守護聖様たちの9人制バレー・親善試合編・1

キャプテン・ゼフェルの秘策?


○公園裏の広場

パスハコーチのもと、レシーブの猛特訓を受けているマルセルとランディ。ほとばしる少年達の汗。
そこへ、ゼフェルが作った『折りたたみ式ブロック板』を両手にはめ、嬉々としてやってくるリュミエール。
リュミエール 「遅くなってしまって申し訳ありません。(ブロック板を広げてにっこり微笑み)どうでしょう、似合っていますでしょうか?」
パスハ 「(小声で)コメントしづらい質問をしてくるよなあ、この人、いつも」
ランディ 「はい、とてもお似合いですよ、リュミエール様!」
横でずっこけているパスハとマルセル。
マルセル 「れ、練習しましょう、コーチ」
パスハ 「(急に顔をこわばらせ)調査によりますと、数日後に迫った親善試合の相手チーム『ドラゴン・キラーズ』の平均身長が208センチだとわかりました。特にエースアタッカーは215センチの大巨漢です」
ランディ 「でっけえ〜」
リュミエール 「では仮に私がこのブロック板をしていたとしても、その方のスパイクを止めてさし上げることはできませんね・・」
と、ため息を吐く。
マルセル
「(明るく)どんまい、どんまい!
身体のパワーには限界があるけど、心のパワーは無限なんです。ぼく達オレンジ・ファイターズは、心のパワーで勝負ですよ」
ランディ 「マルセル、お前…」
リュミエールも目頭をぬぐっている。
パスハ 「頼もしいお言葉です。では皆様、今から相手の強力ブロックに対抗するための練習を始めましょう」
マルセル 「ブロックフォロー、ですね」
パスハ 「はい。センターアタッカーのランディ様は特にブロックの危険にさらされる確率が高い。どのようにして突破するか?」
ランディ 「俺の勇気のパワーでブロックをはじきとばしてみせますよ!」
パスハ 「いいトスならそれも可能でしょう、ただ常に100%のトスだとは限りません。幻の名セッターオリヴィス様、いえオリヴィエ様と言えどもね」
ランディ 「確かに…ネットに近いトスがきたら、俺、どうしたらいいのか…」
パスハ 「そんな時は逆に相手ブロックを利用して打つのです。それにはマルセル様の確実なフォローが必要不可欠になってきます」
マルセル 「うん。ぼくに任せて、ランディ」
ランディ 「ああ。マルセルを信じてやってみるよ、俺」
リュミエール 「今日のあなた達は、優しさの輝きで満ちあふれているようですね」

○ルヴァの執務室

机の上に身を乗り出して、ルヴァに図を示しながら熱弁をふるうゼフェル。ルヴァは少々圧倒され気味だ。
ゼフェル 「なっ、いい作戦だと思わねーか?
 オレ、めんどくせーけどよ、キャプテンを引受けた以上は、おもしれーバレーをやってみてえんだ」
ルヴァ 「…うれしいですよ。ゼフェルがキャプテンとしての自覚をもってやってくれていることは。ただ…ね、ゼフェル?」
ゼフェル 「なんだよ。何が言いてーんだよ」
ルヴァ 「うー、ゼフェルには口がいくつありますかねー?」
ゼフェル 「あーん? けっ、またバカにしてんのか、オレのこと」
ルヴァ 「そうじゃなくて。あなたのためを思って聞いてるんですよー。いくつですか?」
ゼフェル 「そんなの1つに決まってるだろっ」
ルヴァ 「ですよねー。あー、じゃあ耳はいくつありますかねー?」
ゼフェル 「耳は2つだろっ。3つや4つもあったら気持わりぃだろーが!」
ルヴァ
「そうですね。口は一つ、耳は二つ。
 ゼフェル、キャプテンとして人の心をつかむには、一つ言って、二つ聞くことです」
ゼフェル 「だーっ、やっぱしめんどくせー!」

○クラヴィスの執務室

 水晶球を眺めているクラヴィス。
クラヴィス 「フッ、ゼフェルがな…」

○公園裏の広場(夕)

