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掃き溜めに鶴。
いや、仮にも自ら希望して入学した学校を掃き溜め扱いするのは問題があるけれど、とにかくそのとき門真の頭に浮かんだのはこのフレーズだった。
強くなりたいのは幼少時からの悲願だったし、中学には武道系の部活がなかったので、この桜咲のクラブ紹介にはかなり大きな期待と共に臨んでいた。
隣の席には同じ中学出身の古川橋。中学時代はあまり交流がなかったのだけれど入学以来よくつるんでいる。
文化部から始まった紹介は、2時間あまり経過した後、ようやく体育部になる。幸い武道系が先のようだ。
剣道部、柔道部。合気道同好会。
体育部に興味がないらしい古川橋は先ほどまでと違ってかなり冷ややかなコメントを漏らすのだが、門真はそっちまで気が回らない。
剣道は経験がないとついて行けなそうだ、柔道部はさすがに巨漢揃いだな、合気道は体格に関係ないというあたりは求めていたものに近いかも、でもまだ成長の可能性を捨てたくないし、同好会って言うのもちょっとどうかな、とあれこれ考えるのに忙しいのだ。
それにしても桜咲は少人数校なのに本当に部活動が充実しているなあと感心し、思わずため息をついたとき、目に飛び込んできたのが九条の舞姿だった。
演武なのか演舞なのか。
いや前者で間違いないのだが、その姿はあまりにも美しく優雅で、それでいて力強い。手や足を運ぶごとに周囲の空気が塗り替えられていくようだ。凜としたその美しさは日本刀を思い起こさせた。
部長の天王寺以下実力者揃いだとか、華々しい活動実績だとかの口上も半ば上の空で聞き流しつつ、門真は食い入るように九条の一挙手一投足を見つめていた。
九条が舞台袖に下がるのをしっかりと見届けてようやく我に返るとステージには水泳部が上がっていた。
「オレやっぱ吹奏楽じゃなくてバンド部にしようかな。門真は?」
古川橋が話しかけてくる。上の空だったので肘でしつこくつつかれるまで気がつかなかった。まだ頭の中では先ほどの舞が続いているのだ。
「今の…空手部…だよね」
「そうだけど…オマエまさか入部すんの?そりゃ、強くなりたいってオマエの目標には合ってるかもだけど、空手部って桜咲一の3K部活らしいぜ」
「3K?」
「そう」
古川橋はにやにや笑いを浮かべていたのだが、しばらく考え込んでいた門真が真顔で
「それって、『きれい、カッコイイ、筋肉』ってことなのかな?」とつぶやくのを聞いて、ただ天を仰いだのだった。