ルヴァ様コスプレ劇場

CAST8   クマ(ワンサくん)
      「浪花節」


<お話の背景>
  クマは、街の犬仲間たちの中で兄貴分的な存在。
  そんなクマの、命の恩人でもある御主人が重病になってしまう。

<登場人物&キャスト>

 ルヴァ・クマ   義理人情に生きる忠犬
ゼフェル・ワンサ クマの犬仲間
アンジェ・みどり ワンサのガールフレンド
ロザリア・ミミ みどりの友だち


 

○ルヴァ・クマの主人の家・中

 病気で寝たきり状態の主人のそばで、ルヴァ・クマもぐったりと横になっている。
 そこへ訪ねてくるゼフェル・ワンサ。
ゼフェル・ワンサ 「よお、クマのおっさん、御主人の具合が悪いんだって?」
ルヴァ・クマ 「(力なく)あー、もう少し静かに話してくれませんかねー、ワンサ」
と起き上がろうとするが立てない。
ゼフェル・ワンサ 「おいおい、おっさんもどっか悪いんじゃねーのか?」
ルヴァ・クマ 「うー、私はただこの4、5日食べていないだけですので御心配なく…」
ゼフェル・ワンサ 「なんで食わねーんだよ!」
ルヴァ・クマ 「…御主人が食べられないのに、どうして私だけ食べられましょう」
ゼフェル・ワンサ 「…ったく、クマの奴、言い出したら聞かねーかんな。めんどくせーけど、アイツ呼んでくっか」

○ルヴァ・クマの主人の家・庭

アンジェ・みどりを連れて戻ってくるゼフェル・ワンサ。
ゼフェル・ワンサ 「おーい、クマあ!」
よろめきながら出てくるルヴァ・クマ。
ルヴァ・クマ 「あー、何の用でしょうか?」
やつれ果てた姿に思わず駆け寄るアンジェ・みどり。
アンジェ・みどり 「ダメよ、クマさん! このままじゃ死んでしまうわ!」
ルヴァ・クマ 「みどりちゃん…私は、御主人についてあの世までご一緒するつもりなのですよ。
 御主人は私を拾って育てて下さった恩人です。男子たる者、義理と褌は欠かされぬと言うではありませんか、うんうん…」
アンジェ・みどり 「ヤダ、クマさんたら褌してるの!? まさか緑色!?」
ゼフェル・ワンサ 「おめー、何に反応してんだよ! ダメだ、こいつじゃ役に立たねー」
と、アンジェ・みどりを引張り出す。

○公園

土管の上で気品高く耳の毛づくろいをしているロザリア・ミミ。
そこへ走ってくるワンサとみどり。
アンジェ・みどり 「ミミーっ! 大変ったら大ヘーン!」
ロザリア・ミミ 「みどり、いつも私が言っているでしょ。女王候補生たるもの、例え天地が入れ換わろうとも取り乱してはいけないって」
アンジェ・みどり 「だってミミ、クマさんが今にも死んでしまいそうなのよ!」
ロザリア・ミミ 「一体何がありましたの?」
 × × ×
ロザリア・ミミ 「ホホホホ…」
ゼフェル・ワンサ 「なに笑ってんだ、おめーはよ。そこまで冷てー奴だとは思わなかったぜ」
アンジェ・みどり 「そうよ。ひどいわ」
ロザリア・ミミ 「何勘違いなさってるの、二人とも。そんなの簡単なことじゃありませんの。要するにクマさんに何か食していただけばよろしいんでしょう?」
ゼフェル・ワンサ 「だからダメだっつってるだろーが。骨を見せても見向きもしねえ」
ロザリア・ミミ 「そりゃあ骨くらいじゃダメですワ。もっとクマさんの大好物を御用意しなくては」
ゼフェル・ワンサ 「そうか! おっさんの大好物といえば…」
アンジェ・みどり 「しょうゆせんべい!」
ロザリア・ミミ 「ネギとトウフのミソ汁も、忘れてはいけませんわよ」
と、ウィンク。

○ルヴァ・クマの主人の家・中

息も絶え絶えな主人のおでこに濡れタオルをのせるルヴァ・クマ。
ルヴァ・クマ 「御主人様、あー、先ほど私は不覚にもみどりちゃんの顔を見たら、殉じる覚悟がぐらついてしまいました。どうかこの不忠者をお許し下さい」
と、脳裏に浮かぶみどりの笑顔。
ルヴァ・クマ 「…そうなのです。実は私、心秘かに彼女を想っておりました。このまま死んでしまえばもうあの笑顔を見ることはできない…あー、そう思ったらつい」
と、並べられた骨に手を出そうとするが、思い切り蹴散らかす。
ルヴァ・クマ 「いいえ、人生は浪花節。私は、義理人情に生きる道を選びます。御主人様、今きっぱりと、みどりちゃんへの想いは断ち切りましたから御安心下さい」

