バレンタイン＆セイラン様バースデイ企画
　「夕食会　de　帆立とサーモンのミルフィーユ」

アンジェリーク 「そろそろ夕食会にしませんか？」
ヴィクトール 「今日は誰が作るんだ？」
セイラン 「僕だよ。色々と候補はあったんだけどね、見た目重視で『帆立とサーモンのミルフィーユ』に決めたよ」
エルンスト 「なるほど、芸術家は料理も作品というわけですね」
チャーリー 「白い帆立と赤いサーモン、なんやめでたい感じやな」
アンジェリーク
 「ってことは…私が食べたいのは…つまり…『帆立とサーモンのミルフィーユ』なんですね。（なんだか緊張しちゃう、食べるのが難しそうよね…）」
チャーリー 「それだけやないで！　今日は御存知バレンタインデーやさかい、日頃の感謝を込めて、こないなもん用意しましたんやでー、ジャーン！！」
セイラン 「それは、まさかのシャンパンタワーかい？」
エルンスト 「…７段、140個バージョンですね」
ヴィクトール 「だがアンジェリークは未成年だ。シャンパンを飲ませるわけにはいかないぞ」
チャーリー 「わかってますって。アンジェちゃんにはちゃーんとロゼ・シャンパン風なノンアルコール炭酸飲料を用意してますんや」
アンジェリーク 「（もうヴィクトール様ったら。今夜くらい飲ませてくれたっていいのにね）」
　　　×　×　×
アンジェリーク 「キレイ！！　食べるのがもったいないほどのお料理ですね、セイラン様」
セイラン 「賛辞はきらいじゃない、１人ずつコメントをもらいたいね」
チャーリー 「そやけど、見とる間に味は落ちたりせーへんの？」
エルンスト 「確かに冷製料理は、刻々と味が変化します」
ヴィクトール 「それはいかんな。早速いただくとしようじゃないか」
セイラン 「やれやれ。ではこの聖なる夜に乾杯」
チャーリー 「これはうまい！　このトマトドレッシングだけで、ご飯何杯でもいけるでー」
セイラン 「あまりうれしくないコメントだね」
アンジェリーク
 「（会話までが冷製な方向に向かっているわ…話を変えないといけないわね）
　あの、セイラン様、色彩のセンスはどう磨けばいいんでしょうか？」
セイラン 「その答なら至極簡単だよ、心を磨くことさ」
エルンスト 「あなたの言葉だとやや説得力に欠けますが」
セイラン 「君、意外なポエムを作ったね」
チャーリー 「あかんあかん、けんかはあかんでー、せっかくの美味しいおまんまが台無しや」
ヴィクトール 「チャーリーの言う通りだ。二人とも青い髪同士なんだ。この場だけでも仲睦まじくしてくれ」
エルンスト 「思い出しました。青は食欲を落とす効果があると言われていますが、実際のところどうなのでしょうか？」
アンジェリーク 「（エルンストさんたら、研究熱心すぎるみたい…）」
セイラン 「僕は特に気にならないね。青だろうが紫だろうが脳が刺激されれば食欲が出る」
アンジェリーク 「脳が刺激されることが大事なんですね！　じゃあ恋したらお腹がすきますね♪」
　　　×　×　×
アンジェリーク 「デザートはいかが？　『チョコレートベリーパフェ』を作ってみたの」
チャーリー 「バレンタインやしなあ〜」
エルンスト 「念のため伺いますが、ここにいる全員が食べてもいいのですね？」
アンジェリーク 「もちろんです！　ベリーは今朝摘んできましたのでフレッシュですよ」
ヴィクトール 「これはなかなかのものだな。ベリーの酸味が見事にマッチしている」
セイラン 「デザイン的にも合格だね」
アンジェリーク 「本当ですか？　セイラン様」
チャーリー 「何よりアンジェちゃんが手作りしたいうだけで、めちゃめちゃ刺激的やがな」
ヴィクトール 「チャーリー、シャンパンが少々過ぎてはいないか？」
アンジェリーク 「ベリーの花言葉は『小さな幸せがいっぱい』なんですって。皆さんに幸せが一つでも多く訪れますように」
ヴィクトール 「ああ。幸せをつかむコツは、欲張らないことだ」
エルンスト 「幸せを計る道具とはどんなものなのでしょうか…」
チャーリー 「ソレって頭の中やのうて、心の中にあるんとちゃう？」
セイラン 「冴えてるね。中原中也も『幸福は、和める心には一挙にして分る』と詩っているよ」
　　　×　×　×
アンジェリーク 「セイラン様、先ほどの『和める心』の意味って『ゆったり感』ってことですか？」
セイラン 「ま、そうだね。とにかくいらいらしないってことさ」
ヴィクトール 「女王候補として己を追い込むこともあるだろうが、それにしたって余裕を持って、ということだな」
チャーリー 「息抜きしたかったらいつでも来てやー。あの手この手で相手するさかい」
エルンスト 「あの手この手、とは？」
チャーリー 「エルンストはんには教えられまへんなー」
アンジェリーク 「（そんな！　一体何をさせられちゃうのー？？）」
エルンスト 「アンジェリーク、チャーリーではいささか心配ですので、息抜きの際は是非私の所へいらして下さい。チェスなどいかがかと」
ヴィクトール 「それじゃ息抜きにならんだろう。俺とスクワットでもどうだ？　気持がいいぞ」
アンジェリーク 「そ、そうですね…」
セイラン 「ククク…顔がひきつっているよ。『和める心』には程遠いね」
チャーリー 「そろそろ疲れたんとちゃう？　朝からベリー摘みしてたんやろ？」
アンジェリーク 「（あっこのままだと夕食会が終わってしまうわ。目配せしなくっちゃ！）」
セイラン 「瞬きも多くなったみたいだね。このへんでお開きにするとしよう」
アンジェリーク 「（私ったら余計な目配せしたばっかりに！）」
セイラン 「アンジェリーク。この後、少しだけいいかい？」
アンジェリーク 「えっ、ええと…」
セイラン 「君に渡したい物があるんだ」
アンジェリーク 「わかりました、お待ちしてます」
　　　×　×　×
セイラン 「すまなかったね、こんな夜更けに」
アンジェリーク 「いいえ、来てくださってとっても嬉しいです」
セイラン 「この詩集を探すのに結構手間取ってしまったよ」
アンジェリーク 「その詩集…『中原中也詩集』ですね！　私、以前から読みたかったんです」
セイラン 「そうなんだ。君の『和める心』に役立ててもらえたらと思ってね」
アンジェリーク 「（セイラン様…そんなに見つめられたら和めませんってば）」
セイラン 「この中で僕が一番好きな詩は…」
アンジェリーク 「ええ…」
セイラン 「『されば人よ、つねにまづ従わんとせよ。』…つまり例え君が女王になったとしても、僕の気持は変わることはないってことかな」
アンジェリーク 「セイラン様…私もセイラン様だけに食べていただこうと用意したんですよ」
セイラン 「これは？」
アンジェリーク 「イチゴパフェです。イチゴの花言葉は『尊重と愛情』なんです♪」
セイラン 「ありがとう。喜んでいただくよ」
（おわり）

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