ゼフェルバースデー企画
　「夕食会　de　スープカレー」

アンジェリーク 「そろそろ夕食会にしませんか？」
ルヴァ 「今日はもしかしたら作るのは…」
ゼフェル 「オレだ。二度とねーからありがたく思えよ」
ジュリアス 「そなたの料理が二度食したいと願うほどの出来栄えならばよいがな」
リュミエール 「ジュリアス様の舌は途方もない高みにありますので、ゼフェルでなくとも至難の業ではないかと…」
ルヴァ 「大丈夫ですかねえ、まずは私が試食した方がよいのでは…」
アンジェリーク 「（だけど既においしそうな匂いしてくるけど！）」
ゼフェル 「おめーら、食いたくないなら食わなくていいんだぜ。オレはアンジェのためだけに『スープカレー』を作ったんだからなっ」
ジュリアス 「（『アンジェ』だと！？　ゼフェルめ、何を親しげに…）」
ルヴァ 「ゼフェル！　そんなセリフは心の中だけにしまっておくものですよ、はしたのない」
アンジェリーク 「ってことは…私が食べたいのは…つまり…『スープカレー』なんですね」
ゼフェル 「おう。『スープカレー』に合うナンもたっぷり焼いてやっからいくらでも食べろよ」
ジュリアス 「（『スープカレー』に合う音楽も考察せねばならぬな）」
リュミエール 「ナンまで手作りされたのですか。私はナンのもちもち感が好きなので本当に楽しみですよ、ゼフェル」
ゼフェル 「上手いからって食い過ぎんなよ、マッチョなリュミエールなんて見たくねーぜ」
アンジェリーク 「（いけない、私ったらヘンな想像しちゃった…）」
　　　×　×　×
ゼフェル 「なんだよ、ジュリアスもがつがつ食ってんじゃねーかよ」
ジュリアス 「言葉を慎まぬか、ゼフェル。私は例えそなたのスープのみのカレーといえども優美に食している」
アンジェリーク 「で、でもとっても美味しいですよね、何だか独特のスパイシーさで」
ルヴァ 「ええ、ええ、本当に。見直しましたよ、ゼフェル」
ゼフェル 「…ったく、どんだけ期待されてねーんだよ」
リュミエール 「？　私の空耳でしょうか、かすかに音楽の音色が聞こえませんか…」
ジュリアス 「確かに。カレーであたたまった身体をにわかに冷やすかのような面妖な音がするようだな。（ぴき、ぴき、ぴき…）」
アンジェリーク 「（ジュリアス様が良からぬ方向に向かっているわ…何とかしないといけないわね）
私、調べに行ってみます！」
ルヴァ 「お言葉ですが、私はこういった変調したリズム音楽も、カレーなどには合ってると思いますけどねえ、うんうん」
アンジェリーク 「…ジュリアス様わかりました！　あれは自動ナン焼き機の音で、しかもオルガン機能までついているんですよ〜♪」
リュミエール 「なるほど、ゼフェル渾身の発明品だったのですね♪」
ゼフェル 「くそっ、バレちまったか。しかもボルトが抜けちまったおかげで最悪なBGMになっちまってるし」
リュミエール 「そういえば先ほどのナンに混じっていたような気も…」
ルヴァ 「ボルトごと食べたのですか！　見かけによらず歯が丈夫なのですねー」
ジュリアス 「これでよくわかったであろう、『二兎を追う者は一兎をも得ず』ということだ」
ゼフェル 「言っとくけど、オレはまだあきらめたわけじゃねーからなっ。今夜のは単なる試作品てヤツだぜ」
アンジェリーク 「（ゼフェル様、すごいわ。なんだか応援したくなっちゃう）」
　　　×　×　×
アンジェリーク 「デザートはいかが？　『トマトのケーキ』を焼いてみたの」
リュミエール 「珍しいですね。またこの赤が素晴らしいではありませんか」
ルヴァ 「こんなに美しいケーキは、しばらく見続けていたいですねえ」
アンジェリーク 「うれしいです！　その色を出すために何度も焼き直したんです」
ジュリアス 「つまりゼフェルとは違って試作品ではないというわけだな」
ゼフェル 「ちぇっ、悪かったな」
