ルヴァ様コスプレ劇場

CAST10  ヤン(銀河英雄伝説)
      「魔術師」


<お話の背景>
  銀河帝国領と自由惑星同盟領の境界にある人工惑星イゼルローン。
  その巨大な宇宙要塞の司令官として、智将ヤンが赴任してきた。

<登場人物&キャスト>

ヤン・ルヴァ 自由惑星同盟 イゼルローン要塞司令官
ユリアン・ミンツ  同       ヤンの養子
アレックス・キャゼルヌ  同      イゼルローン要塞事務監
ラインハルト・フォン・ローエングラム 銀河帝国   帝国軍元帥
ジークフリード・キルヒアイス  同      ラインハルトの腹心


○イゼルローン要塞・ヤンの部屋

緑の髪をかき回して「電車でGO」に興じているヤン・ルヴァ要塞司令官。
ヤン・ルヴァ 「ようやくコツが飲み込めてきましたねー、うんうん」
そこへやってくるユリアン・ミンツ。
ユリアン 「帝国軍の戦艦が使者としてやって来ました」
ヤン・ルヴァ 「そうですか。うーん、あと少しで秋葉原だったんですが、仕方がないですねー」
と、立上がり部屋を出ようとする。
ユリアン 「銃をお忘れです、閣下」
ヤン・ルヴァ 「いらないんですよー、ソレ」
ユリアン 「でも…」
ヤン・ルヴァ 「命中したことないですからね」

○同・会議室

キャゼルヌ少将をはじめ幹部たちが集まっている。
ヤン・ルヴァ 「えーと、帝国軍はですねー、帝国と同盟とがお互いにかかえている二百万以上の捕虜を交換したいんだそうですー」
キャゼルヌ 「食わせるのが大変だからな」
ヤン・ルヴァ 「つまりー、捕虜を食べさせるどころではない、という事態を予想しないといけないんですかねー」
キャゼルヌ 「というと?」
ヤン・ルヴァ 「うーん、ローエングラム侯ラインハルトが、いよいよ門閥貴族たちとの武力抗争に乗り出すんじゃないんですかねー。また忙しくなりそうですねー」

○捕虜交換式会場

テーブルでサインをするヤンと帝国軍キルヒアイス上級大将。
キルヒアイス 「形式というのは必要かもしれないが、ばかばかしいことでもありますね」
ヤン・ルヴァ 「あー、本当にそうですねー。それにしてもキルヒアイス上級大将は好男子ですねー。いえ、燃えるような赤毛の方だとお聞きしていたものですから、きっとキザなジゴロのような感じかと勝手に思い込んじゃってましてねー。これじゃあ女性でなくても、あなたに”一夜干し”しそうですねー、うんうん」
ユリアン 「”一夜干し”ではなくて”一目ぼれ”です、閣下」
ヤン・ルヴァ 「ああ、そうとも言いますねー」
キルヒアイス 「(ユリアンに)君はいくつですか?」
ユリアン 「今年、15になります」
キルヒアイス 「そうですか、私が初陣したのも15の時でした。どうか元気でいて下さい。(急に小声で)ところで君に頼みたいことがあります」
ユリアン 「ぼくに、ですか??」

◯帝国軍輸送船・とある一室

 慎重にあたりを見回しながら入るキルヒアイス。
 うす暗い部屋にたたずむ影――なんとラインハルトである!
ラインハルト 「どうだった? ヤンという男」
キルヒアイス 「それが…何ともつかみどころのない感じで、正直彼のどこが『魔術師』と呼ばれる所以か、理解に苦しみます」
ラインハルト 「そう聞くとますます会ってみたくなるものだな、”奇蹟(ミラクル)のヤン”とやらに」
キルヒアイス 「そうおっしゃられるかと思いまして、既に手はずは整えてあります」
ラインハルト 「さすがだな、キルヒアイス」

◯ひなびた酒場の地下室(夜)

