アンジェポンタン企画

守護聖様たちの9人制バレー


7.ゼフェルの秘密兵器

○公園裏の広場

パスハ
「ではポジションを発表します。
まずレフトアタッカー即ちエースポジションは、オスカー様」
オスカー 「おーし!」
 と、ハデなガッツポーズ。追っかけギャル達も大喜びである。
パスハ 「…次、センターアタッカー、ランディ様、セッターがオリヴィエ様、ライトアタッカー、リュミエール様、以上が前衛です」
リュミエール 「ということは、わたくしの目の前には相手方のエースアタッカーがおられるのですね」
パスハ 「はい。リュミエール様には、ブロックでもがんばっていただきます」
リュミエール 「そうなのですか…」
 と、とまどいをかくせない。
パスハ 「では次に中衛ですが、ハーフセンターにマルセル様」
マルセル 「はい。よろしくお願いします」
パスハ
「ハーフライト、ジュリアス様。ジュリアス様には、状況によってブロックにも跳んでいただくことになると思います」
ジュリアス 「承知した」
パスハ 「最後に後衛ですが、バックレフトにゼフェル様。バックセンターにルヴァ様。そしてバックライトにクラヴィス様」
クラヴィス 「つまり私は、コートの右後ろ隅に、立っておればよいのだな」
パスハ 「それはまあ、ボールがこなければ、それでもかまわないのですが」
クラヴィス 「ボールが来ぬよう何とかしよう」
ジュリアス 「クラヴィス! 貴様と言う奴はどこまで和を乱せば気が済むのだ!」
オリヴィエ 「まあまあ。クラヴィスも一応出てくれるって言ってるんだからさあ」
アンジェリーク 「練習試合は3日後、このコートで行います。相手チームは、私が育成しておりますエリューシオンの民たちですので、皆様どうかお手やわらかに」
オリヴィエ 「ちょっと待った! アンジェリーク。いくら練習試合だからといって、手加減するわけにはいかないよ。相手に対しても失礼だろう」
アンジェリーク 「ごめんなさい」
パスハ 「オリヴィエ様、すっかりオリヴィスの顔だな…」
 各ポジションに散って本格的に練習を始める守護聖たち。
アンジェリーク 「さあ、忙しくなってきたわ」

 ◯ロザリアの部屋

 クローゼットにもぐり込んで物色しているアンジェリーク。
ロザリア 「一体何なの! いきなりやってきて、部屋の中かき回して」
アンジェリーク 「あったわ! しかも3台も」
 と、引張り出してきたのはミシンだ。
 そこへ、サラが大量の生地を抱えてやってくる。
サラ 「持ってきたわよ、アンジェリーク」
アンジェリーク 「サラさん! サラさんのおっしゃった通り、やっぱりありましたわ」
サラ 「でしょ。あら、しかもこんな最新式。ロザリア、ダメじゃないの。恋の魔法の機械をしまい込んでちゃ」
ロザリア 「恋の魔法の機械?」

 ◯ゼフェルの執務室

ゼフェル 「さあ、忙しくなってきたぜ」
 と、こちらも電気工具を使って何やら製作中である。 
ゼフェル 「これって画期的な発明だよな。特許でも申請してみっか」

 ◯公園裏の広場(3日後)

 ウォーミングアップ中の守護聖たち。
アンジェリーク 「相手チームの方々到着されました。皆さんお揃いですか?」
マルセル 「それが、ゼフェルだけまだなんだ」
ジュリアス 「来ぬ者など放っておけ。時間のムダだ。試合を始めるぞ」
ルヴァ 「待って下さい、、ジュリアス」
 と、その時――
ゼフェルの声 「おーい」
 と、金属音をジャカジャカ響かせながら走ってくる。
ゼフェル 「悪いな、遅れちまって。けど、この秘密兵器を完成させるのに手間取ってたんだから、大目に見てくれよな」
 と、ブレスレットのような物を取出し、リュミエールらブロッカー陣の両手に次々とはめていく。
ランディ 「何だよ、コレ」
ゼフェル
「ヘッヘー。一見ただの輪っかに見えっだろ。ところがだ、このスイッチを押せばあーらフシギ」
 突然ブレスレットの一部が変形して扇のように広がっていく!
ゼフェル
「オレさ、ルヴァが『9人制バレーで一番大事なのはブロックだ』って言ってたから、コイツを考え出したんだ。この『折りたたみ式ブロック板』を使えば、どんなスパイクもシャットアウトだ!」
オリヴィエ 「ゼフェル…お前って奴は…」
ルヴァ
「あー残念ながらコレは使えないのですよ、ゼフェル。ルールブックの第2章第5条第4項に『競技者は、プレー上有利になるようなものを身につけてはならない』と、ちゃんと書かれているのです」
にわかに青ざめるゼフェル。
ゼフェル 「じゃあ、コイツらは…」
ジュリアス 「ただのゴミということだ」
アンジェリーク 「そんな! いくら何でもそんな言い方、ひどすぎます!」
思わぬ反撃にたじろぐジュリアス。
ゼフェル 「(涙声で)なんだよ、だからオレ、イヤだったんだよ。クソーッ」
ルヴァ 「お待ちなさい、ゼフェル」
 と、駆け出したゼフェルを追う。

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クラヴィス様がコートの中に結界を張っている姿が目に浮かぶ……え?違う?
,なお、ロザリアの3台のミシンとは、ソーイングファンの理想の、職業用直線ミシンと2本針4本糸ロックミシンと刺繍専用ミシンである……というのはちゃん太の思いこみです。

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