アンジェポンタン企画
守護聖様たちの9人制バレー
番外編.ルヴァの苦悩
○エリューシオン・釣り場(早朝)
自慢のつり用具を完璧に配置し終え、どっかりと腰を下ろすルヴァ。 | ||
ルヴァ | 「あー、さすが穴場と呼ばれるだけあって、よい所ですね、アンジェリーク」 | |
アンジェリーク | 「ルヴァ様のお言いつけ通り、何人たりともここには近付かぬよう、民達には申しておきましたので。でも本当に、お食事、お持ちしなくてよろしいのですか」 | |
ルヴァ | 「えー、その、食事をとると血液が胃に集中して、考え事ができなくなるのですよ。ですから、気にしないで下さい」 | |
アンジェリーク | 「そうですか。ではよろしくお願いします。 オリヴィエ様も、一日も早く、ルヴァ様の御意見をお待ちしておられますので」 |
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と、みかん色のリボンをなびかせながら去っていく。 | ||
ルヴァ | 「あー、アンジェリークもようやく『オリヴィエ様』と言っても顔が赤くならなくなりましたねー。仲良きことは美しきことかな、うんうん」 | |
と、釣り糸をたれる。 | ||
ルヴァ | 「…しかし、最近のオリヴィエは、厄介な問題は、いつもアンジェリークを通して持ち込むのだから、困りものですね」 |
○ルヴァの執務室(回想)
アンジェリーク | 「今日は、オリヴィエ様のお使いで、ルヴァ様に御相談があってまいりました」 | |
ルヴァ | 「あー、どのような?」 | |
アンジェリーク | 「親善試合まであとわずかですが、つきましてはオリヴィエ様が、リーダーシップ論にもお詳しいルヴァ様に、ぜひキャプテンを決めていただきたいと」 | |
ルヴァ | 「うー、キャプテン、ですかー」 |
○元の釣り場
ウキを見つめているルヴァ。 心地よい風がターバンを揺らす。 |
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ルヴァ | 「あー、そう、何かの本で『リーダーの行動スタイルには、目標達成機能と集団維持機能の二つがある』と書いてありましたねー。 うー、まずは、目標達成機能の方で考えてみましょうか。目標はやはり『良い試合』をすることでしょうね。そのためにはやはりバレーを良く知っているオリヴィエがキャプテンに適任かもしれません。 でもたぶん彼は――」 |
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オリヴィエ | 「私がキャプテン? ダメダメ。そんなの楽しめなくなっちゃうじゃない」 | |
ルヴァ | 「…というでしょうね。うー、オリヴィエの次に技術的に長けているのはランディですね。でもたぶん彼は――」 | |
ランディ | 「俺は勝負ごとになるとつい熱くなってしまって…。キャプテンとして、冷静な判断ができないような気がします」 | |
ルヴァ | 「…というでしょうね。あー、そうそう、最近のマルセルはかなりの上達ぶりで、今やレシーブの要。守護聖としての修業の意味も含めて、彼にやってもらうのも悪くはないのでは? でもたぶん彼は――」 | |
マルセル | 「僕がキャプテン!? とんでもないですよ! 第一、一番年下の僕がどうやってチームをまとめるんですか!?」 | |
ルヴァ | 「…と言うでしょうね。うーん、それじゃあもう一つの、集団維持機能の方で考え直してみましょうか。守護聖の中で、人間関係に配慮するような行動が最もとれる人物といえば、まずリュミエールでしょうかねえ。でもたぶん彼は――」 | |
リュミエール | 「申し訳ありませんが、私は一つのことしかできそうにありません。今はブロックというものを極めたいと思います」 | |
ルヴァ | 「…と言うでしょうね。あー、見かけと違って意外と気配りができるオスカーはどうでしょう。でもたぶん彼は――」 | |
オスカー | 「冗談はよしてくれよ、ルヴァ。レディとの付合いなら、いくらでもリーダーシップは惜しまないがね。それにケガをしたキャプテンなんて、カッコ悪すぎるゼ」 | |
ルヴァ | 「…と言うでしょうね。ああ、一体誰をキャプテンにしたらよいのか……」 | |
と、糸が引いている。 釣り上げてみると、なんとゼフェルの作ったブロック板のかけらである。 |
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ルヴァ | 「どうしてこんな所に? ! もしかしたらこれはゼフェルをキャプテンにというお告げ? 本当は心の優しい子ですからねー彼は。良い機会かもしれません。 でもそんなことになったら、あの二人は――」 |
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ジュリアス | 「ゼフェルをキャプテンにするだと!? 私には到底理解できそうにもないな。試合のことは、なかったことにしてもらおう」 | |
クラヴィス | 「…帰らせてもらう」 | |
ルヴァ | 「…と言うでしょうね。かといって、あの二人のどちらかをキャプテンに選べば、事はこの程度ではすまないだろうし…」 | |
いつの間にかどっぷりと日が暮れている。 魚も1匹も釣れないまま、ため息をついているルヴァ。 |
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ルヴァ | 「うーん、やはり消去法でいくと、私がキャプテンなんでしょうか…。 でも、キャプテンとして私はあまりに無知ではありませんかね…」 |
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ルヴァの苦悩は、夕闇の色とともにさらに深みを増していくのであった…。 |
作者ご挨拶
「最後までこのすっとこ話におつき合い下さった皆様、ありがとうございます。 家庭婦人バレー歴10周年記念とでも言いましょうか、好き放題書かせてもらって、ちゃん太にも感謝しています。 ちなみに、私のポジションがバックセンターと言えば、もう愛しの君はおわかりですね?」 |
……というわけで、すばるの溢れる愛がこんな番外編に結晶しているのでした。
大長編+番外編、ありがとうね。
そしてそして。ちゃん太がねだってゲットしたもう一つの番外編があります。nextでお進みくださいね。