This love is ***


花が満開の丘の上に、俺はいた。
回りには、誰もいない。

 ・・・近くで金色の髪が揺れる。

(これは、願ってもない、チャンス!!)

ふたりきりの丘の上。
金色の長い髪に、花びらが絡まる。
俺は、その花びらを取ってやろうと手を伸ばした。
ふわりと振返った・・・その瞳はー。

 スミレ色ー?

「ぜふぇるぅー。彼女は、あきらめた方がいいと思うよ。」

金色が、サラサラと流れていくのを、目で追ってしまう。
瞳は、俺への哀れみで潤んでいく。

「なっ!」

『泣くな!』と、腕を捕まえようとしたが、するりと俺から逃げて行く。
俺は、キラキラと揺れる金色を追いかけた。
やっと捕まえたとばかりに、その腕をおもいっきり自分の方へひっぱる。

 ・・・・・目の前は、鮮やかな色彩に包まれた。

「あらぁ〜。この女泣かせ!にくいわぁ〜ん☆」

俺の鼻に指をやり、ウインクしてみせる。
その瞳に、何か叫ぼうとした時、赤や青の色の洪水と供に金色の髪が流れ出した。
俺は両手に絡みつく、その輝く色の洪水を押しのけるように、人を馬鹿にした笑い声の方へと進んだ。
しかし、笑い声はいつのまにか消えている。閉じていた目を少し開けた。
目の前には、華やかな光りの海が、眩しいばかりに輝き始めていた。
すぐ近くに居るのに、すごく遠くに感じる。
その不安を消すように、声をかける。

「おい!」

振返った眩しい金色の髪はー。

「お前は! 目上の者に対する口の利き方に気をつけぬかと、何度言ったら解るのだぁ!!」

後光がさしていて、目が開けられない。

「まぶしい・・・。」

相手は、お構いなしに口から機関銃を連射をする。
本当に口の中に、銃口の先が見える。

「まぶしぃーってんだろぉうー!!!!!!」

俺は・・・・自分の叫び声で目が覚めた。
金色の髪は、あいつだけじゃ・・・・なかったっけかー。

「はぁ〜。」

ベッドの上に、半身だけ起き上がったまま、大きなため息がでた。
こんな朝を何回むかえたことか・・・。


だいたい、俺の恋愛は、激しい稲妻なようなものが多かったんだ。
なのに今の俺は、触れるとすぐに枯れてしまう様な花が咲くのを待っている。
花を傷つけないように、注意をはらい世話をするかのような庭師みて―。
こんな、マドロッコシイ状態は俺らしくねー。

 でも、どうする?

 ―どうしたもんかなぁ。(ため息・・。)

俺は何も出来ない兎になる。
あいつの前では、借りて来た猫じゃなくてウ・サ・ギ。
これは、俺の様子を見たルヴァオヤジのセリフから。

「ゼフェル・・あなたって彼女の前では兎のようですよー。(くすっ。)」

なんだよ!その『くすっ。』ってのは!!
自分の事に関しては、むちゃくちゃ鈍いのに・・なんで他人の事には、目の前の紅茶をティパックで煎れたかそうでないかってのが解る・・・そん時並に鋭いんだよ。
ルヴァが言うには、俺の表情があいつの前だけ可愛く・柔らかくなるんだと・・・それが、なんで兎なんだー? あのオッサンの感覚は・・・ワカンネ―。

オレは・・オッサン連中に比べたらガキだけど、レンアイ事はガキじゃないと思ってる。
・・・そりゃーオスカーやオリヴィエからみたらガキかもしんねーけど。
だからってランディみたいに好きなヤツの前で、「俺は向日葵なんだ!そう・・君は俺の太陽だよ!!」って顔に書いて歩くような事はしない。

だから、そう・・・周りには気付かれていないと思っていた。
絶対!確実!!100%!!!

