アンジェポンタン企画
守護聖様たちの9人制バレー
11.キスは勝利のあとで
○公園裏の広場
クラヴィスのユニフォーム姿に観衆の視線はまさに釘づけ状態である。 | ||
ギャルA | 「やっぱり足、あったじゃないの」 | |
ギャルB | 「ホント。それも細くって、長くって、モデルみたーい」 | |
ギャルC | 「私、断然、ジュリアス様からクラヴィス様に乗りかえちゃうワ!」 | |
露骨にムッとしているジュリアス。 | ||
ジュリアス | 「アンジェリーク、折り入って頼みがあるのだが」 | |
アンジェリーク | 「何でもお申し付け下さい」 | |
ジュリアス | 「ここから先、私とクラヴィスのポイント数を数えておいてもらいたい」 | |
アンジェリーク | 「えっ?」 | |
ジュリアス | 「必ず勝ってみせる。お前のためにもな。…オリヴィエ、クラヴィスとは違って、私はどのようなトスでもかまわぬ」 | |
再び火花を散らし合うジュリアスとクラヴィス。 | ||
ロザリア | 「望むところよ。あそこまでムキ出したクラヴィス様に、もうコワイものなんて、あるものですか」 | |
オリヴィエ | 「やれやれ、妙な具合になってきたねえ」 | |
試合再開。注目のトスはまずクラヴィスに上がった。ナント既に空中に浮遊しているクラヴィス。 | ||
ジュリアス | 「いつの間に…」 | |
クラヴィス | 「我が司る闇の力をもってすれば、跳ぶなどというガサツな行為は必要ない」 | |
と、浮いたままスパイクを放つ。 あまりのことに相手チームは一歩も動けず、あっさり決まってしまう。 |
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ジュリアス | 「不埒者め! 私はあくまでも正々堂々と戦うゾ!」 | |
リュミエール | 「(悲しげに)ああ、人は何故争いを止められないのでしょう…」 | |
ルヴァ | 「あー、人は争うことで癒されるように、創られてしまったのかもしれません」 | |
ライバル心ムキ出しの二人の活躍で、十点差も何のその、一気に逆転した守護聖チームが2セット連取で、練習試合は終了する。 いつまでも鳴りやまない拍手。 守護聖たちの晴れやかな笑顔。 |
挿し絵byくりず様
◯アンジェリークの部屋(夜)
髪のリボンをほどくアンジェリーク。 ドアチャイムが鳴る。 |
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オリヴィエ | 「はあい、アンジェリーク。今日は朝からお疲れさまー」 | |
アンジェリーク | 「オリヴィエ様こそ。それでオスカー様のおケガの具合は?」 | |
オリヴィエ | 「どうやら骨には異常はないようだよ。親善試合までには間に合うさ」 | |
アンジェリーク | 「よかった。アッ、今お茶をお入れしますから、どうぞ」 | |
オリヴィエ | 「じゃあ、ちょっとだけね」 | |
と、テーブルの上のリボンにチラと目をやる。 × × × 向い合って、お茶を飲む二人。 |
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オリヴィエ | 「ねえアンジェリーク、一つ聞いてもいい?」 | |
アンジェリーク | 「はい…」 | |
オリヴィエ | 「例の二人、ジュリアスとクラヴィスの、ポイント数のことだけど、アンジェリークが言った通りホントに同点だったワケ?」 | |
アンジェリーク | 「…いえ実は、クラヴィス様の方が1点多かったんですけど、とても言えなくて」 | |
オリヴィエ | 「やっぱりね。でもアンジェリークのそういうとこ、私はスキだな」 | |
『スキ』という言葉に反応して、カップをガチャンと置いてしまうアンジェリーク。 | ||
アンジェリーク | 「アッ、爪が…」 | |
と、オリヴィエの普段通りのネールアートに気付く。 | ||
オリヴィエ |
「やっぱり夢の守護聖としては、こうでなくっちゃね。でもさ、今日でよくわかった。私の身体の中を流れている、バレーボーラーオリヴィスの血は、消え去ってはいなかった」 | |
アンジェリーク | 「私、オリヴィエ様のプレーに、感激しました、何度も何度も」 | |
オリヴィエ | 「『ミクロの指』にはまだ程遠いけどね。まあ本番までには何とかするさ」 | |
と、立上がる。 | ||
アンジェリーク | 「もうお帰りですか?」 | |
オリヴィエ | 「ああ。何だか眠くなってきたんでね。そうだ、忘れるとこだった」 | |
と、ポケットから包みを取り出す。 | ||
オリヴィエ | 「遅くなっちゃったけど差し入れだよー(と、ウインク)」 | |
アンジェリーク | 「ありがとうございます」 | |
オリヴィエ | 「じゃあねー」 | |
と、ドアの方へ歩き出すが立ち止まる。 | ||
オリヴィエ |
「そうそう、もう一つ大事なこと。 守護聖チームの名前、考えたんだけど、『オレンジ・ファイターズ』がいいかなって」 |
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アンジェリーク | 「『オレンジ・ファイターズ』ですか。カッコいいですね」 | |
オリヴィエ | 「でしょ? じゃ、おやすみ、アンジェリーク」 | |
と、スッとアンジェリークに近付くと、おでこに軽くキスして去っていく。 放心状態のアンジェリーク。 × × × 鏡の前で髪をとかすアンジェリーク。 みかん色のリボンを手に取ってみる。 |
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アンジェリーク | 「さっきのキスはこれのおかげかな。そうだ、オリヴィエ様からの差し入れがあったんだワ」 | |
包みを開くと、中から十本の付け爪が出てくる。その左薬指用の爪には、みかん色のリボンの絵が描かれている! 『大切なマネージャー・アンジェリークへ感謝を込めて。 本物のキスは勝利のあとでネ!』と書かれたメモ。 |
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アンジェリーク | 「…気付いていて下さったんですね、オリヴィエ様」 | |
メモのハートマークが涙でにじんでゆく――。 |
(おわり)
長らくおつきあいいただいたこの作品も、やっと大団円をむかえました。
みなさま、お楽しみいただけましたでしょうか。
「やっぱりアンジェだし、甘くしなければ」というすばるのこだわりが見えるラストだと私は思ったのですが(^^)
皆様の感想をお待ちしております。
そうそう、番外編もあるんです。[next]でお進みくださいね。