヴァ 「サーブ権を先に取った方が波に乗りやすいですからねー、うんうん」
固唾をのんでジュリアスを見ている守護聖達。
ジュリアス 「そうか。ゼフェル、よくぞ勝ってくれたな。礼を言う」
ゼフェル 「ああ…」
 守護聖達の安堵のため息。

× × ×

 パスハのホイッスルが鳴り響く。
ランディ 「(巨人のような相手選手達を見上げ)俺が思ってた以上の高さだ。けどきっとこの壁を破ってみせるぞ!」
オリヴィエ 「頼むよ、ランディ。私の読みじゃオスカーの足はまだ完治してないね」
ランディ 「えっ!?」
オリヴィエ 「最初はアンタ中心に球を回すからね☆ 特訓の成果を見せてヨーン」
と、サーブを打ちに走る。

オリヴィエのサーブで試合開始―まずはドラゴン・キラーズの215センチのエースのスパイクが炸裂した!
リュミエールとジュリアスのブロックはかすりもしない。
リュミエール 「やはり私のブロックは何のお役にも立ちませんでしたね…」
ジュリアス 「仕方あるまい。我々のブロックのはるか上から打ってくるのだからな。こちらも打ち返すのみだ!」
リュミエール 「残念ですが私にはそのような技が身についておりません…」
相手エース 「気が遠くなるほど美しい方だ」
相手サーブをマルセルがオリヴィエにレシーブ、トスはランディに。
ランディ 「(二枚ブロックの隙間をぬって)そこだっ」
と、強打。見事に決まるスパイク。
マルセル 「すごいよ、ランディ。あんなに高いブロックを打ち抜くなんて!」
リュミエール 「さすがですね。私も練習のお手伝いをしたかいがありました」
ランディ 「ありがとうございます」
序盤は相手エースとランディの打合いで互角の勝負である。ところが――
オスカー
「おいオリヴィエ! エースの俺様にトスを寄こさないってーのはどういう了見だ? 俺の華麗なスパイクシーンを会場中のお嬢ちゃん達が今か今かと待ち焦がれているのがわからないのか?」
オリヴィエ 「あら、私はあんたの為を思って回してないんだよ。会場中のお嬢ちゃん達ががっくりきちゃってもいいの?」
オスカー 「この俺が期待に背くはずがないだろう。とにかく、俺に打たせろ。いいな」
オリヴィエ 「しょうがないねえ。どうなったって知らないよ」
 そしていよいよトスが上がり思い切り強打するオスカーだが、まともにブロックを食らって顔面にボールが跳ね返ってきた!
オスカー 「クッ、やられちまったぜ」
 何故かキャーキャー言ってるギャル達。
ギャル 「打ちひしがれてるオスカー様も、イケてるう〜!!」
アンジェリーク 「わかるなあ〜、その気持」
ジュリアス 「女心、というものか…」
落込んでいるオスカーの肩をそっと抱くルヴァ。
ルヴァ 「残念ながらオスカー、今のジャンプ力ではエースとしての重責は果たせないと思うんですがねー?」
オスカー 「クラヴィス様と交代しろ、ということだな、ルヴァ」
ルヴァ 「ええ。あなたはどこのポジションで何をしていたとしても見ている人を魅了する、あー、そうでしょう?」
オスカー 「フフフ…。わかったよ」
と、バックライトのクラヴィスと交代。
ゼフェル 「いいぞ。オレのマル秘作戦に近づいてきやがったぜ」

× × ×

中盤戦。ランディへのマークが厳しくなり、思うように得点できない。
エースのクラヴィスは、マネキンのように立っているだけだ。
オリヴィエ 「あのさー、クラヴィス。点差も開いてきたことだし、そろそろトスあげてもいいかなあ?」
クラヴィス 「まだだ。まだダルイ…」
ジュリアス 「クラヴィス! 貴様という奴は、この星の者達に無礼だとは思わぬのか!」
クラヴィス 「私が無礼ならば、今ここで横になっているだろう。まだギャル疲れがとれないのだ。もっとも、お前は全く近寄られもしなかったようだが」
 ジュリアスの浮き出た血管がおでこいっぱいに広がって――
ジュリアス 「話にならぬ。オリヴィエ、クラヴィスの代わりに私がエースポジションに入る。異存はないな」
オリヴィエ 「やれやれ」
リュミエール 「ということは、クラヴィス様が私の隣でブロックに跳んで下さるということですね。うれしゅうございます」
ゼフェル 「おっ、いよいよ秒読み段階か?」

 × × ×

 エースとなったジュリアスだが、気負いすぎてスパイクはホームランばかり。点差は広がっていくばかりだ。
ジュリアス 「タイムを要求する!」
パスハ 「ジュリアス様、タイムはキャプテンが…」
オリヴィエ 「(あせって)ジュリアス! タイムはまだ早すぎるんじゃないかなあ…」
ジュリアス 「何故だ? ここで立て直さなければ、このセット取れはせぬぞ」
ゼフェル 「言ってくれるぜ。立て直すのはジュリアス! おめーだろーがっ」
 怒りにふるえ、ジュリアスの金髪が逆立ち始めた――。

「キャプテン・ゼフェルの秘策?」へ  次へ

 

すばる劇場へ