Secret Lover                          BY にゃお様


それは、ある日の曜日・・・。
いつもと変わらぬ穏やかな午後の陽射しの中、地の守護聖邸にて開かれた、お茶会でのこと・・・。

「あー、ジュリアス。お茶のお代わりは如何ですか?」
「うむ、では貰おうか。」
「はい、はい。」
「ルヴァ、私にもお茶貰える?」
「さぁ、オリヴィエ。どうぞー。」
「サンキュッ★」

そんないつもと変わらぬ一時を過ごしていた、光・地・夢の守護聖達・・・。

「しかし、す〜っかり安定したねぇ。」
「何がですか、オリヴィエ?」
「何って、陛下のお力だよ。お・ち・か・ら!」
「あ〜、そうですねぇ。陛下が女王に即位して3ヶ月ですか・・・。」
「慣れぬ職務をよく務めておいでだ。最初の頃は不安げであったが、もう今では自信に満ち溢れている。」
「ホント、そうだよねぇ。陛下の成長には目を見張るものがあるよね。」
「私もそう思いますよ。本当に大きく成長されましたよ。」
「・・・オスカー。先程からどうしたのだ?」
「・・・」
「オスカーってば!どうしたってのさ、一体!」

と、オリヴィエに背中を叩かれた。

「イタッ!」
「何、ボサ〜ッとして、どうしたのさ?」
「えっ?」
「急に黙り込んじゃって。」
「オスカー。どうしたんですか?身体の具合でも悪いんじゃないですかぁ?」
「いや、何でもないんだ。ルヴァ。すまないな。」
「疲れているようだな、オスカー。早々に館へ戻り休むと良い。」
「はっ、ジュリアス様・・・。では、お言葉に甘えて失礼させて頂きます。」

オスカーはジュリアス達にお辞儀をしてその場を立ち去った・・・。

「オスカーは大丈夫でしょぅかねぇ・・・。」
「めずらしいねぇ・・・。」
「うむ・・・」




一方、館に戻った炎の守護聖は、一人寝室のベッドの上にいた・・・。


「はぁ〜、さっきはマズかったな・・・。俺としたことが。
 ジュリアス様はお気を悪くされてしまったのではないだろうか。」

先程のお茶会での出来事を思い返し、1人ごちていたのだが・・・暫くすると日々の疲れからか睡魔に襲われてしまった。


どれ程の時が経ったのだろうか・・・。
隣の部屋から物音が聞こえ、目を覚ました・・・。

「・・・ん・・・。イカン・・・すっかり眠ってしまったようだな。」

窓の外を眺め、辺りがすっかり暗くなっている事を確かめた。

「もう、こんな時間か・・・。」

起きあがると、物音の理由を確かめに隣の部屋へと向った・・・。

「誰かいるのか?」

大きな扉を開けると同時に声をかけると、そこにはこの宇宙を統べる女王アンジェリークが・・・。


オスカーは酷く驚いた。
無理もない、オスカーは聖地の安全を管理するという役職も兼ねていた。
もちろん、女王が住まう宮殿も含まれていて、当然の如く何処よりも厳重な警備体制を強いていた。
・・・筈・・・であった・・・。
普通であれば、女王が単身宮殿を抜け出す事など出来るはずもないのだ・・・。

「陛下!」
「オスカー様!」
「どうして、こんなところに・・・。」
「いくら待っていても、一向にオスカー様が来てくださらないから・・・。」

そう・・・、オスカーとアンジェリークは守護聖と女王という立場を超えて心を通わせていた・・・。
それは、アンジェリークが女王候補だった頃から・・・。



アンジェリークがロザリアとの試験を続けていた、ある日の事・・・。
アンジェリークは先々の事を不安に思いオスカーに心を打ち明けた。

「オスカー様・・・私達どうなるのでしょうか・・・。」
「お嬢ちゃん、何がそんなに不安なんだ。」
「今、エリューシオンの育成は順調に進んでいます。ロザリアのフェリシアよりも・・・。」
「ああ、そうだな。お嬢ちゃんは本当によくやっている。俺も嬉しく思っているが、それが・・・?」
「”それが”、って・・・このままでは、私女王になってしまうかもしれない。」
「ん・・・お嬢ちゃんは女王になりたくないのか?」
「女王に・・・なりたいです。エリューシオンの民と共にいたいです。」
「なら、良いじゃないか。」
「で、でも・・・。」
「でも・・・?」
「女王になったら・・・オスカー様と一緒にはいられない・・・。
 それは嫌なんです。オスカー様とずっと一緒にいたい。お別れしたくないんです!」
「ん?お嬢ちゃんは女王になったら、俺と別れるつもりなのか?」
「別れたくないです。・・・でも・・・。女王と守護聖様が・・・そんな・・・。許される訳が・・・。」
「お嬢ちゃん・・・。誰が許そうと許すまいと、そんな事はこのオスカーには関係ないな。
 俺は、お嬢ちゃんを離さない。誰がなんと言おうともな・・・。
 それに・・・女王は恋をしちゃいけない、女王に愛する人がいてはいけないと・・・誰が決めた。
 まぁ、誰が決めようと俺の知ったこっちゃない。
 例えお嬢ちゃんが別れたい・・・と言っても、俺は聞く気はないぜ。
 お嬢ちゃんの心を、この俺の瞳で再び熱く燃え上がらせてみせるからな。」
「オスカー様・・・」

