物書きさんに20のお題・黄
09:「鉄棒」
帰り道偶然関目にあって、そのまま一緒に寮まで帰った。
いつもワイワイつるんでいるけれど、関目と二人きりで話す事ってあんまりなかったな、と思ったままを口にすると「そうかもなー」なんて言ってた。
ついつい気になる陸上部の部内のことなどいろいろ聞き出してしまったけれど、気持ちよく答えてくれる。
とても充実したひとときだった。
「しかし普段は意識してなかったけれど、関目も背高いね」
「まーな」
「なんか改めてびっくりした。すごく背が高いってイメージなかったし」
「なんだそれ。でも、そんなもんだよな。オレ、実はグラウンドの高鉄棒の存在感を目指してんの」
「高鉄棒?どういう事?」
「ま、詳しく語るのも野暮って事。じゃな」
寮に着いてしまうタイミングがこんなに恨めしいのは久しぶりだ。
部屋の中であたしは高鉄棒について考える。どこにあったっけ。うーんと、グラウンドってどっちの。
帰ってきた佐野に聞いてみる。
「高鉄棒ってどこにあったっけ?」
「あんな目立つモン、なんでわからないんだ。グラウンド入り口正面向いて左手ちょっと奥」
わかった。て言うか思い出せた。確かに、背が高くて目立つ。なのに、あまりに見慣れているからか、風景にとけ込みすぎて印象が薄かったのだ。
その事を正直に言うと佐野も考え込んで、
「一年の最初の体育で使うから桜咲のヤツには印象深いはずだと思うぜ。っておまえ、途中転校だもんな」
「そうか、この学校限定の特別さもあるんだ」
「体育で使わなくても結構利用者いるぜ?懸垂競争してるヤツとか。ただぶら下がっているヤツとか、時々見る」
不思議と利用法はあるものなんだ。
「で、なんでそんなことを?」
「いや、ちょっとね」上手く説明できないときはいつもこれで逃げる。佐野ゴメン。
翌朝、食堂で関目と隣り合わせた。
「おはよ、関目。あのさ、昨日高鉄棒のこと言ってたけれど」
「ああ、アレね」
「目指してるってどういう事?」
「うーん、なんて言うかな、あの微妙な存在感がちょっと憧れなワケ」
「?」
「大きいし目立つはずが案外思い出せなかったり。かといって片隅に追いやられているわけでもない」
「そーなんだ。…うん、関目、近いと思うよ!よかったじゃん!」
「…それはもしかしてオレの存在感が微妙だと言いたいわけか?」
メガネをおさえつつ苦笑する関目は、それでもどこか嬉しそうに見えたのだった。