2011年オスカー様バースデイ企画
 「夕食会 de アイリッシュシチュー」


アンジェリーク 「そろそろ夕食会にしませんか?」
マルセル 「今日のお料理はどなたが作られるんですか?」
オスカー 「俺だ。身も心もとろけ切るから覚悟しておけよ」
オリヴィエ 「最初っから思いっきりハードル上げちゃってるよ、このオバカったら」
ランディ 「当たり前です。オスカー様はいつだって真っ向勝負、駆け引きなしですから」
オスカー 「いいこと言ってくれるな、但し『恋の駆け引き』だけは例外だがな」
オリヴィエ 「ハイハイ。で、何なの? ちゃんと歯ごたえのある料理なんでしょうね」
オスカー 「心配無用だ! 噛み応え抜群ラム肉入りの『アイリッシュシチュー』だからな」
マルセル 「ラム肉?」
ランディ 「ま、まさか『うる星やつら』の??」
オリヴィエ 「アンタたち、オバカの次元越え過ぎでしょ」
アンジェリーク 「ってことは…私が食べたいのは…つまり…『アイリッシュシチュー』なんですね」
オスカー 「そうだ、俺の掛け値なしの気持が煮詰めてあるからたーんと味わってくれよ、お嬢ちゃん」
ランディ 「オスカー様、わかりましたよ。それこそが『恋の駆け引き』なんですね!」
マルセル 「ランディ、勉強になるねー」
アンジェリーク 「(うふふ。オスカー様ったらあきれて目がカクカクしてるわ)」
   × × ×
オスカー 「ラム肉つまり仔羊肉の味付けは好みが分かれるところだが、俺のお薦めはニンニクだ」
アンジェリーク 「ニンニクは確かに美味しそうですけど…」
オリヴィエ 「そうよね、アンジェリーク。私たち乙女にはノーサンキューな食材だわよ」
マルセル 「エーッ、アンジェリークって『乙女』だったの!?」
ランディ 「マルセル、ちょっと違うぞ」
オリヴィエ 「そりゃあ私から見たら、アンジェなんてまだまだ見習い期間かもしれないけどさ」
アンジェリーク
「(会話が淫らな方向に向かっているわ…話を変えないといけないわね)
 あの、オスカー様…ニンニクの他は何で味付けしてあるんですか?」
オスカー 「お嬢ちゃん、だから言ったろ。(耳元に口を寄せて)俺のパッションさ」
マルセル 「今のってニンニク臭くなかったの? アンジェリーク??」
オスカー 「マルセル、いいか、よく覚えておけ。ニンニクは『臭い』んじゃない。『かぐわしい』 と言うんだ」
マルセル 「それじゃあ…今のってニンニクかぐわしくなかったの?」
アンジェリーク 「かぐわしいより、恥ずかしいです(はぁと)」
ランディ 「へえ〜そうなんだ。ニンニクって恥ずかしいのか、知らなかった」
オスカー 「つべこべ言ってないで、早く食べないか! せっかくの料理が冷めちまうぜ」
ランディ&マルセル 「はい、すみません…」
オリヴィエ 「どれどれ、じゃあ私も…うん! これはズルズルいけちゃうわァ」
オスカー 「なんて言い草だ。夢の守護聖が聞いて呆れるぜ」
オリヴィエ 「余計なお世話よ」
アンジェリーク 「…すごく美味しいです、オスカー様。ニンニク味、見直しちゃいました」
オスカー 「だろ? お嬢ちゃんだけに特別講義をしてやろう。ニンニク使いのコツは、ニンニクを刻むのじゃなく『叩きつぶす』ことだ」
マルセル 「さすがはオスカー様、炎の守護聖って感じですよね!」
ランディ 「ははは。マルセル、そのセリフ、前回の夕食会でも言ってたぞ」
アンジェリーク 「(あらそうだったかしら。ランディ様意外と記憶力あったのね)」
オリヴィエ 「ひょっとして包丁が恐くて使えないだけだったりして?」
ランディ 「まさか! だけどもしそうなら俺、風の守護聖として断然協力しますよ」
アンジェリーク 「(うふふ。オスカー様ったらさらにあきれて目がカックンカックンしてるわ)」
   × × ×
アンジェリーク 「デザートはいかが? 『フィュタージュ』を作ってみたの」