その後、皆の予想通りアンジェリークが女王になった、一方、オスカーとアンジェリークは
人目を忍んで逢瀬を重ねていた・・・。
そして、それは今でも続いていた・・・。



「折角来たのに、オスカー様ったら眠ってらっしゃるから・・・。
 先ほど来たのですが、失礼しようと思っていたところだったんですよ。」
「陛下・・・。」
「イヤです、オスカー様。2人きりの時は敬称で呼ぶのは止めてください。」
「そうだったな。では、アンジェリーク。俺に逢う為に、一人、宮殿を抜け出して来てくれたと・・・?」
「はい!」

アンジェリークは「偉いでしょ」とばかりに応えた・・・。
「きっとオスカー様は”俺も逢いたかった”と言って抱きしめてくれる・・・。」とも考えていた・・・。
すると・・・


「馬鹿者!自分の立場を考えろ!こんな夜遅くに出歩くなんて。」

大きな声で怒鳴るとアンジェリークに背を向け大きく「フー」っと息をついた・・・。
きっと喜んでくれると思っていたアンジェリークはめったに怒る事のないオスカーに驚いていた・・・。

「・・・っく・・・ひっ・・・」

背後から聞こえて来た微かな声に驚き振り返ると、大きな翡翠色の瞳に涙を一杯に溜めて自分を見つめていた。

「そんな・・・ジュリアス様みたいに怒らなくても良いじゃない!
 折角・・・。オスカー様に逢いに・・・逢いたくて来たのに。
 恐いのを我慢して・・・宮殿からここまで来たのに・・・。
 どうして、”よく来たな、逢いたかった”って言ってくれないの!オスカー様のバカァ!」

そう言うと、オスカーの厚い胸を両手で叩いた。

「アンジェリーク・・・。
 もし・・・君にもしもの事があったら、俺はどうしたら良い。
 安全な聖地だとはいえ、万が一の事もあるんだ・・・。
 君に危険が及ぶ事を、どうして俺が受け入れられる・・・。」

出来るだけ感情を押さえ、冷静に話そうと試みるが次第に激しくなって行く。
自分の胸に当てられていた、アンジェリークの両の手首を掴みながら・・・

「なあ、教えてくれ・・・。君にもしもの事があったら・・・。俺は・・・」

そう言うと、掴んでいた手首から手を離しその代りにアンジェリークの細い身体を強く抱きしめた。

「オスカー様・・・」

思いがけず聞いたオスカーの胸の内・・・。
アンジェリークは嬉しかった・・・。

「アンジェリーク・・・愛しているんだ。
 君を失ってしまったら、自分が自分でなくなってしまう。
 否、君を失うなんて事を考えただけで・・・君を失うのが・・・恐い・・・。」

アンジェリークの瞳を見つめながら、アイスブルーの瞳が熱く語り掛けて来た・・・。

「ごめんなさい。」
「こんな事は、もう止めてくれ。生きた心地がしないぜ。」

アンジェリークを更に強く抱きしめた。

「でも・・・オスカー様がいけないんですよ。」
「俺が?」
「そうです。いつものお約束の時間に来てくださらないから。」
「ああ、悪かった。つい、居眠りをしてしまったんだ。」
「疲れてらっしゃるんですね。」
「そうかもしれないな。俺をこんなに心配させるお子様がいるからな。なぁ、お嬢ちゃん。」
「っ!!ヒドイ、オスカー様。私は子供じゃありません。」
「そうかな?愛しい恋人を呼ぶのに”オスカー様”じゃ女王候補時代と変わらないぞ?
 素敵なレディなら、”オスカー”と呼んで欲しい物だ。」

いつも自分の事を「敬称で呼ぶな」とオスカーに言っていたのにも関らず、
自分はオスカーの事を敬称で呼んでいた事を気づかされた。

「あっ!そうでした。」と照れくさそうに可憐な笑顔をオスカーに向け、恥ずかしそうにオスカーに抱きついた。

「オスカー・・・。」
「何だい、アンジェリーク。」
「愛しています・・・。」
「俺は・・・。」
「俺は?」
「その百億倍は愛してる・・・かな・・・。」
「えっ!オスカーったら・・・。」
「ハハハ・・・」



その後もオスカーは、皆が寝静まった深夜に、愛しい人のいる部屋へ向う。
そして、皆が起きる前の早朝に戻ってくる。
もちろん、警備の隙をぬってのことだ・・・。警備の時間やルートはオスカーが自ら決めたのだから容易い事だ。


そして・・・


「おや?オスカー・・・。」
「うむ・・・そのようだ・・・。」
「このような所で、居眠りとは貴方らしくありませんね。」
「・・・大分、疲れているようだ・・・。」
「ええ。ですが、何やら楽しそうですね。」
「・・・まぁ・・・そうであろう・・・な・・・。」


にゃお様より、アンジェページ開設のお祝いにいただきました〜〜!!感動!
とっても素敵なオスカーと、とってもかわいいリモージュ!!
皆様ご堪能いただけましたか?うふふ。

にゃお様談;
「私にしてはめずらしく、大人しか出てきません(笑)
 風様も品位様も出ません。
 主役は・・・あのお方で、女王リモージュとのお話です。
 私の創作にはあまりというか全く登場しないのですが・・・
 ちょっと大人を書いてみたくて・・・チャレンジしてみました。」


実はちゃん太は最後の光様のセリフがとっても好きなのでした。そーか、やっぱりそーだったのか!という感じで。

にゃお様、本当にどうもありがとうございました。(深々と礼)


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