カケラ・a
「秘めごと」


お前の秘密は知っている、となぜ言えないのだろう。
あいつが、「正体が知られたのならもうここにいられない」なんて言い出しそうだから。ならば、

「二人の秘密にしよう」

ただそう言えばいいのだろうか。

あたしには絶対知られてはならない秘密がある。
大好きなあの人にさえ知られてはならない。
でも、ものすごく知って欲しくもある。本当は。
だって、いまの「友情」から前に進むために、それは絶対必要な手続きだから。

でも、最悪の場合は、前に進むどころか今の場所さえも失いかねない。
それを思うとそんなこわいことはできないのだ。
どちらにせよ、彼の隣に位置を占めることのできる期間はあと一年なのだから。

時々考え込んでいるそぶり。
遠くを見つめる目。
ため息。

お前を悩ますものの一つがその秘密の存在なら、やはり言ってしまった方がいいのか。
でももしそのことでお前を失うことになるのなら。
どちらにせよ、お前と過ごせる時間の残りは今こうしている間にもどんどん減ってゆくのだ。

三十題のボツ作品。かなり以前、メールフォームのおまけでした。

ちるだ舎