マルセル 「あっこれ、ぼくも近々作ろうかと思ってたお菓子なんだよ。確か『嫉妬』っていう別名もあるんだよね。ランディは『嫉妬』って意味知ってる?」
ランディ 「そんなの知ってるに決まってるだろ、マルセル。『やきもち』とも言ってとっても美味いんだぞ!」
アンジェリーク 「…あのそれって…」
オリヴィエ 「アンジェリーク、およし。この子たちにツッコミ入れてたら平気で夜が明けちゃう」
オスカー 「俺はお嬢ちゃんと二人だけで夜明かしなら最高なんだがね」
アンジェリーク 「と、とりあえず召し上がってみて下さい」
オスカー 「…いい甘さだ。無粋な質問かもしれんが、この焼き菓子が何故『嫉妬』なんだ?」
オリヴィエ 「あらそんなことも知らなかったの? 色男にしては不勉強だねえ」
アンジェリーク 「焼くと生地の表面が少しめくれ上がってしまうんですね。それが嫉妬した女性が口を尖らせた形に見えるからってことらしいですよ」
オスカー 「なるほど。お嬢ちゃん、君もこんな風に口を尖らせたことがあるのかな?」
アンジェリーク 「もうっ知りませんったら」
ランディ 「あっ、今まさに口を尖らせたぞ!!」
マルセル 「ホントだ、まるでトレニアの花みたいだったね」
オリヴィエ 「オスカーごときにまんまとひっかかって。だから私に比べたら、まだまだ『乙女』にはほど遠いってこと」
   × × ×
オリヴィエ 「『アイリッシュシチュー』&『フィュタージュ』の取り合わせ、今夜の夕食会は程よい満腹感でとっても満足よ」
アンジェリーク 「(あっこのままだと夕食会が終わってしまうわ。目配せしなくっちゃ!)
 オスカー様、今夜のお料理は身体だけじゃなくって、心まであったまって癒されました♪」
オスカー 「そのようだな。お嬢ちゃんのそのうるんだ瞳に吸い込まれそうだ」
ランディ 「すごいなアンジェリーク、俺にもその秘技を伝授してくれよ」
マルセル 「ランディ、それだったらぼくが教えて上げるよほら! ウルルルルゥ〜」
オリヴィエ 「あらホント。マルセルったらいつの間に瞬間涙目できるようになったの?」
マルセル 「みんながぼくのこと子供扱いするからですよっ」
オスカー
「アンジェリーク、改めて語るまでもなかろうが、俺は子供扱いはしない主義だ。
 この後、少しだけ寄らせてもらっていいだろうか?」
アンジェリーク 「えっ、ええと…」
オスカー 「まだまだ話し足りない。それとも俺の部屋がいいのかな?」
アンジェリーク 「わ、わかりました、お待ちしてます」
   × × ×
オスカー 「こんな夜更けに迷惑だっただろうか?」
アンジェリーク 「いいえ、来てくださってとっても嬉しいです」
オスカー 「あれからずっと考えていたんだ。お嬢ちゃんが作った『嫉妬』の意味をね」
アンジェリーク 「そんな! 私はただあのお菓子が好きなだけで…」
オスカー 「本当にそうだろうか? 俺にはお嬢ちゃんの隠された真心と思えるんだがね」
アンジェリーク 「そうなんでしょうか…」
オスカー
「…フッ、お嬢ちゃんは素直だな。隠された真心に気づかされたのは、もしかしたらこの俺の方かもしれない。今夜はお嬢ちゃんに食べられる『アイリッシュシチュー』にさえジェラシーを感じたほどだ」
アンジェリーク 「オスカー様…」
オスカー 「男と女、上手に妬くのは難しいものだ。そう思わないか?」
アンジェリーク 「(オスカー様、アイスブルーの瞳がキラキラしてまるで宝石みたい)」
オスカー 「そう、そんな風に俺だけを見ていてくれ。約束してくれるか?」
アンジェリーク 「オスカー様こそ約束して下さいますか? 私だけを見て下さるって」
オスカー 「ハハハ、さすがは女王候補だ。鋭い切り返しだぜ。ただイイ女は男を決して縛りはしないものなんだぜ、お嬢ちゃん」
アンジェリーク 「(オスカー様、やっぱり子供扱いしてるじゃない!)」
(おわり)

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