おやくそく     


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やっと、ゼフェル様とも仲良くなり 一緒に過ごせる時間も長くなった。
私が、育成等の用事でいっても、面倒くさがらないし、口ではぶっきらぼうな事を言うけど、瞳はやさしく笑ってる・・・っていうのにも気が付いた。
でも、それは女王候補だからなのか、ただ仲良くなったからなのか、あの人の心は解らない。
自分の気持ちは、泣きたいくらいわかるのにね。
それでも、どんなに乱暴なこといわれても、憎めずにいた。
なんでかわかんないけれど、ゼフェル様を知れば知っただけ気持ちが強くなっていく。

この人を好きになってよかった。

しあわせな気持ち。

いつものように執務室に出かける。
表むき、育成のお願いや情報収集をよそおっているけど、本当はただ顔が見たいだけ。
こまめに通わないと執務室に居なかったりするから。

でも最近では、研究院や占の館、散歩中に偶然会う事が多くて最低でも2日に1回は、姿を見る事ができた。
そして、ほとんど毎日会ってあいさつだけでも出来たのに・・・・

あの日、育成のお願いに行くと、ゼフェル様は照れながら

「毎日、顔みせろよな!」

と、言った。
他にも何か色々言っていたが、耳の中にはそれしか残らなかった。

うれしかった。
少なくとも嫌われていないようなので、よけいにうれしかった。

なのに!! 次の日、執務室へ行くとずっと不在中。
「毎日・・・・」とか言った次の日から、「それは、ないよー。」と、叫びたかった。
ここが、宮殿の中でさえなければ、本当にそうしていたかも知れない。

そして、静かに寮へ帰る。

そこで、レイチェルとゼフェル様を目撃してしまう。何もそんな場面に遭遇する事もないと思う。
胸の鼓動が早くなる。 自分自身にやましい物は何もないのに、とっさに隠れてしまう。

ゼフェル様は、ご機嫌な笑顔で帰って行った。

平の曜日にデートって事は、ゼフェル様から誘った事になる。
それを、レイチェルが断るわけないよね。
ふたりは、すごーく相性がいいんだもん!!
私なんて、相性が悪くって、最初はあきらめようかと思ったほどなのに。
でも、あきらめられずにいた。
だって、会えば会うほど、 知れば知るほど好きになってしまったから。

それなのに・・・・でも・・・・・。

そう・・・「好きだ。」と、言われたわけでもないし、自分の気持ちだって伝えていない。
だから・・・ゼフェル様はもちろん、レイチェルにも怒ったって意味ない。
ただ・・・明日が、土の曜日でよかったと思う。
会うことはないもの・・・守護聖様とは・・・誰とも・・・・。

∽ ∽ ∽

次の日、ひとり部屋にいると色々と考えてしまうので、なかなか研究院から出れないでいた。

聖獣からの望みは、闇のサクリアだったので、ゼフェル様には、こちらから行かないかぎり会う事もない。
そう考えるうち、涙がでてきた。

(ゼフェル様の嫌いな女の子に、なっちゃう・・・・・)

さらに、涙が溢れてくる。
寮の部屋にもどり、「ゼ」と付く物を考えないようにした。
でも 、読みかけの本の間に挟まれた、乾燥した青い花を見たとき、また涙があふれてくる。
この部屋にあの人に関係してないものなどないのかも・・・・

もーぅ!!ベッドに入って寝ちゃおう!!
何がなんでも寝ちゃおう!!と、心に決めベッドへ向かったときドアのチャイムが鳴った。
静かに、部屋の中に響くチャイム。 もしかして、ゼフェル様?!

急いで、ドアを開けると、そこには・・・クラヴィス様が立っていた。

========================つづく・・・=====


         

ほんのりと甘いお話・・・・に、なれるでしょうか?

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