2010年ティムカ様バースデイ企画
夕食会 de ペペス・イカン


アンジェリーク 「そろそろ夕食会にしませんか?」
レオナード 「今日は誰が作るんだ?」
ティムカ 「僕です。僕の故郷の料理を是非皆さんに食べていただきたくて」
ユーイ 「ティムカの故郷ってことは海の男の料理か?」
メル 「わー楽しみだなー。宮廷料理ってことでしょう?」
レオナード 「ティムカは王様だったんだ。宮廷料理は食べる専門じゃねーのか?」
ティムカ 「はい! だから作るのは初めてでとっても楽しかったです!」
レオナード 「は、初めて…まあ、ビギナーズ・ラックってこともあるしな」
アンジェリーク 「それで何と言うお料理なの?」
ティムカ 「『ペペス・イカン』と言いまして、バナナの葉を使った料理なんです」
メル 「バナナ!? 悪いんだけど僕、バナナは苦手で…」
ティムカ 「大丈夫ですよ、バナナの葉を使っているだけで、バナナそのものは具材ではありませんから」
ユーイ 「よかったな、メル。オレだって嫌いな豆のスープなんか出てきたら、テンションが下がっちまうからな」
アンジェリーク 「ってことは…私が食べたいのは…つまり…『ペペス・イカン』なんですね」
レオナード 「やれやれまるで見当もつかねえもんだが、王様のお手並み拝見ってとこだな」
   × × ×
ティムカ 「さあ、蒸したての『ペペス・イカン』をどうぞ!」
ユーイ 「緑のびっくり箱みたいだな。何が入ってるんだ?」
アンジェリーク 「…ウーン♪ 中からはスパイシーな香りがしているわね」
レオナード 「マジで腹が減ってきちまった。早いとこ開けようぜ」
メル 「いくらびっくり箱でも、バナナの本物が出てきちゃったらイヤだよー?」
ティムカ 「あはっ、『ペペス』は包み焼き、『イカン』は魚の意味なんです。だから『ペペス・イカン』は、魚に香辛料をまぶしてバナナの葉で蒸し焼きした料理です。安心して開けてみて下さい」
メル 「じゃあ開けるね。あっ、美味しそうなお魚だー」
ユーイ 「この葉っぱも食べていいのか?」
レオナード 「そりゃムリだろ」
ティムカ 「ええ。その葉はお皿代わりにお使い下さい」
ユーイ 「そうなのか? これも食べたら美味そうだけどな」
アンジェリーク
「(会話が危なげな方向に向かっているわ…話を変えないといけないわね)
 あの、ユーイ…このお魚の名前がわかるかしら? 魚には詳しいでしょう?」
ユーイ 「まずは一口、おう美味いぞ、この白い魚。こんなのはオレ食ったことないぞ」
ティムカ 「それは『ふぐ』という魚だそうですよ」
アンジェリーク 「何ですって!」
レオナード 「ま、まさかティムカ。お前がふぐを捌いたっていうのか!?」
ティムカ 「はい、そうですけど、それが何か?」
レオナード 「あちゃー、陛下。こりゃ俺たち、最後の晩餐かもしれねーな…」
メル 「いったいどういうことなの??」
レオナード 「あのな『ふぐ』には、強烈な毒があんだよ!」
ユーイ 「なんだ、毒くらいで大騒ぎしすぎだろ。オレなんか何度も食ったことあるぞ」
アンジェリーク 「(…ユーイ、頼もしいのか何なのか…) そうだわ! メル、占ってちょうだい!」
メル 「占う? 何を占えばいいの?」
アンジェリーク 「もちろん、ここにいる全員の未来よ!」
レオナード 「女王陛下の言うことか?? もう毒が回っちまってんじゃねえか?」
   × × ×
アンジェリーク 「デザートはいかが? 『天使のケーキ』を焼いてみたの。卵白だけで作ったリング型のケーキよ」
レオナード 「『ふぐ』の後で『天使』だと? 縁起でもねえ」
ティムカ 「まっ白でおいしそうですね! 食べてしまうのがもったいないくらいです」
ユーイ 「今夜は白い食べ物デーだな」
