アルカディアデート三昧・プロローグ

序・そもそものはじまり


エレボスを倒したオーブハンターたちが陽だまり邸に帰還したことを最初に感知したのは教団長だった。彼は財団に使者を飛ばし、手短に相談事をまとめると、銀樹騎士と財団員を2名ずつ陽だまり邸に派遣した。なぜか新聞記者1名もそれに同行した。オーブハンターたちが帰還してちょうど3日目のことだ。その後陽だまり邸には5日ばかり人の出入りがなかったのだが、それはもちろん教団長と財団理事が組み、報道機関を巻き込んで、功労者たちに十分な休息を与えるためにとった措置だ。

一週間タナトス被害が途絶えたあたりで、世界の変化に気がついた人々は一割ほどだっただろうか。しかしまだ世の中に目立った動きはなかった。
2週間目にウォードンタイムスが満を持してオーブハンターたちの勝利とタナトスの滅亡とを発表した。人々は歓喜にふるえ、一部の熱狂した人々に至っては、この世界を救ったヒーローたちを一目見ようとリース郊外に詰めかけたが、すでに陽だまり邸には留守番役の銀樹騎士しかいなかった。住人たちはその直前、聖都に招かれ、そこで保護されていたのだ。

案の定ひと月もしないうちに熱狂は鎮静化した。人々はそれぞれ、平和が訪れたらしようと思っていた、あるいはしなければいけなかったことがあったのを思い出したのだ。陽だまり邸周辺も落ち着いたということで、ようやくオーブハンターたちは本拠地へと戻り、日常を取り戻したのだった。

その間聖都では関係者を適時召集し、オーブハンターを中心とした今後の大陸復興への働きについての話し合いが重ねられた。「地上でアルカディアのために働きたい」という元女王の卵の意志は至上命題とされ、そのために各団体、特に教団がどう動くか、という観点で行動計画が作成された。話し合いにはもちろん財団も参加し、報道機関も臨席した。
そんな毎日の中、話し合いの傍らの雑談で、誰が言い出したのかは今になっては不明だが、タナトスなき後の大陸の隅々までを改めて元女王の卵に見せてやりたい、いや、見せるべきだということになった。反対するものは誰もなかったが、誰がその役目を引き受けるかについてはひとしきりの駆け引きが展開されることになった。結局、彼女と特に関わりの深かった者が二人ずつ組んで大陸各所をピンポイントで案内するということで落ち着いたのだが、もちろんこの話し合いの一部始終は元女王の卵本人には厳重に隠され、結論だけが伝えられたのだ。


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