○同・庭

うつろな目で空を見上げるクマ。
ルヴァ・クマ 「あー、そういえば、あの日もこんな夏の暑い日でしたねー。『星は昼間もちゃんとある』ということを実証したくて、私はじっと空を眺めていたのでした。うー、ところがジリジリと焼けつくような太陽に翻弄されて、いつのまにか行き倒れてしまい、そんな私を御主人様が助けて下さいました。その御恩を思えば、空腹さえ幸福と呼べましょう、うんうん」
と、ぐったりとなって目を閉じる。
ところがその鼻先に芳ばしい香りが流れてきて、鼻がクンクン鳴ってしまう。
ルヴァ・クマ 「あー、これは幻臭とでもいうのでしょうか、いよいよ私も最期ということなんですかねー」
アンジェ・みどり 「違うわよ、クマさん。クマさんの大好物のしょうゆせんべい持ってきたの! しかも草加一の名人が一枚一枚コテで焼き上げた極上品よ!」
うっすらと目を開けると、そこには照りのきいた見事な焼き具合のせんべいが! 唾を飲み込むクマ。
ゼフェル・ワンサ 「それだけじゃねーぜ」
と、鍋いっぱいのネギとトウフのみそ汁を差し出した。
ゼフェル・ワンサ 「いいか、よく聞けよ。このネギは別名『殿様ネギ』とも言われてる下仁田ネギなんだぜ。煮込むと甘くなって、な、うまそうだろっ?」
と、ネギをすくって見せるのだ。
ロザリア・ミミ 「エヘン、それからこの豆腐、京都の嵯峨豆腐、もちろん天然にがりを使ってますわ。さすがの私も、取寄せるのに苦労しましたのよ。さあ召し上がって」
目に涙をいっぱいためているクマ。
ルヴァ・クマ 「うー、あなたがたは揃いも揃って・・どうして私を静かに死なせてくれないのですか!」
その瞬間、見事にブチ切れるミミ。
ロザリア・ミミ 「何ですって! ということはクマさん、あなたはこの私が作ってさし上げたこのおみそ汁を口にしないと、そうおっしゃるの? ハッ、冗談はよし子ちゃんですわ。こうなったら例え死んだって食べていただきますからね!」
と、クマの口を無理やりこじ開けると、みそ汁を滝の如く流し込む。
ゼフェル・ワンサ 「か、過激な奴だなあー」
アンジェ・みどり 「ちょっとワンサ、止めなきゃ、ホントにクマさん死んじゃうワ!」
大騒ぎしている犬の鳴き声で、近所の住人たちが集まってくる。
住民A 「全く、うるさい犬どもだね」
住民B 「おい、それよりじいさんの様子が変だぞ。救急車を呼ぶんだ! 早く!」

○病院

ベッドで横になっているクマの主人。
そしてその隣のベッドにはクマが!そばについているワンサ。
ルヴァ・クマ 「あー、何とか助かったみたいですねー。でもワンサ、私は大切なことを忘れていたんですねー。人生は浪花節よりも科学。科学ですよねー、うんうん」
ゼフェル・ワンサ 「たく、世話かけんじゃねーぜ。けどオレ、おっさんの浪花節、嫌いじゃないぜ」
ルヴァ・クマ 「ワンサ…」
そこへけたたましく駆け込んでくるみどり&ミミコンビ。
アンジェ・みどり
ロザリア・ミミ
「お見舞いに来たわよー」
 と、手には明らかに怪しげな包みが。
 ギョッと目を見合わせるクマとワンサ。

 

作者註
「ルヴァ・クマは忠義のあまり半分人化したフィクション犬です。良い子は決して犬にネギをあげないで下さいね!」


シリーズ最強のマイナー度か!? でもワンサ、はまってました、ヘソ上くらいまで。
今回、ルヴァ・クマもさることながら、ロザリア・ミミちゃんにもかなりはしゃいでもらってます。私ってばやっぱり、みどりちゃんよかミミ、ノンノンよかミィ、でもって温和ちゃんよか勝気ちゃんなんですなー。(すばる)

いやあ、ロザりんサイコー。ワンサくんって某銀行のマスコットが長かったから、それほど知名度低くないと思うけど。(ちゃん太)

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