22:ふたり
本命の入試前日にインフルエンザにやられ(予防注射をしていたはずだったのに!)自分では予想もしていなかった女子校暮らし。
はじめはイヤでイヤで仕方がなかったはずなのに、いつの間にか居心地がよくなってしまったのだから不思議なものだ。
いわゆるお嬢さん校で、幼稚園からずっとブロッサムという人が半数以上もいる。中学組、高校組もほんの少しいるけれど。
担任に入学直後の二者懇談のとき誘われて、生徒会入り。って言うか執行部の一員となった。
なんでも今年は3年に一度の大きな行事があるから有能な人材が必要なのだとか。
有能と思ってもらえているのは悪くないので、素直に従ったのは良かったのか悪かったのか。
カルチャーショック。正直ブロッサムについてうすうす感じていた違和感が一気に凝縮された感じの。
そこは会長を女王陛下か女神様かとあがめ奉る奇妙な集団だったのだ。
たしかに会長はすごい人だ。
でも私はもっとすごい人を見つけてしまった。
会長の右腕、尼崎カンナ様。
ああ、ついつい様なんか付けてしまった。でも心の中でいつもそうお呼びしているから。
会長のことは、あのカンナ様があそこまで心酔してらっしゃるぐらいなんだからすごい人に違いないって言うぐらいの認識。
こういうのって1年生の生徒会役員には結構いるはず。もしかしたら2年生にもね。
つまり、会長を崇拝するのと同じぐらいカンナ様に憧れている生徒は多いってこと。
とにかく、どうすごいかっていうと、上手に説明しきれないのがもどかしい。
どんな仕事もてきぱきとこなし、よくもまあそんな細かいところまでと思うほどの心配り、なのにとても控えめで、いつもほほえみを絶やさない。
正直中学の時は控えめな女なんてうさんくさいと思っていたこの私がここまで心揺さぶられているのだ。
噂ではおうちは旧家で、お休みの日など和服で過ごしていらっしゃることも多いと言うから驚きだ。お花は物心つく頃から習ってらっしゃって、今では週末に何人かのお弟子を取る腕前だとか。本当に現代のニッポンの女子高生にあんな人がいるなんて、奇跡以外のなにものでもない。
でも何よりも衝撃だったのは、既に許嫁がいらっしゃるってこと。
なんでもおじいさまがご親友の孫と自分の孫娘をめあわせることを、カンナ様がまだお小さい頃にお決めになったそうで。
正直思いっきりカンナ様の人権無視されてるって言うか蹂躙されてません?っていうか、この時代にありえないってば。
当然カンナ様も困ってらっしゃるだろうと思って、ある時そのお相手のことをカンナ様ご本人にお聞きしたら。
たちまちバラ色に頬をお染めになって、うつむき加減に、でもそれはあでやかに微笑まれ、言葉少なだけれど情熱を込めて、その人がどんなにすばらしい方かを力説されるものだから、驚いたというか拍子抜けしたというか複雑な気持ち。
でもそれではっきりした。私が永遠のライバルとして宣戦布告すべき相手は二人いるって。
いや、たぶん絶対勝てないけれど、そういう仮想敵ってある種のエネルギーの源にならない?
とにかく、とてつもないライバルを二人設定して、私のブロッサム生活はものすごく充実していくだろうと勝手に予感している。