パスハのトスをランディがリュミエールのブロック板に向ってスパイク、それをフォローするマルセル。
まるで1台のマシンのように一心に反復練習をしている4人。
そこへスッと現れる人影――ロザリアだ。
ロザリア 「まあリュミエール様まで汗を流されて。ユニフォームの次はお揃いのバンダナでも縫ってさし上げなくてはいけませんわね」
と、ロザリアの方にボールがバウンドしてきてキャッチする。
マルセル 「やあロザリア、球拾いしに来てくれたの?」
ロザリア 「オホホホ。この私がそのようなことするわけがないでしょう。アンジェじゃあるまいし」
ランディ 「だろうね。じゃ何しに来たんだい」
真っすぐリュミエールへと向っていくロザリア。
ロザリア 「リュミエール様に大切なお話があって参りましたの。私と一緒に来て下さいませんかしら」
リュミエール 「この練習が済んでからではいけませんか、ロザリア」
ロザリア 「ええ、今すぐにお願い致しますわ」
リュミエール 「でも…」
オスカー 「行ってやれよ、リュミエール。お嬢ちゃんのわがままをきいてやるのが、男の器量ってもんだぜ」
ランディ&マルセル 「オスカー様!」
 と、オスカーに駆け寄っていく。
ランディ 「足、もういいんですか!?」
オスカー 「ああ。見ての通りだ」
と、剣を抜いて軽くポーズを決める。
マルセル 「よかったあ。試合に間に合わないんじゃないかって心配してたんですよー」
 と、少し涙目になっている。
オスカー 「何を言ってる。俺がいなきゃ、試合は始まらないぜ。審判がいいと言っても、観客が許さないからな(とウィンク)」
リュミエール 「お戻りをお待ちしてましたよ」
オスカー 「ありがとう。それよりリュミエール、ブロッカー役は俺が引受けてやるから、ロザリアの大切な話ってーのを聞いてやるんだな」
 と、ブロック板を強引に奪い取る。
パスハ 「お願いできますか?」
オスカー 「ああ。試合はもうすぐだ。肩ならししておかないとな。さあ来い、ランディ」
と、ネット際でかまえるのだ。そのオスカーにリュミエールが近付き、
リュミエール 「ではよろしくお願いしますね。但しコレはお預りしておきましょう」
と、オスカーの剣を外すのだ。
オスカー 「…油断ならん奴だな…」

○ゼフェルの執務室(夕)

オリヴィエとアンジェリークが並んで椅子にすわっている。
アンジェリーク 「オリヴィエ様? ゼフェル様がキャプテンになったことを、ジュリアス様には」
オリヴィエ 「言えるワケないだろう。まあ、あんたが言ってくれるなら別だけどネ」
アンジェリーク 「私があ!!」
と、首をブルンブルン振っている。そこへあせって戻って来るゼフェル。
ゼフェル 「すまねえ。ロザリアに育成頼まれてたのを忘れちまっててよー。あん? リュミエールはまだ来てねーみたいだなあ」
オリヴィエ 「ゼフェル、ここんとこメイクする時間もないくらい忙しいんだよねー、だから話は手短かにネ」
ゼフェル 「アンジェリークとデートしてる時間はあんじゃねーかよっ」
アンジェリーク 「(妙に赤面して)ゼフェル様、見てらしたんですか??」
ゼフェル 「見てねーよ。オレのあてずっぽ」
× × ×
ロザリアの導きで入って来るリュミエール。
リュミエール 「オリヴィエ…アンジェリークも。一体どういうことなのですか?」
ロザリア 「大切なお話というのは、もちろん親善試合のことですわ。オホホホ」
オリヴィエ 「(やる気なさそうに)何だかゼフェルキャプテンに秘策があるらしいよー。
しかもそのキーマンが、リュミエール、あんたなんだってさ」
リュミエール 「キーマン? シーマンじゃなくて、ですか?」
オリヴィエ 「(ますますやる気なさそうに)何とか言ってやってよ、アンジェリーク」
アンジェリーク 「オリヴィエ様、正直コメントしづらいです…」
ゼフェル&ロザリア 「確かに」
と、同時に両腕を組む。

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今回は番外編からの流れでゼフェロザ風味&リュミ様大活躍(?)編ですかねー。ところでゼフェロザってやっぱ世間的にはマイナーなのでしょうか。(すばる)

一部で待たれていましたバレーの続編です。…しかし、このリュミ様、最高。ありがとうね、すばる。(ちゃん太)