2010エルンスト様バースデイ企画
 「夕食会 de オープンサンドイッチ」


アンジェリーク 「そろそろ夕食会にしませんか?」
ヴィクトール 「今日の当番は誰なんだ?」
エルンスト 「私です。あまり時間的余裕がありませんでしたので大したものではありませんが」
セイラン 「まさか小皿にサプリメントを並べるだけじゃないだろうね」
チャーリー 「そこまで手抜きっちゅうんはいくら何でも許せまへんで。せめて砕いてご飯に混ぜるぐらいはしてもらわんとなあ」
ヴィクトール 「おい、生真面目な人間をからかうのもほどほどにしておけよ」
アンジェリーク 「そうですよ。エルンストさんのことですから、きっと栄養のバランスのとれた食事を用意して下さってますよ」
エルンスト 「その点はどうか御安心下さい。46種類の栄養素をもれなく含む『オープンサンドイッチ』を御用意しました」
アンジェリーク 「ってことは…私が食べたいのは…つまり…『オープンサンドイッチ』なんですね」
チャーリー
「そうゆうたらエルエルはん、研究院でようサンドイッチつまんではりますな。
 なんでまた今日は『オープン』スタイルで?」
エルンスト 「今夜は片手で食べるわけではありませんからね。それに色合いにこだわる方も若干いらっしゃるようですから」
セイラン 「僕のために? 当然46種類以上の色彩はあるんだろうね?」
ヴィクトール 「そう数字にこだわらんでくれよ。王立派遣軍にいた頃のクセで点呼したくなるからな」
アンジェリーク 「ふふ、今夜もスリリングな夕食会になりそうね。味わっている暇がないかも?!」
   × × ×
アンジェリーク 「まあ〜美味しそう!!」
エルンスト 「では右前方から御説明致しましょう。サーモンマリネ、ビタミンD、ビタミンB12などが豊富に…」
チャーリー 「ちょい待ち! まさかそれ全部聞かな食べられへんのん? 勘弁やでえ〜」
セイラン 「同感だね。料理教室なら、後で個人的に開いてもらいたいな」
ヴィクトール 「冷めるとよろしくない具材もありそうじゃないか。説明は食べながら聞くということにしないか?」
エルンスト 「わかりました。アンジェリークもそれでよろしいですか?」
アンジェリーク 「ええ、できれば私も早く食べたいです」
エルンスト 「申し訳ありません。また研究者の悪い癖が出てしまったようですね…」
アンジェリーク
「(会話が暗い方向に向かっているわ…話を変えないといけないわね)
 あの、エルンストさん、このトマトの具はどんな風に作られたんですか?」
エルンスト 「ああ、ドライトマトのオイル漬けですね」
チャーリー 「ドライトマト! うちの店の一押し商品やんかー、エルエルはん、使ってもろて毎度ありぃ」
セイラン 「見たところ赤系の具が多いね。噂じゃ赤を好む者は『退屈を嫌う』らしいが」
アンジェリーク 「そうなんですか? 私も赤が好きなんですよ♪」
エルンスト 「研究活動に休む暇がないことは否定しませんが、『退屈を嫌う』というのとは少しニュアンスが違うと言わざるを得ませんね」
ヴィクトール 「エルンストは普段どういう方法で息抜きをしているんだ?」
エルンスト 「最近カスタネットを始めました」
チャーリー 「カスタネット! それも片手つながりで?」
セイラン 「カスタネットの片手奏法はなかなか難しいものだよ。どれほどの技量になるのか、興味を持たずにはいられないね」
アンジェリーク 「私もです。エルンストさん、いつか夕食会で披露して下さいね」
   × × ×
アンジェリーク 「デザートはいかが? 『タルトタタン』を作ってみたの」
チャーリー 「『タルトタタン』、なんやノリのええ名前やなあ〜」
ヴィクトール 「リンゴの香ばしいニオイがしてくるな」
セイラン 「確かに君も赤が好きなようだね」
アンジェリーク 「このお菓子は実は失敗作から生まれたものなんですって」
エルンスト 「それは大変興味をそそられる話ですね」
チャーリー 「その話って長い? アンジェちゃん」
アンジェリーク 「そうですね…簡単に言うと、生地を敷くのを忘れてリンゴだけを焼いてしまって、仕方なく上から生地をかぶせたのが偶然美味しく焼き上がったってことみたいです」
エルンスト 「なるほど。世の中には失敗から生まれた発見は数限りなくありますからね」
ヴィクトール 「そうだな。あきらめないこと、そして工夫することが大事なんだ」
チャーリー 「ええ話やなあ。商売にも生かさしてもらいます」
エルンスト 「あなたの工夫とやらには一抹の不安を禁じ得ませんがね」
チャーリー 「あらそう?」
ヴィクトール 「いいじゃないか。失敗を繰り返した結果、斬新な何かが生まれるかもしれない」
エルンスト 「アンジェリーク、あなたは繰り返す必要はないのですよ。アルフォンシアは1日も早い育成を望んでいるはずですから」
アンジェリーク 「はい、わかりました…」
   × × ×
アンジェリーク 「エルンストさん、今夜の食事、とっても元気をもらえた気がします。お忙しいところをありがとうございました」
エルンスト 「こちらこそ。『タルトタタン』、美味しくいただきました」
ヴィクトール 「俺も驚いたよ。『オープンサンドイッチ』と聞いた時には正直言って、期待というものがもてなかったんだが、どうしてどうして」
チャーリー 「ヴィクトールはんの言う通り! 肉あり魚あり野菜あり果物あり、ありあり尽くしの楽しい料理やったわ〜」
エルンスト 「私の皆さんへの友好の念もあり、ですしね」
チャーリー 「友好の念? アンジェちゃんにもかいな?」
エルンスト 「も、もちろん。女王候補に対して友好と激励と。それ以外の念は露ほどにもありはしません!」
チャーリー 「露ほどもねえ〜〜」
セイラン 「チャーリー、それは野暮というものだよ」
ヴィクトール 「エルンストはこの後まだ仕事が残っているんだろう。そろそろ引き上げ時じゃないか」
アンジェリーク 「(あっこのままだと夕食会が終わってしまうわ。目配せしなくっちゃ!)」
エルンスト 「アンジェリークもお疲れのようですね。目が痙攣しているのではありませんか?」
アンジェリーク 「(痙攣って! それって『疲れてる』レベルじゃないと思うけど…)」
エルンスト 「アンジェリーク。この後、少しよろしいでしょうか?」
アンジェリーク 「えっ、ええと…」
エルンスト 「ほんの少しの時間でかまわないのですが」
アンジェリーク 「どうぞ、お待ちしてます」
   × × ×
エルンスト 「申し訳ありません、こんな夜更けに」
アンジェリーク 「いいえ、来てくださってとっても嬉しいです」
エルンスト 「すぐに失礼します。私のカスタネットさえ聞いていただけたら」
アンジェリーク 「カスタネット?」
エルンスト 「先ほどの『タルトタタン』を食べるいるうちにカスタネットのリズムが湧き上がってきたものですから、是非あなたに、あなただけに演奏したくて」
アンジェリーク 「そ、それは聞きたいです♪」
エルンスト 「よかった。では早速…」
アンジェリーク 「(…情熱的なリズムね。赤のイメージだわ)」
エルンスト 「この曲は『タルトタタン』と名付けます。かまいませんか?」
アンジェリーク 「はい。今夜はエルンストさんの新しい一面が見られてよかったです…」
エルンスト 「私もです。あなたという方は宇宙以上の刺激を私に与えてくれます…」
(おわり)

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