マスター・ルヴァのカクテルトーク クラヴィス編
「いらっしゃいませー。
あー、ご注文は何になさいますかー。
えっ? 私のおすすめですかー? そうですねー。
神秘的な雰囲気の貴方様には『スターリー・ナイト』なんていかがでしょう。
……ええ、『星月夜』という名のジンベースのカクテルです。
うー、『スターリー・ナイト』にまつわるお話をしましょうかねー。
今でこそ星降る夜はロマンティックで、恋人たちが肩を並べて流星群を眺めたりしてますが、
昔は流れ星そのものが不吉とされ、そんな夜は誰一人として外を出歩くようなまねはしなかったんですよー。
そんな時代、あるところに禁じられた恋をする若い男女がいたんです。
思うように会えない二人は、星降る夜こそ絶好のチャンスだと会う約束をしました。
予想通り誰もいない丘の上で会った二人は、星々のもと夢のような時をわかち合いました。
そして、これからも星降る夜にはこの丘で会おうと固く誓いました。
彼は言いました。
――これから先、二人は別々の道を歩くことになるかもしれない。
いや、きっとなるだろう。
けれどこの約束だけは永遠だ、と。
娘は次の日から毎日のように占い師のところを訪れては星降る夜が次はいつ来るのかを聞きました。
それは一週間後のこともあれば一ヶ月後のこともあったんですよー。
ところがある日、娘が占い師を訪ねると絶望的な答が返ってきました。
――星降る夜はあと十年待たなければやってこない、と。
それは、心ならずも別の娘との婚約が決まってしまった彼が、占い師に頼んで言わせた嘘でした。
そうとも知らないで、娘は涙ながらに帰ってゆきました。ああ、泣けちゃいますねー。
時に背をおされ十年がたちました。
占い師の言葉を信じていた、いいえ信じたかった娘は約束の丘で一人たたずんでいました。
十年の月日は娘を大人にして、お酒もたしなむようになっていました。
カクテルグラスを手に娘は待ち続けました。
星は降り続けるけれど彼はやっては来ません。
娘はとうとう覚悟を決めて、グラスの中に毒薬を注ぎました。
そしてその紫の水を口にしようとしたその瞬間! 彼の声が聞こえたのです。
十年ぶりに自分の名を呼ぶ、あのなつかしい声が!
彼もまた娘のことが忘れられずに、約束を果たしにきたのでした。よかったですねー
、うんうん。
今度こそ二人は心の底から誓ったのです。
――これからどんな苦難があっても愛を勝ちとろう、とね。
さあ、お待たせしました。『スターリー・ナイト』です。
もちろん毒なんて入ってませんからねー、安心して召し上がって下さいねー。」
「フッ、闇を照らす星の酒か。……いただこう。」