・・・なのに、最初にルヴァが気がついた。
―いつものお茶会の時に勘付かれた。

次に、マルセル。
―前から、侮れないヤロウだとは思っていた。

中堅御三家は当然。
クラヴィスのヤローは、イミ有りげに「・・・・・っふ。」とか笑って通り過ぎていった。

最後に、ランディ。
―あのヤロウは、本能か野性の勘だろう。
「ゼフェル・・お前、今・・『恋』してるだろ。俺には解るよ!そんなニオイがするんだよ。俺、守護聖より探偵になればよかったかなーははは!!」

・・・けっ。勝手に言ってろ!

最近は、ディアまでが応援してくれ、俺も勢い以前より積極的にアプローチを始めた。
それなのに、俺の恋する相手は、ジュリアスと同じ様に全く、これっぽっちも気づいてくれない。

ルヴァの言う通りに「共通の話題を持て。」―流行りの女の好きそうな情報は全て集め、頭にインプットした。

マルセルの言う通りに「親切にするんだよ。」―俺は英国紳士のようだ。

御三家の言う通りに「女性には優しく。(各自得意分野)」―それは、臨機応変に・・・。

ランディの言う通りに「自分の気持ちを正直に瞳に表すんだ!」―これは、上手くいってねーと思う。


この間、落し物を拾おうとした時に手を握られてしまい・・・いや、俺が握っちまったのかもしんねーな、あいつが俺の手を握るワケない。
更に、お互い顔を上げた拍子に視線がぶつかり合ってしまった。
そんな絶好のチャンスの時に、俺ときたら。
瞬間、どうしていいか解らないままに、頭の中に浮かぶ事を全部正直に表していたから。

(死んだ振りは熊、目を合わせないのは猿、襲いかかられそうな時にしゃがむはカンガルー・・・・。)

最後には、目をそらしたら負けだ!!と、メンチ斬りまくっていた。

(これじゃぁ・・・『喧嘩上等!!』―って粋がってどうすんだぁよぉ!!)

相手は、にっこりと笑っていたけど、口元が引き攣っていた。
それ以来、俺をみると少し避けてるような気がする。

ゴぅーっと告白しちまって、ガぁーと上手くまとまるなり、振られたりする方が俺らしいんだけどよー。・・・・・何か、今ひとつ、踏み込めずにいる。


何だろうな・・・。
何か、忘れてるような気がすンだよ。

・・・それも、すっげー大事なこと。

それを夢の中でも思い出しかけていたのに。
・・・はぁー。もう宮殿に着いちまった。

今日も始まる、 ため息と上の空。
通り過ぎてくれない、嵐のようだゼ。

 ハヤク ハレマガ ミタイヨ・・・。


 ―そんな鋼の守護聖に、天使は笑う。



 「いい加減に許してさしあげたら?」

 「思いきって告白したのに、『興味ねーな。』の一言で済ましたんだから、ダ・メ。」

 「そんな・・・3回しか会ってない人に告白されてもねー。」

 「だから、向こうから言って来るまでだもん。」

 「ずーっと言わなかったら、どうするつもりなの?」

 「この勝負は先に言った方が負けよ!そして・・・まだ、女王試験は終わってないよ、ロザリア。」

 「そうね・・・アンジェリーク。」
 (はぁ〜、相思相愛なのに・・・・・可哀想なゼフェル様。)



   ―愛しさと一緒に、天使は笑う。・・・・・・ あなたに天使の御加護がありますように。―



                                                         ―END―


みかんさんのゼフェアンサイト「Imperfect Planet」でキリ番900番を踏んだTeruzo-が、リクエストする代わりに押しつけたものです。
リクエストは「アンジェに告白するも気づいてもらえないゼフェル」。
たいへん喜んでいただいて、Teruzo-も書いた甲斐があったというものです。

恋するゼフェルのかわいらしさがあますところ無く描かれるあたり、Teruzo-の愛を感じますわ。ほほほ。

絵馬の杜へ

諸願奉納所へ