トレミーガーデン

開設 2000.6.18
更新  2005.7.15ASP

【トレミーガーデン】
トレミー氏式様式で造られた庭園。
花壇などの植栽を、「弓」の字を背中合わせにした形状に配する。
また、迷路などのさまざまな仕掛けを施すことが多い。



泡坂妻夫氏の作品、「亜 愛一郎シリーズ」を紹介するページです。
本当に「ご紹介する」以外のことができないのは心苦しいのですが、
この作品に出会う人が一人でも多ければとても嬉しいです。

亜 愛一郎氏は若き日の私の理想の男性でした…(なんて厚かましい!)
それは置いておいても、「何度も読み返してしまう短編ミステリ」って、私の知っている範囲では他にすくないかも・・・って思って、M−H−STREETに来てくれた人にも是非読んでみて欲しいなっていうことで、こういうささやかなページを作ってみたのですが・・・


亜 愛一郎って誰?

泡坂妻夫氏の短編連作ミステリーに登場する、探偵役です。本業は学術写真専門のカメラマンですが、次々奇妙な事件に巻き込まれては、その独自の思考の展開によって謎を解き明かして行きます。
彼の奇妙な名前は、「名探偵辞典が作られたとき、必ず一番最初に来るように」付けられたものだそうです。・・・たしかに、はじめの4文字が「アアイイ」ですからねえ。


どの本に出てくるの?

「亜愛一郎の狼狽」
「亜愛一郎の転倒」
「亜愛一郎の逃亡」

の3冊です。これ以外はありません。
(ただし、彼のご先祖が活躍する時代ミステリ短編集に「亜智一郎の恐慌」があります。)
今から購入でしたら、創元推理文庫版で。図書館で探すなら、角川書店からの単行本や文庫本の可能性もあります。

初めてこのシリーズを読まれるのでしたら、「狼狽」「転倒」はどちらを先に読み始めてもさして違和感は無いのでは、と思います。
ただ、「逃亡」だけは必ず最後にお読みになることをお薦めします。
また、創元推理文庫版の「亜愛一郎の転倒」の解説が田中芳樹氏によるものの場合、その解説にはシリーズの重要なネタバレがありますのでシリーズ読了まで読まずにいた方が良いでしょう。(
これについては版次があとのものについては解説が差し替えられているそうですが、古本で入手された場合はご注意下さい。)
運悪く「逃亡」が真っ先に手に入った場合、最終話だけは読まずにいて下さい。最終話はシリーズを全て読んだ後でないと感動が薄いと思いますから。

*購入される方のために、創元推理文庫版のデータを入れておきます。

亜愛一郎の狼狽 本体価格:\680 出版:東京創元社 サイズ:文庫 / 381p 発行年月:1994.8  ISBN:4-488-40214-3
亜愛一郎の転倒 本体価格:\640 出版:東京創元社 サイズ:文庫 / 341p 発行年月:1997.6  ISBN:4-488-40215-1
亜愛一郎の逃亡 本体価格:\620 出版:東京創元社 サイズ:文庫 / 352p 発行年月: 1997.7   ISBN:4-488-40216-X


どうして繰り返して読むことになるのか?

 いや、もしかしたら、「一度読むだけで充分」って思う人もいるかも知れませんが・・・
短編ミステリって、1度目は絶対、犯人とか動機とかそういうことを考えて読みますよね?そして、最後に意外な事件の実態が明かされたとき、なんだかもう一度ぱらぱらと読んでしまいませんか?
でも「何度も読む」って言うのはそれではないのです。
一本だけ読んだときは多分何も思わないでしょうが、シリーズを通して読んだとき、絶対あなたの心に引っかかる何かがあるはずです。本編とはなんの関係もないようなところで。たとえば、それはなんだか気になるひとつの単語だったりするのですが・・・あとは言いません。読んでからのお楽しみ。

あと、作者の泡坂氏はものすごく言葉遊びの好きな人で、アマチュアマジシャンだという経歴を抜いて考えても、とにかく文中や、構成そのものに一見本編とはあまり関係のない(ような気がする)仕掛けが施されていることが多いのです。それに気がついてしまえば、どうしても、「あ、ここにも、ここにもある!」なんて読み返してしまいますよね・・・

泡坂的ユーモア感覚

ちょっと昔風のユーモア感覚(そう、この言葉自体が古いのですが、そう書くことがふさわしいと思われるので)が全編を覆っています。人が殺されていても、なんか軽妙洒脱なムードがあったりして、戸惑う人もいるかも知れません。おどろおどろもしていなければ、妙に深刻にもならない、この世界は、落語的というか江戸前というか、そういう感じではないでしょうか。
たしかにこのへんは好き嫌いが別れるところでしょうが、あなたが気に入ってくれれば嬉しいです。

奇妙な論理と人生の真実

なんか大げさな題を付けてしまいましたが、この短編達を読み返していると「人生の真実」なんて言うフレーズがふと浮かんでしまうのです。
それは、「人は第一印象がひっくり返されれば、そのことばかりが印象に残り、もしそれが再びひっくり返ることがあっても、そちらは印象に残らない」っていうことであったり、もっとシンプルに「一病息災」だったりするのですけれど。
 そして、謎解きの根幹をなす、一見奇妙な、でもよく考えてみると日常にころがっている論理。どちらも、「この作者って人生知り尽くしているなー」、なんて感慨を抱きながら読んでしまうのでした。

蛇足

短編ミステリ、ですから、これ以上あまり詳しく解説することはしません。
とにかく、機会があったら読んでみてください、と言うのみです。

そしてもしあなたがこの世界を気に入って下さったら嬉しいです。

さらに、全編お読みになって、他の泡坂作品も手に取っていただけたなら、ファンとしてこれ以上嬉しいことはありません。

 

 あーもーもどかしい。でも、これから読む人の楽しみを奪ってはいけないし。
 と、髪をむしりつつこれで紹介は終わりです。・・・・本当、騙されたと思って是非読んでみてね!


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あ、この「トレミーガーデン」っていうコトバは建築用語でもなんでもありませんよー。シリーズを読めばわかりますよね?

亜とアンジェリークの両方を知っている人のためのお部屋は10周年企画で。需要があるかは謎。