ルヴァ様コスプレ劇場

CAST2    伊達直人(タイガーマスク)
      「去り際」


<お話の背景>
 ついにやってきた”虎の穴”との最後の決戦の日。
 力・技・反則の3つの力をそなえる最強のレスラー・グレイトに決死の覚悟で立ち向かうタイガーマスク。

<登場人物>

ルヴァ直人=タイガーマスク
若月ルリ子 直人の幼なじみ
健太 孤児でタイガーマスクの熱狂的ファン
若月先生 孤児院「ちびっこハウス」の経営者 ルリ子の兄
ジャイアント馬場
タイガー・ザ・グレイト ”虎の穴”・ボス


○リング上

 マットは既に血の海である。
 グレイトのスクリューキックが、タイガーの顔面に炸裂! タイガーは頭からリング下ヘ転落してしまう。

○リング下・放送席

 TVアナと解説のジャイアント馬場。
ジャイアント馬場 「いかん! グレイトめ、本気でタイガーを殺す気だ!」
アナウンサー 「さあタイガー、果たしてこの地獄の責め苦から逃れる術はあるのか?! あっ、タイガーが起き上がりました」
タイガー 「…馬場さん、ちょ、ちょっとよろしいですかあ?」
 と、放送席の机の上にヌッと顔を出す。
ジャイアント馬場 「どうした、タイガー」
タイガー 「それが、あのー、どうも打ちどころが悪かったみたいで、暗算ができなくなってしまいまして…、できれば電卓なんぞお借りできないかと…」
ジャイアント馬場 「仕方のない奴だな…」
 と、なぜかスッと出て来る電卓。
タイガー 「どうも。えー、それで今のダメージが30ポイントとしてですねー、あちらの攻撃力と守備力がこうで、私のがこうで、ラッキーポイントをこれっくらい見積ったとしても、勝てる確率は、えーっとポン、0、000000…」
グレイト 「何をゴッタゴタやっているんだ!」
 と、放送席の小型テレビのコードを引きちぎり、タイガーの首に巻きつけ、ぐいぐい締めあげる。
タイガー 「ウッ、またポイントが…」

○ちびっこハウス(孤児院)

 テレビを見ている子供達の悲鳴。
 思わず目をそむけるルリ子。
若月 「大丈夫かい、ルリ子?」
ルリ子 「…ええ」
健太 「タイガーが、ボクのタイガーが、絶対負けるもんか!」

○リング下

グレイトのみぞおちにパンチを浴びせコードから逃れるタイガー。だが今度はヒジ打ちで顔面を連打され、マスクの一部がもぎとられてしまう。

○ちびっこハウス

健太 「あッ! タイガーのマスクが…」
ルリ子の心の声 「タイガーのマスクは、子供達のたった一つの希望よ。どうか神さま、奪わないで!」

○リング下

客席の椅子を奪い取るグレイト。
グレイト 「きさまのマスクをはいで、みじめな姿をさらしてやるッ!」
タイガー 「そんなこと、させるものですかッ」
と、リング上へ飛び上がる。

○リング上

 グレイト、椅子で猛攻。マットの血ですべって転んでしまうタイガー。そのタイガーの顔面めがけ椅子がふり下ろされる! 
 バリッ!!
 タイガーのマスクが半分もぎとられ、まるでミイラ男のようにターバンをグルグル巻きした男の顔が半分、現れる。
 ―――この瞬間、時間が止まる。

○ちびっこハウス

若月 「ルリ子、あ、あのターバン…」
健太 「タイガーが、タイガーが、”キザターバン兄ちゃん”だったなんて…」
ルリ子の心の声


「何なの…あのセンスのない巻き方…。
 それに…、私にはわかっているのよ、直人さん。
 あなたはきっとその下に『勝利の方程式』なーんていう豆本を忍ばせているに違いないんだわ。
 ああ…、でもそんなスットコ野郎だけど、どうかお願い、死なないで!」

○リング上

 静まり返った場内。
 自分からマスクをはいで、グレイトに突き出す、目だけ出したルヴァ直人。
グレイト 「とうとう、かぶとを脱いだか!」
ルヴァ直人 「いいえ! 大丈夫です。まだ全部は脱いでませんから」
 と、マスクを投げ捨てると、グレイトののど元に痛烈なトゥ・キック!
グレイト 「(よろめき)ついに本性をあらわしたな、黄色い悪魔め!」
ルヴァ直人 「そうですとも! これまで私はガマンにガマンを重ねてまいりましたが、もう限界です。これからは『虎の穴』で伝授されました知る限りの反則を駆使して、戦わせていただきます。
 それではまず初めに『股裂き』からです」
 と、いちいち紹介しながら次々と反則技をくり出していく。
 あまりのラフ・ファイトぶりに場内は失神者が続出。
ジャイアント馬場 「…す、すごい反則だ。あれじゃ俺の電卓はもう使い物にならんだろうな…お気に入りだったのに」
 × × ×
とうとう血泡を吐いてマットに沈むグレイト。
ハッと我に返るルヴァ直人。
ルヴァ直人 「ここはどこ? 私は誰?…」
と、血染めのマスクに気づいて拾い上げ、愛おしげに抱きしめる。
ルヴァ直人 「うー、これで終わったんですねー、うんうん」
リングを下りると、ゆっくり通路を去っていくルヴァ直人。
観客A 「結局タイガーマスクって誰だったんだろうね?」
観客B 「グルグル巻きだったもんね…」

○砂丘

 ターバンをなびかせ(つまり顔を出し)、豆本を握りしめながら、風紋を見つめているルヴァ直人。
ルヴァ直人 「勝ちましたねー。…しかし、反則、あれで全部でしたかねー。もう一度、数え直しますかねー」

○ちびっこハウス・庭(夜)

ブランコに腰かけ、涙目で星を見上げているルリ子。
そこへ健太が元気なくやってくる。
健太 「ルリ子ねえちゃん…」
ルリ子 「どうしたの?」
健太 「ぼく、直人兄ちゃんのこと、キザターバンだ、だっさいターバンだってバカにしただろ。一言あやまりたいんだ」
ルリ子 「いいじゃない。ホントのことだもの」
健太 「ヘッ? で、でもさぼく、会ってあやまらないと気がすまないんだ。直人兄ちゃん、いつ来るの?」
ルリ子
「(涙をあふれさせ)直人さんは…
 直人さんはもうきっとここには…」
ルヴァ直人 「えーと、今日はお恥ずかしいところを見せてしまいまして、何と言えばよいのやら…」
一直線に直人に向っていくルリ子。
ルリ子 「どうして? どうして来ちゃうわけ」
ルヴァ直人 「えー、そのー、このまま黙っていこうかとも思ったんですがねー、やはりそのー、子供達に私が反則を使った理由をですねー、ちゃんと説明しておいた方が、わかりやすいかなーと思いまして、はい」
ルリ子
「直人さん、こういう格言があるの、知らないの!?
 『できない奴ほど教えたがる』って」
みるみる顔面蒼白になって後ろに倒れてしまうルヴァ直人。
健太 「ルリ子ねえちゃんって、意外と”トドメを刺す”タイプだったんだなー」

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古代ルヴァよりもさらにコワレまくっていて、
熱狂的プロレスファンを敵に回したような気が一瞬したけど、そんなヤカラたちは、
120%アンジェ創作を読むわけないだろうと、即安堵。でしょう?(すばる)

「それよかさ、このルリ子役は勝ち気アンジェとオリヴィエとどっちが似合うかな?」
なんて思ったちゃん太でした。(そういう企画ちゃう。)

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