厳重な警戒体勢の中、ラフなスタイルで待っているラインハルトとキルヒアイス。ノックの音。
キルヒアイス 「どうぞ」
ユリアンの声 「失礼します」
と、ユリアンと続いてヤンが入ってきた!
× × ×
赤ワインで乾杯するヤンとラインハルト。
ラインハルト 「お目にかかれて光栄です」
ヤン・ルヴァ 「ええ、私もですよー。かねがね『比類を絶した天才』と拝察しておりましたローエングラム侯にお会いできるとはうれしいですねー。ユリアンに感謝しないといけませんねー」
ラインハルト 「貴公こそ不敗神話をもつ希代の戦略家ではありませんか。今夜はぜひ御指南いただきたいものです」
ヤン・ルヴァ 「うー、そんなー、戦略なんてなーんにも考えてないんですよー」
ユリアン 「閣下には、ただ天才的とも言える”ひらめき”があるんです!」
と、何やら怪しげな短冊を取出す。
ヤン・ルヴァ 「あー、そうですねー、例えばちょっとあなたの頭の中をのぞいてみましょうかねー」
と、目を閉じ、瞑想を始める。やがてユリアンが手にした短冊に文字が浮かび上がってきた。
キルヒアイス 「! これは…念写・・?」
ヤン・ルヴァ 「(パッと目をあけ)念写でGO、なーんてね」
ユリアン 「すみません、聞き流して下さい」
そして短冊にはハッキリと文字が写し出される。その文字とは――
ラインハルト 「『虎視眈々』ですか…。人聞きが悪いですな」
ヤン・ルヴァ 「あー、そうですねー。でもね、『虎視眈々』だとちょっとアレですが、『虎視タンタンターン!』って一言付足すと、かなり印象が変わると思いませんか? ええ、メモして下さっていいですよー」
ユリアン 「…無視して下さい」
 と、律儀にメモをとっているキルヒアイスに気付く。
ユリアン 「キルヒアイス様…」
キルヒアイス 「ヤン提督、私でやってみていただけますか?」
ヤン・ルヴァ 「もちろん、お望みとあれば」
と、再び瞑想を始める。
 短冊に念写された文字は、
キルヒアイス 「『美男薄命』…これはまた」
ヤン・ルヴァ 「(ほほをポッと赤らめ)いえその…これは決してあなたに対する邪な想いではなくって…ああダメです。言えば言うほど胸がドキドキしてしまいますねー、特に右心房が」
と、赤ワインを一気飲みして、さらに真っ赤になってしまうのだ。 
ユリアン 「と、とにかく、閣下は艦隊出動時には、このようにして四字熟語を念写されます。それが『正々堂々』であったり、『不動如山』であったり」
ラインハルト 「なるほど」
ヤン・ルヴァ 「あー、でもねー、私が一番好きなのは『温故知新(おんこちしん)』なんですよー。古きをたずねて新しきを知る、うんうん。なんともいい響きじゃありませんかねー。そう思いませんか? キルヒアイチュ☆。 あー、くれぐれも『おっこちる』じゃないですからねー、へへへ〜」
と、椅子から落ちてみたりして、もはや手のつけられない酔っぱらい状態である。
× × ×
ヤンたちを見送り、ぐったりと席につくラインハルトとキルヒアイス。
ラインハルト 「…やはりあの男、『魔術師』だったな」
キルヒアイス 「敵とはいえ、憎めない人ですね。…にしても『美男薄命』とは、不吉な…」

○ヤン艦隊旗艦ヒューベリオン・艦橋

瞑想しているヤン。
短冊に浮かんだ文字を見て、首をかしげているユリアン。
ヤン・ルヴァ 「どうかしましたかー?」
無言でヤンに短冊を渡すユリアン。
ヤン・ルヴァ 「うー、『焼魚定食』ですかー。うーん、まだ『焼肉定食』なら戦いようもあるんですがねー、どうしましょうかねー」
ユリアン 「この人についていって本当にいいんだろうか、僕は…。そんな『奇々怪々』な…」
ヤン・ルヴァ 「えー? 耳かいーの?」
ユリアン 「……」
ナレーション 危うし、ヤン艦隊!

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ああ最終回だっちゅうに、ルヴァ様、さぶさぶ。まあ、蒸し暑い今日この頃、楽しんでいただければ幸いです。(すばる) 

「焼魚定食」って事は、「強火の遠火」ってことですねー、うんうん。
ユリアン君、若いのに、苦労人っぷりが板に付きすぎだよ……

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