アンジェポンタン企画

守護聖様たちの9人制バレー


5.エースポジション争いの行方

○オリヴィエの執務室

ところどころはげ落ちているネールアートを丹念に修復しているオリヴィエ。
パスハ登場。
パスハ 「オリヴィエ様、このところ練習に出られず申し訳ありません」
オリヴィエ
「気にしない、気にしない。お互い忙しい身なんだから、やれる時だけガーンとやっちゃえばいいんだってば」
パスハ 「ところでようやく守護聖様全員がお揃いになられたとか」
オリヴィエ 「うんまあ、とりあえずはね。ヤル気のある・なしは別として」
 × × ×

ベンチで「集団心理学」の本を読んでいるルヴァ。
ルヴァの横でふてくされながら、ボールで器用にお手玉しているゼフェル。
ロザリアに無理やり引張り出されているクラヴィス。

 × × ×
パスハ 「先ほど母星より連絡がありまして、大会の準備は着々と整っているようです」
オリヴィエ 「…パスハ、一つ聞いていい?」
パスハ 「何なりと」
オリヴィエ
「パスハは確か、故郷の星を捨てて、この星にたどり着いたんじゃなかったっけ? それなのに…」  
パスハ 「どうして今さら故郷のために力を貸しているのか? というんですね」
オリヴィエ 「イヤなら答なくていいんだよ」
パスハ

「…サラとの愛を貫くために、故郷を飛出し、様々な星を放浪しました。その間故郷のことを思い出すことはなかった、イヤ、そんな余裕がなかったと言った方が、正解でしょう」
オリヴィエ 「苦労したんだね」
パスハ
「自分の想いを通したのですから、苦労だとは思いませんでしたがね。ただ、2年ほど前からだったでしょうか、故郷の夢をみるようになったんです」
オリヴィエ 「夢…」
パスハ
「しかも、故郷の風景や友人の顔が、鮮明に映し出されるのです。とうの昔に捨て去ったはずなのに…」
オリヴィエ 「捨て去ろうと思っても捨て切れない――それが故郷っていうことなのかね」

 ◯公園裏の広場

 スパイク練習をしている面々。
 相変わらず前飛びで、時にネットにからまったりしているオスカー。
オスカー 「クソッ、どうもレディの涙と網目ちゃんだけは苦手だゼ」
ジュリアス 「オスカー、醜いぞ」
 と、自分は華麗なストレートスパイク。
ギャルたち 「キャー! ステキー!!」
 ジュリアスの追っかけも日増しに増えているようだ。
ジュリアス 「(ギャルには目もくれず)アンジェリークの姿が見えぬようだが」
ランディ 「土の曜日ですから、エリューシオンに降りているのでしょう」
ジュリアス 「そうであったな。私としたことが。うかつであった」

 ◯エリューシオン

アンジェリーク 「本当? ここにもバレーチームがあるの?」
大神官 「そうなんです、天使様。ぜひ見ていって下さいです!」 

 ◯公園裏の広場(夜)

 荒い息使いが闇の中から聞こえてくる。
 わずかな月の光にフッと浮かび上がるオスカーのジャンプ姿。
オスカー
「(ネットをつかんで)この俺が、ジャンプごときにこれほど手こずるとはな。
 しかし、エースポジションは、誰にもゆずるわけにはいかないぜ」
 と、孤独に飛び続けるのだ。

○王立研究院(夜)

オリヴィエに電子パネルを駆使して、ポジションの説明をしているパスハ。
パスハ

「…極秘に収集した資料によると、ルヴァ様は砂漠の星の出身ということでかなりの走力をお持ちのようです。従って、はじいた球を追う率が高いバックセンターが良いのではないかと思われます」
オリヴィエ 「なるほどねー。で、肝心要のエースアタッカーは?」
パスハ 「そこは私も悩んでいる所です。オリヴィエ様のお考えは?」
オリヴィエ

「そうだねえー。確実性でいけばランディかな。彼なら大抵のトスは打ちこなせるだろう。ただ、彼のようなタイプはむしろセンターアタッカーに向いていると言えるだろうね」
パスハ 「私もそう思います。センターを任せられるのは、ランディしかいないでしょう
オリヴィエ 「となると、エースポジションはジュリアスあたりか」
パスハ 「私は、オスカー様に賭けてみてはどうかと思うのですが」
オリヴィエ 「オスカーだって!? ダメダメ。あいつ、まだ前に飛んでるヨー」
パスハ 「オリヴィエ様、もうそろそろいいのではないですか?」
オリヴィエ 「えっ、何のこと?」
パスハ
「オリヴィエ様ならおわかりのはずです。アタッカーを生かすも殺すもセッター次第だということを」
オリヴィエ 「セッターねえ…」
パスハ

「私の星でも知らない者はいませんよ。
 ボールを自在に操る手腕をもちながら、ある日姿を消した幻の名セッター…その名はオリヴィス。…オリヴィエ様、あなたのことですよね」
オリヴィエ 「パスハ!…知っていたのか」

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このお話で、これまで「ただこわいだけ」だったパスハの株がうーんと上がった私は、ただの単純な奴です。

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