アンジェポンタン企画
守護聖様たちの9人制バレー
6.名セッター登場
○オリヴィエの執務室(朝)
大鏡の前でネールアートを見つめているオリヴィエ。 | ||
オリヴィエ | 「まさか今になって『オリヴィス』の名を聞くとはね…」 |
◯王立研究院(回想)
パスハ |
「幻の名セッター・オリヴィス。『ミクロの指』とも呼ばれたあなたのトス・テクニックをもってすれば、オスカー様のスパイク力を、十二分に引出せるはずです。 そうではありませんか、オリヴィエ様」 |
|
オリヴィエ | 「さすがはパスハ。最初から何もかもお見通しってわけだ」 | |
パスハ |
「余計なことかもしれませんが、オリヴィエ様。人は過去があってこそ今があり、そして未来もあるような気がします。 私もごく最近になって気付かされたのですが」 |
◯元のオリヴィエの執務室(朝)
大鏡の中に映し出されるバレーボーラー・オリヴィスの姿。 ハッと我に返るオリヴィエ。 |
||
オリヴィエ | 「しっかりしろ、オリヴィエ。お前は人々に美しさを贈る夢の守護聖だろう」 | |
そこへ―― | ||
アンジェリーク | 「オリヴィエ様! 私、練習試合の相手、見つけてきました!」 | |
オリヴィエ | 「練習試合ねえ。マネージャーらしいこと、やってくれるじゃないの」 |
◯エリューシオン
2本の木の間にロープを張っただけの粗末なコート。そこでたった1つのボールをがむしゃらに追いかけて練習をしているエリューシオンの民たち。 | ||
アンジェリーク | 「ね、オリヴィエ様。格好は正直ほめられたものではないですけど、みんな一途にプレーしているでしょう?」 | |
オリヴィエ | 「(しばらく見入っているが)戻ろうか、アンジェリーク」 | |
アンジェリーク | 「え、もう?…どうしたのかしら、オリヴィエ様、怒ってるみたい」 |
◯公園裏の広場
ゼフェル | 「なんだ、なんだ。これだけか?」 | |
練習しているのはマルセルとランデだけで、ルヴァは読書中である。 | ||
マルセル | 「さっきアンジェリークが来て、今日はオリヴィエ様がお休みだって言ったら、ぼくら以外みんな帰っちゃったんだよ」 | |
ランディ | 「ゼフェル、せっかく来たんだ。俺達と一緒に少しやっていかないか」 | |
ゼフェル | 「そうだなあ(と、ルヴァをチラッと見て)しょーがねえな。付合ってやるか」 | |
マルセル | 「よかった! じゃあ交代でサーブカットの練習をしようよ」 | |
3人の様子を見て、にっこりとうなずくルヴァ。 | ||
ルヴァ | 「うんうん。その調子です、ゼフェル」 |
○アンジェリークの部屋
ほおづえをつくアンジェリーク。 | ||
アンジェリーク | 「今日のオリヴィエ様、絶対変だった。何があったのかしら…」 | |
と、ドアチャイムが鳴る。 | ||
オリヴィエ | 「はあい、アンジェリーク。今夜はぜひ見てもらいたいものがあってねー」 | |
不安顔のアンジェリーク。 | ||
オリヴィエ | 「(真剣なまなざしで)少しの間、目を閉じていてくれないか」 | |
アンジェリーク | 「は、はい。…ラブラブフラッシュの効果がやっと出てきたのかしら。 ああどうしよう、あまりにも突然すぎて」 |
|
オリヴィエ | 「(明るく)もういいよー」 | |
アンジェリーク | 「はあ?」 | |
と、目を開けると、目の前にオリヴィエの十本の指のネールアートがまさに展示されている。指先には花や鳥、風車などのオブジェが可愛らしく付けられているのだ。 | ||
オリヴィエ | 「どう、驚いてくれた。究極のネールアートの数々」 | |
と、風車を回してみたりなんぞする。 | ||
アンジェリーク | 「すっごーい…」 | |
オリヴィエ | 「アンジェリークもやってみる?」 | |
と、次々と爪をはずしていく。そしてその下からは、すっかり紫色に変色した、ボロボロの生の爪が現れてくる。 | ||
アンジェリーク | 「オリヴィエ様の爪って、付け爪だったんですか…」 | |
オリヴィエ |
「久しぶりに見たけど、ホントきったないよねー。誰にも内緒だよ。遠い昔、バレーをかじっててね。それこそ今日見たエリューシオンの民のように、がむしゃらにネ。その結果が、この爪ってわけ」 | |
思わずグッとオリヴィエの両手をつかむアンジェリーク。 オリヴィエの生爪の上にアンジェリークの涙がとめどなく流れ落ちる。 |
||
オリヴィエ | 「アンジェリーク…」 | |
アンジェリーク |
「なぜだかわからないけど、私にはあちらのネールアートよりも、この痛々しい紫色の爪たちの方が美しく思えるんです。美しくて、そしてせつなくて…」 | |
オリヴィエ | 「ありがとう、アンジェリーク。これで私も決心がついたよ」 |
○公園裏の広場(翌日)
コートに立つオリヴィエ。だが、髪を後ろで一つにしばり、指は白いテープでグルグル巻きにしてある。 | ||
オスカー | 「見違えたぞ、オリヴィエ」 | |
オリヴィエ |
「ふふっ、ワケあって路線変更ってとこかな。 さあ、練習試合に向けて、今日からは容赦しないよー」 |
|
マルセル | 「わあ、練習試合やるんですか!」 | |
オリヴィエ | 「そう。ついてはパスハから、ポジションの発表を行う」 | |
緊張する守護聖たち。 | ||
パスハ | 「まず、レフトアタッカー…」 |
アンジェの部屋でのシーンは、この作品のハイライトシーンのひとつね……オリヴィエ様素敵(はぁと)
次回のポジション発表が待ち遠しいっ!!