アンジェリーク 「私が取り分けるわね。大きさはどのくらいがいいかしら」
メル 「トランプ占いで決める?」
レオナード 「いちいちめんどくせーなー」
アンジェリーク 「面白そう。やってみましょうよ」
メル 「じゃあ僕がトランプを広げて持っているから、好きなのを1枚ずつ引いていって」
ユーイ 「よしきた…やった! ハートのエースだぞ!」
ティムカ 「僕はクラブの4でした」
アンジェリーク 「幸運の印ね。…あっすごいわ私ったら。ダイヤのクイーンよ」
レオナード 「…なんで俺だけジョーカーなんだ!」
メル 「僕が残ったスペードの8だね。陛下、ケーキの大きさを1:4:8:12になるように切って下さい」
レオナード 「おい待て、それだと俺様のジョーカーの分がない気がするが」
メル 「ありますって。ジョーカーは、ケーキの真ん中の穴の部分です」
レオナード 「真ん中の穴!? 結局ねえんじゃないかよ!」
ユーイ 「ははは、そりゃあいいやあ」
アンジェリーク 「レオナード、怒らないで。ちゃんと私の取り分を分けてあげますから」
ティムカ 「そうですね。陛下が12で一番大きいですからね」
ユーイ 「あー、今気づいたぞ。オレが一番小さいんじゃないかー!!」
   × × ×
レオナード 「陛下のケーキも堪能できたし、どうやらふぐもセーフだったようだし、今夜はそろそろお開きでいいんじゃねーか?」
ユーイ 「オレもっとケーキ食べられるぞ。お代わりはないのか?」
ティムカ 「そうだユーイ、生のバナナならたくさんあります。後で届けてあげますよ」
ユーイ 「そうか。オレはメルと違ってバナナは大好きだ。待ってるからな」
アンジェリーク 「(あっこのままだと夕食会が終わってしまうわ。微笑まなくっちゃ!)
 ティムカ、あなたの故郷のお料理、あなたの想いもこもっていて美味しくいただいたわ、あはっ」
ティムカ 「何よりもうれしいお言葉です、陛下」
メル 「あ、親密度アップ! なーんてね」
ティムカ 「陛下。この後、少しだけよろしいでしょうか?」
アンジェリーク 「えっ、ええと…」
ティムカ 「もしよければ聞いていただきたいことがあるのですが…」
アンジェリーク 「わかりました、お待ちしてます」
   × × ×
ティムカ 「こんな夜更けにご迷惑でしたか?」
アンジェリーク 「いいえ、来てくださってとっても嬉しいです」
ティムカ 「ありがとうございます、陛下」
アンジェリーク 「それで私に『聞いていただきたいこと』って?」
ティムカ 「先ほどはそう言いましたけれど、実は『聞いて』ではなく、この絵を『見て』いただきたかったんです」
アンジェリーク 「まあ! 素敵な夕焼けの絵ね。ティムカが描いたの?」
ティムカ 「ええ、故郷を立つ前に僕が描いたものです。なかなかオレンジの色合いが本物に近づけなくて苦労したんです」
アンジェリーク 「私には本当の夕空が見えるようよ…ええ、この絵は息づいているわ!」
ティムカ 「僕、今日のメニューを『ペペス・イカン』に決めたら急にこの絵のことを思い出したんです」
アンジェリーク 「…ごめんなさいね。故郷を離れることはさぞ…」
ティムカ 「いいえ陛下。故郷は僕の胸から離れることはありません。陛下も同じじゃありませんか?」
アンジェリーク 「(ティムカったら突然大人びるのだもの、もう反則)」
ティムカ 「陛下、僕は陛下の故郷のことも色々知りたいと思っています。いつかゆっくり聞かせて下さいませんか?」
アンジェリーク 「はい、いつか必ず。(結局私ったら彼の甘い毒におかされたみたいね…)」

(おわり)


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