守護聖様達の9人制バレー・親善試合編
最終話「汗と笑いの逆転勝利」
○辺境の惑星・メインアリーナ・特設コート
相も変わらず睨み合っているジュリアスとクラヴィス―よく見ると、二人ともが空中浮遊している! | ||
リュミエール | 「(その間から)仲良きことは美しきかな〜」 | |
と、フェイント攻撃を決めるのだ。 18対13となり、たまらずタイムをとるドラゴン・キラーズ。 |
○同・ドラゴン・キラーズのベンチ
相手チームA | 「ダメです、あのお二人はコワすぎます…噂どおりの光と闇だ…」 | |
相手チームB | 「『職務怠慢』『仕事バカ』などと言い争って、我々のブロックする手を縮こまらせてしまうんです…」 | |
相手チームC | 「何だかんだ言って、実は仲良しこよしに見えなくもないですがね」 | |
相手エース | 「だが三位一体と言っても、実質はリュミエール様のお美しいフェイント攻撃じゃないか。そろそろコースも読めてきたんじゃないか?」 |
○同・特設コート
試合再開。オスカーのバックアタックなどでセットポイントを握るオレンジ・ファイターズ。 | ||
オリヴィエ | 「最後もいくよ、リュミエール!」 | |
リュミエール | 「はい。おまかせ下さい」 | |
オリヴィエからの巧みなトス。空中で睨み合うおなじみの二人。 | ||
ジュリアス | 「この試合が終わるまでには、貴様より大勢のギャルの声援を浴びてみせる」 | |
クラヴィス | 「フッ、それはどうかな」 | |
リュミエール | 「そう言えば私への声援は男の方の声が多いような…」 | |
と、フェイントするが――。 突っ込むレシーバー。ボールはレシーバーの手に当たるがあがりきらず、かろうじてポイントとなる。 セットオールとなり、ますます興奮の度合いを増す観客たち。 |
○同・オレンジ・ファイターズのベンチ
スポーツドリンクを飲みながらも互いに睨みをきかせ合っているジュリアスとクラヴィス。 | ||
ゼフェル | 「この調子で第3セットもイタダキだぜ!」 | |
オリヴィエ | 「今度はそう簡単にはいかないよ」 | |
ルヴァ | 「そうですねー、うー、せっかくの三位一体作戦ですが、もうそろそろ限界でしょうねー、うんうん」 | |
リュミエール |
「私もそう思います。先ほどの最後のポイントは、レシーバーの方のタイミングがほんの少しズレたおかげで取らせていただけましたが、拾われるのは時間の問題でしょう。フェイントとは、その名の通り、はかないものですね」 | |
オリヴィエ | 「まあ冷静沈着な分析力☆」 | |
ゼフェル | 「じゃ、どーすんだよ!?」 | |
ルヴァ | 「ゼフェル、マル秘作戦はあなただけの専売特許じゃありませんよー」 | |
ゼフェル | 「おっ、何かヤンのか、ルヴァ?」 | |
ルヴァ | 「はい。名付けて『本気出したら逃げ足速いんですよー』作戦…」 | |
オスカー | 「長くて言えやしないゼ」 | |
オリヴィエ | 「で、どんな作戦?」 | |
ルヴァ | 「皆さんお気づきかどうか…実はですねー、相手エーススパイカーのスパイクポイントのほとんどは、私がはじいてしまったボールなんですよー」 | |
オリヴィエ | 「それホント? アンジェリーク」 | |
アンジェリーク | 「(データを見て)えーっと、これまでのスパイクポイント15のうち、10ポイントがバックセンターですね!スゴーイ、ルヴァ様」 | |
ゼフェル | 「スゴかねーだろ」 | |
ルヴァ | 「えー、ですから次のセットも当然彼は私を狙ってスパイクしてくるに違いありません。”大穴”ですからねー」 | |
ランディ | 「マルセル、なんだかルヴァ様、自慢げじゃないか?」 | |
マルセル | 「シッ、聞こえるよ、ランディ!」 | |
オリヴィエ | 「ナルホド。その作戦、読めてきたよー」 | |
ルヴァ | 「いいですか、ゼフェル。そこであなたはあらかじめ私の方に寄ってポジショニングします。でー、スパイクを打ってきたら私がこの俊足をとばして一目散に逃げますから、ゼフェルがバックセンターの位置でレシーブするんです。どうです、名案でしょう?」 | |
ゼフェル | 「けっ、どーだかなっ」 | |
オリヴィエ | 「私は結構イケると思うよ。前半戦までならネ」 |
○同・特設コート
注目の第3セット開始。 観客席のあちこちから「◯◯様あ〜」の黄色い声援が飛び交う。 鋭くその方角を聞き分け、声援にマメにこたえるオスカーを、他の守護聖達は半ばあっけにとられて見ている。 |
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ジュリアス | 「その力、何故宇宙のために使えぬのだ…」 | |
得点効率は悪いながらも、『三位一体』や『本気出し〜』作戦を駆使して、何とか互角な勝負をしているオレンジ・ファイターズ。 しかし10点を越えた頃から、相手エースのスパイクやブロックがさえ、点差が開き始める。 |
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相手エース | 「(リュミエールに)あなたの笑顔はもう十分この胸に刻み込みました。最後に笑う私を、どうぞ許して下さい」 | |
と、リュミエールのフェイントをブロックで叩き落とす! | ||
リュミエール | 「ただ一言…悔しい…」 |
○同・客席
歯ぎしりして見ているロザリア、たまらず立ち上がって― | ||
ロザリア | 「ゼフェル様あ〜、ここで負けたら男になれませんわよーっ!!」 |
○同・特設コート
ゼフェル | 「ロザリアの奴…! そうだ!おいパスハ! タイムだ、タイム!」 | |
と、タイムをとってしまう。 不審顔のジュリアス。そして顔を引きつらせているオリヴィエ、ルヴァ、オスカー。そこへ―― |
