アンジェポンタン企画

守護聖様たちの9人制バレー


9.ジュリアスの純・情

○公園裏の広場

試合開始直後早くもタイムをとって、ベンチ前に集まっている守護聖チーム。
リュミエール 「私にはブロックなどということはできません」
と、ベンチにすわってうなだれる。
いつの間に用意したのか白板をズルズルと持ってくるルヴァ。
ルヴァ 「いいですか、リュミエール。バレーは競技です。競技というのはですねー(と、白板に『競技』と書き)技を競うと書くのです。ブロックもスパイクも、えー、トスもレシーブも、みーんな技なのです。わかりますね…」
 守護聖たちがルヴァに注目する中、ただ一人あさっての方向を向いているジュリアス―アンジェリークの髪のリボンの色がいつもの赤からみかん色に変わっているのに気がついたのだ。
ジュリアス 「なぜ色を変えたのだ…」
アンジェリーク 「ジュリアス様?」
視線を感じクルリと背を向けるジュリアス。
アンジェリーク 「あの、私、さっきはどうかしてました。ジュリアス様にあんな失礼なこと、言ってしまって。お許し下さい」
ジュリアス 「気にするな。怒りも”想い”の一つの形かもしれぬ。それに…たまには叱られるのも悪くはない」
 ギョッとしている守護聖たち。
アンジェリーク 「そ、そう言っていただけると、私もホッとします」
ルヴァ

「あー、だからですね、リュミエール。あなたがブロックに跳ぶことによって、相手のアタッカーの技が磨かれることになるのですよ。ブロックが高ければ高いほど、ブロックアウトを誘うなり、リバウンドをとるなり、クレバーな技をくり出すのです。
できる限り高く跳んでさしあげることこそ究極の優しさではありませんか?」
すっくと立ち上がるリュミエール。
リュミエール 「ルヴァ様のおっしゃる通りかもしれません。自信はありませんが、やってみましょう」
ランディ 「リュミエール様。生意気かもしれませんが、自分を変えることはとても勇気がいることです。ささやかですが俺の力をお贈りします!」
と、風を起こす。リュミエールの長い髪が一瞬フワッとなびく。
リュミエール 「ありがとう、ランディ」
 ようやく試合再開。
 相手サーブをゼフェルがはじいてしまい、チャンスボールが返ってしまう。
 またしてもエースアタッカーにトスが上がる。
 ブロックにつくリュミエール、思いっきりジャンプ。ドンピシャのタイミングでブロックが決まった!
オリヴィエ 「ナイスブロック! どうだい、初ブロックの御感想は?」
リュミエール 「(両手を見つめ)気持の良いものなのですね」
ルヴァ 「うんうん。百点満点のブロックでしたね。次も期待していますよ」
 オリヴィエの見事なトスワークによって、オスカーの豪快なスパイクやランディのクィック攻撃が次々と決まる。
 さらにリュミエールのブロックポイントやマルセルのサービスエースなどで、守護聖チームが優位に試合を進める。
オリヴィエ 「ある程度点差もあいたし、少し攻撃パターンをいくつか試すか。ジュリアス、ちょっと」
 と、ユニフォームの衿を立てながら、ジュリアスに近付く。
オリヴィエ 「短めのバックトスを上げてみるから、打ってみてくれない?」
ジュリアス 「承知…!」
 と、オリヴィエの衿の裏にみかん色のリボンの刺繍を発見してしまう!
ジュリアス 「タッ、タイム!」
 と、ダッシュして行ってしまう。
パスハ 「タイムは2回までですよ」
オリヴィエ 「わかってるよ!」

 ◯ジュリアスの執務室

 部屋に駆け込んで来るやいなや、ユニフォームを脱ぎ、裏返したりして調べ回っているジュリアス。
ジュリアス 「やはりどこにもない…」
 と、がっくりと肩を落とす。
ジュリアス 「ということは、アンジェリークの想い人というのは、オリヴィエ…」
 ジュリアスの心に響いてくる歌声。
歌声

「♪〜会いたいあなた〜せめて夢 その中で〜
  人生もいちどだけあれば あなたのため〜祈りを愛を込めて〜
  迷わず歌う〜純・情歌〜」
ジュリアスの嗚咽。

 ◯公園裏の広場

 何事もなかったかのように平然と戻ってくるジュリアス。
ジュリアス 「待たせたな。どうしても外せぬ仕事があってな」
アンジェリーク 「もうよろしいのですか?」
ジュリアス 「大丈夫だ。アンジェリーク、この試合だけは、お前のために全力を尽くそう。約束する」
アンジェリーク 「そんな、もったいない」
ジュリアス 「オリヴィエ、バックトスとやらをいつなりと上げてまいれ」
オリヴィエ 「あ、ああ…」
試合再開。
マルセルからオリヴィエにきれいにチャンスボールが返った。
オリヴィエ 「ジュリアス!」
ジュリアス 「ウォーッ」
 と、全身全霊のスパイク炸裂。
 広場中にどよめきが起こる。

挿入歌・石川さゆり「純・情歌」
JASRAC許諾J011204610


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「このお話ジュリアスけっこうひどい目に遭ってるんだけれど、いいかなあ? 光様びいきのちゃん太としてはどう?」
とすばるが気を使ってくれたのだけれど、私のお話の方がもっとヒドイ目に遭わせているので、この件については答えられないのであった……光様ファンの皆様ごめんなさい。

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