『Ever After.』
黙っていれば可愛い恋人には、俺だけしか知らない秘密がある。
それは、あいつは大きな年季の入ったネコを被っていること。
俺以外の奴の前では、天使のような微笑を絶やさず、天使のように優しく、天使のようにふわふわとした姿。
俺が異論を唱えたところで、誰も信じないだろう。
最初のころこそ、天使な笑顔で「ぜフェル様」と甘く俺を呼んでいる・・・時もあった。
それが、お互いの親密度が上がると共に、たまごの殻が剥れていくように、パリパリとその真の姿を現した。
俺の目の前のあいつは、小悪魔な微笑みに、小悪魔な仕草、小悪魔な声で俺を呼ぶ。
人前では、ちゃんと「様」を付け忘れない彼女だったりするけれど、どうも胡散臭く感じてしまう。
俺の部屋で寛ぐあいつの姿は、決して誰にもミセラレナイ。
愛し過ぎて、誰にも見せたくない気持ちも・・・少しは、ある。
―が、ゴムの伸びた(上へ伸ばしても勝手に落ちてくるような)靴下をヨレヨレとした感じではき、短くて下着が見えそうな(それでいて見えない)スカートに、ダブダブの俺のセーターを身に着け、ソファーやベッドの上でゴロゴロと海岸で日向ぼっこするあざらしのような姿。
そんな姿・・・・誰にも―ミセラレナイ―だろ。
彼女を「天使のようだ」と思い込んでる、普段の猫かぶりしか知らない者が見たとしたら、あいつの姿をコピーした悪魔に違いないと速攻で悪魔祓いが始まうだろうな〜と想像してしまうくらい俺の前では違う。
俺は、あいつの俺に対する呼び名が変わっていくのと同時に、その姿の変化にも慣れていったので、今更驚いたりしない。
本当は、驚くすきもないくらい、その変化と共に愛していったんだと思う。
もしかしたら、愛というよりも、この姿を知っているのは俺だけだという、優越感のような安心するような気持ちがあるのかもしれない。
今も、俺の目の前で、ゴロゴロと寛いでいる姿は子猫のようだったりする。
俺の部屋から一歩出たら、あいつは俺の知らない猫になる。
その姿は、俺からみると天使なんかじゃなく、俺よりも小さいのに、猫だの、天使だの、デキスギ君だの、をぶら下げて戦う乙女の姿だったりする。
何をあんなに懸命に自分の為というよりも、人の為に、頑張るのだろうかと思う。
泣くほど辛いなら、人の期待になんか応えなきゃいいのに。
最初は、無理すんなーとか、言ってたが、人の言う事なんかキカネー。
そのうち、俺の前では小悪魔でも、あざらしや子猫でも、天使じゃなくても、あいつが素で笑ってくれるなら、それでいいや・・・と思うようになってきた。
俺だけは、素のあいつが見られるし、無理してるなら休む場所も必要だろう。
それが、あいつを甘やかす事になっていてもな。
何もかも余分なモノを落としていって、少し甘えた舌足らずな、もしかしたら言葉にするのも面倒なのかもしれないが、それでも、あいつの口から零れ出る声に、姿に、愛しさがツモル。
すべての重荷をどっかにやって、ゴロゴロとしながら俺の名を呼ぶ。
「ぜーぇ・・・それとってー。」
俺が取るよりもお前が取った方が早い場所にあるカップ。
俺はドライバを置き、立ち上がって、あいつに渡す。
「ありがとう。」
と、にっこり笑った姿は天使のようだ。
あいつは、天使でも悪魔でも、海豹でも猫でも、ゴロゴロしてても・・・・俺はそれだけで幸せになれる。
そして、俺は好きな事をやりながら、あいつはゴロゴロしながら、一緒にいるのだろう。
これからも、ずっと、な。
DEC.2004. END.
はい、私にしては珍しい季節モノです!!
2004年クリスマスなぜフェリモです。 (でも、年末バージョンでも新年バージョンでも使えそうです。)(Teruzo-)