マスタールヴァのカクテルトーク ランディ編
「いらっしゃいませー。
あー、ご注文は何になさいますかー。
えっ? 私のおすすめですかー? そうですねー。
運動神経抜群な貴方様には『チャールストン』なんていかがでしょう。
……・ええ、ジン・ワイン・リキュールなど6種類もの材料がにぎやかに混ざり合うところから、その名がついたカクテルです。
うー、『チャールストン』にまつわるお話をしましょうかねー。
ここからずっと遠く、北の国の深い深い森の中に6人の小人がいました。
小人たちはいたずら盛り。今日もまた妖精のきのこを森から盗み出し、町のエラーい町長さんの口に入れたものだから、妖精王はカンカンです。
もっとも町長さんはきのこを食べたおかげで”嘘”というものが言えなくなってしまったので、小人たちは良いことをした、と思っているんですがねー。
カンカンになった妖精王はただちに6人の小人を城に召し出しました。
――お前たちはいたずらが過ぎる。よってこの森から追放じゃあ〜
森の暮らしが大好きな6人は涙をポロポロ流して許しを乞いました。
その涙の色があんまりきれいだったので、王も少し心がぐらついたようです。
――では、お前たちに課題を与えよう。その課題を見事クリアできたあかつきには、森に戻ってもよいことにしてやろう。
小人たちは手のひらを返したようにお祭り騒ぎを始めました。
妖精王はやれやれ、とため息をつくのでした。
さて、ここで問題です。妖精王が与えた課題とは何だったでしょう?
……えっ、6人で駅伝ですかー。面白そうですけどね。
……ふふ、それがですねー、意外や意外、愛に関する問題だったんです。
妖精王ははしゃぎ回る6人を何とか静めると、氷の間へと連れていきました。
王が右手をあげると、床の氷には一人の若者の姿が映し出されたのです。
――彼は恋を失って間もない。お前たちに与える課題とは、彼に新しい恋を授けることだ。皆、よくわかったな。
――はい、王様!
小人たちは元気よく返事をすると、若者の住む町へと急ぎました。
町の人々にはもちろん小人たちの姿が見えるハズもありません。
若者の頭・肩・腕・腰・膝・つま先にそれぞれピッタリと貼付いた6人は、その若者が、よく行くクリーニング店の娘を気に入ってることがすぐにわかりました。
ただすっかり臆病になっていた彼は、いつまでたっても恋の矢を放てなかったのです。
小人たちは奥の手を出すことに決めました。そう、彼にだけは姿を見せてしまおう!
真夜中0時、1番目の小人が若者の前に出て言いました。
――彼女にロゼワインをプレゼントするといい。ロゼは恋の香りさ。
翌日彼は小人にもらったワインを持っていきました。
しかし娘はお酒は飲めないから、と受け取ってはくれません。
2番目の小人がくれたハーブクッキーも、3番目の小人がくれた赤紫色の口紅も、
4番目の小人がくれた子鹿のぬいぐるみも、5番目の小人がくれたオルゴールも、
とうとう受け取ってはもらえませんでした。
今夜はいよいよ6番目の小人の日。
――彼女にこれを……あれっ? ない、プレゼントがないよ!
どこかに置き忘れてきちゃった。エーイ、もうヤケクソだ!
翌日彼は娘にこう言いました。
――今日は何にもないけれど、僕の気持を受け取って下さい!
うつむきながらも微笑む彼女。それが”新しい恋”の始まりでした。
さあ、お待たせしました。『チャールストン』です。コレ飲んでも踊り出したりしないで下さいねー」
「アハハハ。俺も恋の矢が見事命中したなら踊り出したくなるだろうけど」