06:レトロ
芦屋瑞稀は面白い奴だ。何というか見ていて飽きない。
まず、アメリカで生まれ育った奴が転校してくると聞いたとき、思い浮かべていた「アメリカっぽいキャラクター」との落差がすでに感動的だ。
あっちはススンでるって少なくともオレは長年思いこんでいたのに、あの純情さはどうだ。
とりあえずアメリカ直送無修正激ヤバ写真が期待できないと悟ったときはかなり残念だったが、どんな環境に生まれ育っても個人の資質っていうのはあるんだな、てなところか。
それでいて正義感の強さなんかは、やっぱりすごくアメリカっぽい。
最近は慣れてきたのかそれほど騒がないが、当初はプライバシーなんかにもそれはそれはうるさかった。やっぱり違う文化で育ったんだなあ、と密かに感心していたよオレ。
考えてみると、「うぶで正義感が強くてまっすぐ」な彼は、レトロなアメリカンヒーローの平均像に驚くほど近い。なにぶんあの女顔ときゃしゃな体型のせいで全然そんな風には見えないけれどね。でも「レトロ」っていうのがこの際ポイントな訳。古くさいと言えばけなし言葉だけれど、レトロと言えば褒め言葉の範疇に入る気がするし。
男同士だって言うのに絶対裸になってしまうことがないっていうあたりもなんか妙に育ちがいいって言うかレトロな感じを強めていると思うな。あいつって皆暑がってクラスの半数以上が上半身裸になっている体育のあとでもなんか妙に涼しげなんだ。
でもまあ女装してダンスを踊るってのはアメリカンヒーローとはちょっと違うな。それがまた似合いすぎるぐらい似合うんだからたいしたもんだよね。
結局、面白い奴で目が離せない、で落ち着いてしまうかな。あ、もちろん「そこはかとなくレトロ」っていうのも外せない。
それにしても。
こんなに小さい学校なのに、その芦屋がかすむぐらいに個性的な奴がぞろぞろいるこの桜咲って、ある意味すごい学校だよな。