ルヴァ 「ゼフェル！　どうしてあなたはそういうささくれた態度を…そうです、トマトには身体を潤す効果があるそうですから、このケーキをたーくさんいただきなさい」
アンジェリーク 「甘さも控えめですから」
ジュリアス 「（ということはゼフェル仕様のケーキだということなのか？　先ほどの『アンジェ』発言といい、もしやあの二人…）」
リュミエール 「ひょっとして、白ワインも入っていませんか？」
アンジェリーク 「はい、焼きたてのケーキに白ワインをかけると、しっとりするんです」
ルヴァ 「ケーキ作りにも様々な知恵が生かされているのですねー、うんうん」
ゼフェル 「うまかったぜ、ジュリアスの機嫌もなおったんじゃねーのか？」
ジュリアス 「創意工夫が感じられるケーキであった。そなたには女王候補としてますます精進してもらいたい。（そうだ、よこしまな考えはもたずに）」
アンジェリーク 「はい、そのお言葉を胸に、がんばります！」
　　　×　×　×
ジュリアス 「先ほどから考えていたのだが、『スープカレー』に似つかわしいBGMはドビュッシーかもしれぬな」
ゼフェル 「はあ？　そりゃゆるキャラの名前だろ？？」
ルヴァ 「ゼフェル！　間違えるならせめて『土瓶蒸し』くらいにして下さい！」
アンジェリーク 「（ルヴァ様…）」
リュミエール 「わかりました、ジュリアス様。『美しい夕暮れ』のことですね♪
　カレーは赤い、赤いは夕陽。私も納得の選曲です」
ジュリアス 「そうではない。ルヴァの『変調したリズム音楽』という言葉がヒントになったのだ。カレーの奥深い味とマッチする音楽はドビュッシーのような変幻微妙さを持ち合わせているべきなのだ」
ゼフェル 「なんだかしんねーけど、ま、オレのスープカレーがガチで美味かったって結論だよな」
リュミエール 「そうですね。ナンももちもち感と焦げ具合が絶妙でしたし」
ルヴァ 「今夜はドビュッシーの『月の光』を聞きながら、カレーの川で遊ぶ夢でもみたいものですねえ」
アンジェリーク 「シュールな夢ですね。（あっこのままだと夕食会が終わってしまうわ。ほほえまなきゃ！）」
ゼフェル 「おめー、何ヘンな想像してんだ？」
アンジェリーク 「ヘンな想像って…」
ルヴァ 「アンジェリークが一緒ならば、アメンボ探しなどいかがですか？」
アンジェリーク 「だから違いますってば！」
ゼフェル 「この後、いいか？　おめーの話、聞いてやらないでもないぜ」
アンジェリーク「 「えっ、ええと…」
ゼフェル 「イヤなら別にいいけどよ…」
アンジェリーク 「お待ちしてます！　ただし、ヘンな想像は絶対してませんから！！」
　　　×　×　×
ゼフェル 「こんな夜更けに迷惑だったか…」
アンジェリーク 「いいえ、来てくださってとっても嬉しいです。スープカレー、ごちそうさまでした」
ゼフェル 「おめーの『トマトのケーキ』も意外にイケてたぜ。スープカレーには基本何も入れねえ主義だけどよ、トマトくれえなら入れてもいいかなって」
アンジェリーク 「本当ですか！？」
ゼフェル 「あったりめーだ、嘘言ったってしょーがねーだろーが」
アンジェリーク 「じゃあいつか絶対『トマトスープカレー』、ごちそうして下さいね」
ゼフェル 「おう。でよ、そん時はもひとつプレゼントしてやるから楽しみにしてろよ」
アンジェリーク 「プレゼント、ですか？」
ゼフェル 「ああ。今日よ、おめー、ナン焼き機のオルガンのこと喜んでるみたいだったから。だからよー、そのー、おめー用に手回しオルガンを作ってやるから」
アンジェリーク 「うれしいです。でもどうして自動じゃなくて手回しなんですか？」
ゼフェル     「そりゃあおめー…（おめーの手が好きだから…）」
アンジェリーク     「（あら、ゼフェル様が完熟トマトくらい赤くなってる、うふ）」
（おわり）

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