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アンジェリーク | 「ジュリアス様! 『カフェラテ』と『カフェラッテ』ってどちらが正しいのでしょう?」 | |
ジュリアス | 「???」 | |
アンジェリーク | 「エスプレッソがお好きなジュリアス様ならきっと御存知かと…」 | |
ジュリアス | 「…正確には『カッフェラッテ』と言わねばなるまい。イタリア語で『カッフェ』はコーヒー、『ラッテ』はミルクのことだ」 | |
ルヴァ | 「(裏返った声で)さすがはジュリアスですねー。私も今初めて知りました。『カッフェラッテ』だったんですかー」 | |
オリヴィエ | 「ナイスフォロー、アンジェリーク☆(と、熱いウィンク)」 |
○同・オレンジ・ファイターズのベンチ
ランディ、マルセルだけを呼んで、二人にバンダナを渡すゼフェル。 | ||
ゼフェル |
「いいか、こうなっちまったら頼りになるのはおめーらだけだ。この試合、オレは何としても勝ちてえ。このバンダナは、オレのそーゆー気持だと思って、巻いてくんねえか?」 | |
マルセル | 「ゼフェル…。うれしいよ、ぼくなんかを頼りにしてくれて」 | |
ランディ | 「俺もマルセルと同じ気持だ。最後まであきらめないでやろう、ゼフェル!」 | |
お揃いのバンダナを巻くとスクラムを組む3人。 |
○同・客席
ロザリア | 「ついに出されましたのね! 究極の秘密兵器『リゲインZ』!!」 | |
サラ | 「何なの?」 | |
ロザリア | 「あのバンダナ、私がゼフェル様のために縫ってさし上げましたの、オホホ」 | |
サラ | 「本当!? 腕を上げたのね、ロザリア。もっとも器用さを司る方が恋人なら、当然の結果ね」 | |
ロザリア | 「実はね、サラ様。あのバンダナにはゼフェル様発明のサクリア増幅チップが縫い込んでありますのよ」 | |
サラ | 「まあ、そんなモノまで!?」 |
○同・特設コート
ランディ | 「オリヴィエ様。これからトスは全部俺にもってきて下さい。全部決めてみせますから!(とキレのいいバク転)」 | |
オリヴィエ | 「言ってくれるじゃない。わかった。ここはお子様パワーで勝負だネ☆」 | |
ジャンプがさえるランディ、相手ブロッカーをものともせず次々とスパイクを決めていく。 マルセルも必死にボールをつなぐ。なぜかマルセルから無数に飛び散る汗と、そして何かの種!? 2人の活躍に引張られる形で息を吹き返したオレンジ・ファイターズの面々。 とうとう大逆転してマッチポイントを握る。 サーブの位置につくマルセル。 |
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ゼフェル | 「マルセル! 頼んだぜ!」 | |
マルセル | 「うん!」 | |
強烈サーブが相手をくずした! エースアタッカーがかろうじてボールを返してくる。 |
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ゼフェル | 「オリヴィエ! いくぜ!」 | |
オリヴィエ | 「おいで! ランディ!」 | |
ランディ | 「よーし!」 | |
勇気百倍ランディのクィック攻撃が相手コートに突きささった! 勝利の瞬間に酔う守護聖達、アンジェリーク、ロザリア、サラ。 揃いのバンダナを投げ上げるゼフェル、ランディ、マルセル。 |
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オスカー | 「(ギャル達の大歓声に)フッ、お子様組に人気を横取りされちまったな」 | |
オリヴィエ | 「たまには譲ってやりなよ。男は引き際も肝心だろ?」 | |
グラッとよろけるクラヴィスを支えるリュミエール。 | ||
リュミエール | 「大丈夫ですか、クラヴィス様」 | |
クラヴィス | 「…心地よいダルさ、というものもあるのだな…」 | |
ジュリアス | 「その経験を執務に生かすのだな」 |
◯ジュリアスの執務室(一ヶ月後)
執務中のジュリアスの元へ訪れる秘書。 | ||
秘書 | 「ジュリアス様。先日の親善試合のお礼の手紙が届いております」 | |
と、封筒を渡すと下がっていく。 中から手紙と写真を取出すジュリアス。 |
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ジュリアス | 「『…不思議なことに特設コートには無数の向日葵が群生しており、今や観光地と化しております』か、ほう〜」 | |
と、写真に目を細める。 が、その目が突然三角になった! |
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ジュリアス |
「『…ゼフェルキャプテンをはじめ、皆様にどうぞよろしく…』…ゼフェルキャプテン…ゼフェルキャプテンとは、一体どういうことなのだっ!!」 | |
と、怒りモードで部屋を飛出していく。 床に落ちた一枚の写真――確かにコートに咲き誇る向日葵の花である。 |
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ルヴァの声 |
「根っこというものは土の中深く広がって、地上にはこれっぽちも顔を出さない。けれど根がしっかりしてなければ立派な花は咲かないんですよー」 | |
ゼフェルの声 | 「わかってるよ! んなこたあ」 | |
ロザリアの声 | 「でもゼフェル様、少なくとも私の胸には一輪の花が咲きましてよ」 |
いまひとつ笑えない気もするのだけれど(滝汗)、イヤ映像にすればきっと笑える!と思い込みつつ。(すばる)
現役バレーボーラーすばるならではの作品、お楽しみいただけたでしょうか。
すばるの次回作は「フリスビー刑事・ロザリア編」です。どうぞお楽しみに!(ちゃん太)